第113話 エリザベス2世のお葬式で思ったこと

 今日は11時から18時までエリザベス女王のお葬式の様子がドイツのニュース番組のLive放送で流れていた。


 今ちょうど小説で、薔薇戦争中の15世紀のイギリス王家の話を書いているので、そんな理由もあって今日はほぼ一日その中継を見てしまった。

ほぼ全部というわけではなく、TVをつけっぱなしで部屋を離れたりしていたので、部屋に戻れば目に入る、という程度だったのだが、途中辺りからなんだか胃もたれという気分になっていたのは私だけだろうか。


 グレート・ブリテンの威信をかけて、という気迫のせいか、いやそもそもそんな気迫があろうがなかろうが財政的にはなんの問題もなく、式を執行する財力があるのだろうけれど、最初から最後まで豪華絢爛な式の様子を見せられ、

「なんだかなぁ」と思ってしまったのだ。


 だいたいイギリス王室はスキャンダルの塊のような王家ではないか?

そもそもチャールズ皇太子(今は国王だけれど)が、若くて美しいダイアナ妃をないがしろにして離婚、そして長年の年上の愛人カミラと結婚したこともどうかと思うが、エリザベス女王の長女アン王女にしても護衛の巡査部長と、その後は海軍中佐とダブル不倫の関係で不倫の常習犯のようだ。

しかし最悪の醜聞といえば次男のアンドリュー王子の17歳の女の子に対する性的暴行事件で、これは犯罪ではないのか。性犯罪者で有罪になり、そして自殺した実業家のジェフリー・エプスタインの事件は有名だが、アンドリュー王子はその仲良しお友達グループの一員だったというのだから開いた口が塞がらないとはこのことだろう。

このアンドリュー王子の妻セーラ妃(大昔に離婚)もおかしな夫婦だった。


 長年の醜聞続きでエリザベス女王も心労が耐えなかったとは思うが、エリザベス女王の王配も人種差別的な発言などの多い人だったと記憶している。

中でも日本人として許せないフィリップ王配の失言は、80年代エリザベス女王と中国を訪問した際に、中国で学んでいた英国からの学生たちに、

「君たち、ここに長くいすぎると、帰国するときには細長い目になっているぞ」と言ったという話なのだが、私はこれはジョークとは笑えない。


 このフィリップ王配は若い時はハンサムでエリザベス女王の初恋の君だったということだが、若い頃からなんとなく冷たそうな顔をした方と思っていた。


 そもそもエリザベス女王にしても若い頃はともかく、後半は「女王様」というよりは「めちゃくちゃお金持ちのおばさま」という雰囲気しか感じなかったが、それは私にとって王家というのは日本の皇室が基準にあるためで、美智子様とは随分違う雰囲気だなぁ、と思っていた。


 20年ほど前に、奈良駅で平成天皇陛下と美智子様が歩いておられるところに偶然にもちょうど通りかかる機会があり、お姿を拝見し思わず涙がでてしまったのだが、天皇陛下と美智子様がそれは神々しくていらして、私達普通の人間とは明らかに違う次元の世界におられる方達と強く感じたからだった。


 それに比べて、故エリザベス女王にしてもカミラ新王妃にしても、とても素敵なキャサリン皇太子妃にしても、この方達をどこかでお見かけするようなことが例えあったとしても(多分ないけれど)、だからといって私が涙が出るほどに感動することはなさそうだと思う。


 イギリス王室の方達は私達と同じ普通の人間と思えてしまうので、お姿を拝見しても美智子様をお見かけしたときのような衝撃は受けないに違いないからだ。

美智子様がご生涯を皇室のため、そして日本のためにご自分の気持ちも思いも全て我慢して、大変厳しく生活して来られたというのがお姿から伝わってくるのだが、非常に残念なことに、カミラ王妃にはそれは全く感じない。それどころか自分の我を押し通した女性としか見受けられない。その点でもチャールズ新国王とは似たものご夫婦である。


 ところで私の親友はハンガリー人のカティなのだが、やはり彼女と私は同じ感性があるらしい。

昔、彼女が言ったことがある。

「スペインの教会にいると気分が悪くなるわ、金(きん)だらけで。あの金を見ているとこの金はどうやって集めたの、どんな風に奴隷たちから、って思ってしまうの」と……。


 今日一日最初から最後まで絢爛豪華な式典を見ていて、私が気分が悪くなった理由がまさにそれだった。


「この美しい教会建築、宮殿、財産、秘宝の数々は元はどこから来たものなのだろう。植民地支配からだよね」とそれが頭の中をぐるぐる回り始め、途中からは全く集中できずに見ていた。


 そうこうしていたら、

『「最古のダイヤモンド」返還を』という英王室の王冠に飾られたダイヤモンドの返還を求める声がインドから再熱しているという記事を見つけた。

どうやらムガール帝国が所有していた世界最古のダイヤモンドと言われる宝石をビクトリア女王時代に取り上げていたらしい。


 またTwitterで仲良くさせていただいている方からは、「アフリカの文化遺産の約 90% はヨーロッパにあると言われ、ロンドンとパリだけでも数万点の遺物があると言われています」という事実を教えていただき、

「あぁ、これだ、私の今日の違和感は」と思い立った。


 エリザベス元女王も、新国王チャールズも自分達の一族が犯した罪深い所業をどうか忘れませんように。

貴方様方のこの大いなる繁栄は植民地政策以外の何物でもないでしょう。

これほど豪華なお葬式をする力があるのであれば、昔盗みように取り上げたダイヤモンドをどうかインドに返してあげて下さい。


 私はこんなことを考えながら今日のお葬式を見ていたのだった。


 エリザベス女王が亡くなられ、そしてお葬式の日にこのようなことを書くのは不謹慎かとも思ったが書かずにはいられなかった。


 話が変わるが、実は私はほんの数日前、フランス人の仕事の仕方に腹が立っていた。私達日本人から見たら、ドイツ人も結構酷いがフランス人はもっといい加減だし、イギリス人もあまり変わらないのではないかと思われる。(偏見かもしれないが)

 

 それで主人に

「なんで西ヨーロッパが経済大国になれたのか理由は2つだね。1つはエゴが強かったのと、もう1つは植民地政策の恩恵」

 

 この時なんと主人は私と声を揃えて「エゴが強いせい」と言ったのだが、もちろん植民地政策にも大きく頷いていた。


 他の国へ行き、勝手に資源も人材も全てを盗み取りあげるなら、考えられないほどの利益を産むのは当然のことだろう。


 今日の盛大なお葬式を見て、私はそう感じせずにはいられなかった。


 そうしたらやはり

『「私たちは泣くべきではない」エリザベス女王の死に、アフリカ系イギリス人たちが複雑な感情を抱く理由』という記事もあると教えてもらい、私は本当はこんな記事を探していたのだ、と心から思った。


 しかしながら小説の方でランカスター家とヨーク家の「愛の日」というパレードについて書く予定なので、女王の棺と共に長いパレードの様子を見ることができたのは、イメージを作る上で参考になり、良かったことではあった。

たまに中世風な立ち襟の軍人さんなどもいて、当時を偲ぶ気持ちにもなれた。


 薔薇戦争時代から、スキャンダルで大変なイギリス王室だなぁ、と思わされた一日でもあった。




 

※ところで、この2つの記事のURLを記載しておくので、読んでみたい方は是非目を通して下さい。



『「最古のダイヤモンド」返還を 英王冠に使用、ネット上で再燃―インド』

https://www.jiji.com/jc/article?k=2022091600681&g=int



『「私たちは泣くべきではない」エリザベス女王の死に、アフリカ系イギリス人たちが複雑な感情を抱く理由』

https://www.huffingtonpost.jp/entry/queen-elizabeth-black_jp_63217f2be4b082746be4bebd



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