秋・栗大福

「キュイ!」

 買い物途中、カバンのポケットに入ったカメオが声を上げる。

「あら、栗大福」



「おっ! 栗大福か」

 甘いもの好きのお父さんが顔をほころばせる。

「秋だものね」

 里芋の炊き込みご飯に、サンマの塩焼き、さつま芋の入った豚汁。それを漬物と佃煮と一緒にいそいそと食べて、お父さんは栗大福を手に取った。

「キュイ!」

 カメオが『待ってました!』と嬉しそうな声を上げる。

「お前、自分の分、食べただろう……」

「キュイ!」

「やらんぞ!」

「キュイっ!」

「これは俺の分だ!」

「キュイっ!」

「手によじ登るなっ!」



「良いか、栗は絶対にやらんからな」

「キュイ!」

「栗は俺も大好物なんだからな」

「キュイ!」

 食卓では、延々と食いしん坊同士の戦いが繰り広げられている。

「片付かないから早くなさい!」

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