第115話 フランスのシャトーホテルに泊まった話

 数年前に一度フランスのシャトーホテルに泊まってから、シャトーホテルに宿泊するのが大好きになってしまった。

なぜなら、かなり非日常の空間が味わえ、これぞ「旅行の醍醐味!」と思ってしまったからだ。


 しかもシャトーホテルとは言うものの意外に高くない。日本の豪華二食付き(しかも超美味な食べ放題ビュッフェ)や贅沢な温泉まで付いている宿に比べて、せいぜい付いても朝食程度のオプションしかない。しかもフランスの朝食はパンやクロワッサンにチーズにフルーツとヨーグルト、そしてコーヒーに紅茶にオレンジジュースくらいで、普段は貧しい食文化のドイツのホテルの朝食ビュッフェ以上に寂しいのである。


 それで適切な時に、適切な場所を探すとたいてい2人で一泊当たり、朝食付き120Euro前後でシャトーホテルを探すことができる。

 

 この夏にも2回程、そして今回のポアティエ旅行でもやはり2軒の違うシャトーホテルに宿泊した。


 夏に宿泊したホテルはルイ14世が3番目の妃であるマントノン夫人のために建てたお城で、これは素晴らしかった。


http://chipi616.blog.fc2.com/blog-entry-843.html


こちらは私のブログでのそのホテルの記事なのだが、旅行記をどうしてもブログの方に載せてしまうのは、ブログだとたくさんの写真をふんだんに載せることができるためで、やはり景色やホテルの様子などは写真で見るのが一番わかり易いだろうと思うためだ。文才のある人が書けば写真以上に情景が浮かぶのかもしれないが、私の文章で説明しても、皆さんに伝わるとは思えない。「百聞は一見にしかず」という言葉もあるように、写真でみていただきたいので、どうしてもブログサイトでの紹介になってしまう。



 さて、今回のポアティエのシャトーホテルだが、実はなかなかの雰囲気だった。

 

 ポアティエのフランス人友人の話ではかれこれ10年程前にこのお城が売りに出された際に、彼も購入しようかどうか迷ったものだったらしい。


「お城を買うって? なんてお金持ち!!!」と思われるかもしれないが、ドイツやフランスではたまにある話だ。

というのは、このポアティエのお城は長らく廃墟になっていた時期というのがあるらしい。廃墟のお城は多分1000万円くらい(あるいは以下)で売り出される時も多々ある。それでも皆が「お城!安い! 即購入!!!」とならないのは、それをリノベイトするのに、1億円くらいかかる可能性もなきにしも非ずだからだ。


 家の工事など自分で全てできる技術があり、体力もあるのであれば、この改装費も想定内の金額で抑えられるかもしれないが、人に頼まなければ何もできないオーナーだったら、全部改装するためにいくら掛かるかは予想できない。ヨーロッパは人件費が高いので、そういった事も考え合わせれば、簡単に購入する気持ちにはなかなか誰もならないのである。


 それでその友人夫妻も諦めたらしい。


 で、この廃墟だったというホテルはすっかり改装され、私達の部屋は「マリー・アントワネットの部屋」という名前が付いた、いかにもロココな雰囲気の内装で、私は中日はほ半日をこの部屋で一人で過ごしていたのだが、なんとも「気持ちだけはマリー・アントワネット(あくまで気持ちだけ)」という気分を味わえたのだった。

 

 ついでにお城散策と、地下へ行けば、そこは地下の広い空間を利用した「卓球部屋」になっていて、これならうちの息子達を連れてきても楽しめそうだ、とも思った。


 話は変わるが、うちの息子達を日本の旅館ホテルへ連れて行った時、美食、温泉、カラオケ、卓球台がホテルにあるのはもちろん、でも彼らが一番びっくりしたのは体育館をまるまる借りることができたことだった。その大きな旅館には綺麗な体育館まであって、バスケットボールなどももちろん常備され、それを全部自分達だけで1時間使用して良い、という太っ腹なホテルのサービスには3人共いたく感動していた。


 このシャトーホテルにあるのは卓球台と外のプールと庭にあるバスケットボールのゴール籠くらいで、日本旅館の体育館には大きく負けるものの、でもこの地下室の雰囲気がなかなかだったのだ。


 中世風の重厚な扉があり、そこから続く石の階段を降りて地下へ行くのだが、全部石と煉瓦でできていて、卓球台さえなければ中世のお城の地下に舞い込んでしまった気分である。


 だいたいこのポアティエのシャトーホテルは内装もいかにも中世の時代にお城といった雰囲気で、なんとなく古風な雰囲気が漂い、壁にはこれまら中世風にタペストリーが飾られていて、城内を探索していると、そのまま中世に迷い込んでしまうかも、というような何とも言えない気分を味わうことができた。


 ところでドイツには「お城」を表す言葉が4つほどある。


 Burg 「城砦(じょうさい)」

 Schloss 「城館」

 Residenz 「 宮廷的お城」

 Festung 「要塞」

 

ちなみにフランス語と英語では上から


独語「Burg」  仏語「château fort」  英語「Castle」

独語「Schloss」  仏語「château」   英語「Palace」

独語「Residenz」  仏語「residence」  英語「Residence」

独語「Festung」  仏語「place forte」  英語「Stronghold」


となるようだ。


 それで今回のポアティエで私が宿泊したのはこの中でも「Burg」という感じだった。部屋の中だけはロココ調ではあったが、お城自体はゴツゴツしたもう少し前の時代のお城という感じだったのだ。「Burg」とは要塞としての機能を持つ中世の城の意味なのだが、いかにもそれを彷彿させる造りのお城だった。


 それで実は最初の夜はまだ用事があった主人を友人夫妻宅に残し、23時位に一人、Taxiにてホテルへ帰宅した。


 実は最近気がついたのだが、シャトーホテルというのはたいてい不便な場所にある。考えたら郊外のあまり人も住まない広大な土地がある場所に建てるのが普通だろう。それで夜真っ暗な中、少し肌の色も褐色の若い男性ドライバ-に車内音楽もラジをもない不思議なほどに静粛な中、森や草原を通ってお城まで30分近く一人で運転してもらっているのも少し怖いくらいだったのだが、無事到着して斡旋されている私の「アントワネットの部屋」がある建物の鍵を開けて部屋に戻った。しかし主人は鍵を持っていないし、うちの建物の最初の入口のドアは鍵を閉めるのはやめておこうと、ドアだけ閉めて、でも鍵はかけず開けっ放しにしておいた。

そしてその後寝る用意も済ませ、ふと窓を見ると、なんとすごく大きな男の人が(多分黒人系の)お城のメインのドアを開けようとしているではないか。


 何かが、おかしい。


 このお城に宿泊している人にこんな男性も、そしてこのお城の働いている人にもこんな人はいなかった。それにもっとおかしいのは夜そのメインのドアは固く斡旋されてしまい、夜は外から開けることはできないということは宿泊客なら知っているはずなのに……。


 しかも考えたら、このお城は庭や敷地内は誰でも入れるようになっているのだ……。


 彼は大きな斡旋されたドアの前をウロウロして色々見ている。


 嫌な予感がして、私は急いで自分の部屋から階段を駆け下り(なるべく静かに)、うちの部屋の入り口のドアを鍵で斡旋したのだが、その後また上の窓から確認するとその男性の姿はなくなり、主人もその30分後くらいに帰宅した時にはもう外には誰もいなくて、一体あれは誰だったのだろうと今でも不思議に思う。


 私がTaxiで帰宅した時にちょうどその男性と庭で鉢合わせせずに、良かったかも、と胸を撫で下ろした晩だった。


 ……と、可愛らしいマリーアントワネットの部屋、そしてタペストリーだらけの広々として重厚な中世風サロン、昔は牢屋でもあったの?というような地下の空間、そして夜のこの事件(というほどのことではないのだが)といい、色々な意味での非日常的な気分を満喫できた3日間の滞在だった。


 このホテルはまだブログで写真を載せていないのだが、そのうち載せる予定だ。

ご興味ある方はブログの方の「ドイツ片田舎から日々のあれこれ http://chipi616.blog.fc2.com/」もたまにご確認下さい。 


 また、4年前に泊まったシャトーホテルをYoutubeでご紹介している。是非映像で見てほしいと思ったからなのだが、今年春から小説書きを始め、YouTubeを作成する時間がなくなり現在はYoutubeは全くお休みしている。


https://www.youtube.com/watch?v=Km5wDsa0cuE


でもこのシャトーホテルも素敵だったのだ、ご興味ある方はこちらのURLから一度訪問してみてください。

フランスのシャトーホテルのイメージをご理解いただけると思います。






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