秋・オバケどんぐり

 オレの町内の公園の、どんぐり林には『オバケどんぐり』が出る。

 手の平サイズの大きなどんぐりで「キュイ」と鳴くらしく、すごい速さで落ち葉の下を駆け回り、どんな奴にも絶対に捕まらないらしい。

 そんな『オバケどんぐり』は、いつの間にか、かけっこで一等賞を取る神様とオレ達の間で言われていた。

 カサカサカサカサ……。落ち葉の下を走る音がする。

「お兄ちゃん、そっちに行ったよ!」

「うおっ! マジで速えぇ!」

 運動会の日が決まって、オレと妹は毎日『オバケどんぐり』と追いかけっこをしていた。

「待て、待て~」

 カサカサカサカサ……。辺りが暗くなるまで、オレ達は『オバケどんぐり』を追いかけたが音だけで姿は全然見えなかった。



「『オバケどんぐり』様。おかげで運動会で一等賞が取れました」

 運動会の翌日、どんぐり林の隅の石碑に二人で栗まんじゅうを供える。

 『オバケどんぐり』は和菓子が大好きらしい。

「帰ろうか」

「うん」

 帰る途中

「キュイ!」

 嬉しそうな鳴き声が秋風に聞こえた。

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