第101話 ドイツの博士課程ではお給料が貰える話は本当か

うちの研究所には本当に様々な国から研究者、研究者卵の皆さんが来ているので、今回のように色々な国の人に一度に聞くことができて有り難い上に、色々な国の人と知り合えて楽しいのですが、でもなぜ色々な国から来ているのかといえば、やはりひとつにはドイツの博士課程学生への対応が素晴らしいということが挙げられるのではないでしょうか。


意外に日本の皆さんには知られていないようですが、ドイツは国公立大学が多いので、そこへ行く場合、学費は無料です。


ドイツ人にとっては学費が無料なのは常識的に当然と考えているため、わざわざ高い学費を払って私立の大学へ行こうと思う場合は少なくて、これは何か特別にその私立大学でしか勉強できない時の選択肢かと思います。


それで例えばアーヘン工科大学でも半年に一度350ユ-ロほど払うのは確かですが、こちらはNRW州の全域カバーされる電車のチケツト代金でこれは全員購入必須ではありますが、学費として支払うことは皆無です。


そもそもここでは小学校から高校くらいまでの学費は無料ですし(幼稚園は義務教育ではないので費用がかかります)、その上何が素晴らしいかと言えば、ドイツでは博士課程の学生は学費は無料な上、お給料まで出るということです。


うちの主人が30年前博士課程にいた際は、月々1200マルク(今でいうと600ユーロくらい)お給料が出ていたそうですが、現在では物価上昇とともに報酬も上がり、月々2000ユーロくらいになる学生さんもいるそうです。


実際今回の翻訳の件でも意見をもらったうちの研究所で博士課程の勉強をしているスペイン人とロシア人の友人達にこの件も数ヶ月前に確認したところ、そのくらいの金額で間違いないということでした。


また、博士課程の学生さんの中には教授の手伝いをした場合は、お給料がもっと高くなる場合もあり、上記の友人2人は特に教授の手伝いはさせられていないので、全ては自分の研究の時間のためだけにそのようにお給料が貰えるのは素晴らしいシステムであると言っていました。


それからドイツ国内では研究所だけではなく、どの大学にいる博士課程の学生でも、そしてそれが外国から来た学生でも全くドイツ人と同じ待遇を受けることができるのです。


その上修士課程の学生さんでも場合によってはお給料も貰えるという話も聞きました。

ただしその場合はやはり、大学側の結構色々なお手伝いをすることにはなるようですが。


ただし、これは理系の学生のみで、文系学生さんはどうやらこれほど一律にはお給料はもらえないようですが、こちらは詳しいことは、すみません、調査不足なのでわかりません。


だいたい博士課程まで行って、将来的にメリットがあるのは文系より理系の学生で、博士課程にいる文系学生さんは人数的には少ない可能性もありますね。


…まぁ、それはともかく、このドイツのシステム、私は素晴らしいと思いますね。


勉強を続けたいから大学院へ進みたい、でも経済的にはそれは不可能、と勉学を断念しなければならない、いう状況には絶対に成り得ない、という社会ではみんなはより安心して、自分の能力を発揮していくことができるのではないでしょうか。


そのメリットが多いことに気がついた中国人学生がドイツでは激増しているようです。


一方それほど素晴らしいシステムでありながら、そこまで勉学を頑張ろうというドイツ人も多くはないので、大学も研究所の自然に“優秀な外国人”研究者というのが増えていくことになりますが、優秀であれば外国人、ドイツ人というものは全く関係なく、同じ待遇を受けることができるというこのドイツの公平さが、これまた素晴らしい、とつくづく思うようになった最近です。


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