冬・帰省

「正月は友達と海外に行くんじゃなかったのか?」

 炬燵のいつもは空いている席に座っている娘、綾花あやかに驚く。

「だって、電話口で、あんなに可愛い声で鳴かれたら帰ってくるしかないじゃない?」

 側には、べったりとカメオがくっついている。小さな頭を撫でながら、指差す先には土鈴があった。

「国内旅行にしたの。そのお土産」

 どうやら家を出ると親に気遣いが出来るようになるらしい。思わず顔が緩むと

「カメオにだけどね」

 綾花がにっと笑う。カメオが嬉しそうに鳴いて、今度は自分から手に頭をこすりつける。

 俺は憮然として部屋を出た。



「あんなこと言って」

 台所で母さんがくすくす笑っている。

「うん?」

「『お父さん、いつ帰るの?』って、さっきから何度も聞いていたのに」

 カメオは口実よ。母さんが不器用なウインクをする。

「そうか」

 コンロでは鶏団子鍋が煮えている。

 俺はしまってあった、綾花の茶碗と箸を運んだ。

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