第93話 極上の映画と言えばやはり『めぐり逢い』
好きなフレンチコメディーを2回にわたり書いたら、「好きな映画紹介」が止まらなくなってきました。
なので今回は私が本当に一番好きな映画をご紹介させていただきたいと思います。
ケ-リー・グラントとデボラ・カーの『めぐり逢い』(An Affair to Remember)です。1957年のハリウッド全盛期の映画です。
ストーリーを簡単に言うと、プレイボーイのニッキーと歌手のテリーはお互い婚約者がいながら船旅で恋に落ち、お互いにふさわしい人となるよう努力して半年後に再び会おうと、再会の日を夢にみて頑張ります。
ケーリー・グラント演じるニッキーは画家として一流になるように絵を描き、そして2人共に婚約者と別れ、ついに半年が経ちました。
約束の場所はかの有名なエンパイヤステートビルディングの最上階なのですが、そこへの移動中にデボラ・カー演じるテリーは事故にあってしまい…2人はすれ違いを重ね、さぁ、2人の恋はどうなってしまうのでしょうか、という、後半はハラハラドキドキの転換となるストーリーなのですが、途中に入る挿入歌「過ぎし日の恋」(An Affair to Remember)がそれはもう素晴らしいのです。
前半の途中でニッキーの祖母の家に2人で訪ねた時に、そのお祖母さんの演奏で歌手でもあるテリーが歌うこの「過ぎし日の恋」(この場面だけフランス語の歌詞になっています)は聞いているだけでうっとりしてしまいます。
また歌手として最後の夜となるだろうという日のステージで歌うテリーはめちゃくちゃエレガントで、当時のハリウッド女優さんが美しいだけではなく、この世で特別な存在であるということを思わされます。
そうなのです。
この時のデボラ・カーの華麗さはこの人は本当には天上界の人なのでは? というくらいに神々しい美しさに溢れています。
この前年に『王様と私』に出演、当時既に30代半ばでありましたが、心の美しさがここまで全面に出ている女優さんはハリウッド広しと言えども、そうそう多くないと思います。
なので、この役は彼女以上にぴったりの女優さんはいなかったことでしょうね。
会いに行く際に事故に会い足が不自由になったことを、さっさと告白すれば全ては簡単だと言うのに、テリーはそれを頑なに拒みます。
誰よりも愛するニッキーに負担をかけたくない一心で隠し通そうとするのですが、そこには一瞬のためらいすらありません。
純粋な心と、そして確たる信念を持った、その上たぐいまれに美しい女性がこの映画のヒロイン、テリーなのです。
このストーリーは最後の最後が本当に素晴らしいので、結末は言えないのですが、私自身はこの映画は20回くらいは見ていますが、最後に泣かなかった事は一度としてありません。結末がわかっているのにそれでも必ず泣かずにいられないとはどういうことなのか、と思うのですが、そのくらい最後の展開には心が鷲掴みにされます。
その時のニッキーとテリーの表情のひとつひとつがあまりに完璧で、さすが名俳優と名女優さんの共演であり、これこそまさに至極の名作だと思います。
こんなにロマンチックな映画はめったにないので、これを見てからはどんなにロマンチックでも、この映画に比べたらそうでもないな、と思うようになってしまい、少々のロマンチック映画では心動かされなくなってしまったほどです。
それからこの映画のテ-マソングの「過ぎし日の恋」のメロディーがまたまた素敵なのですが、しかしながら、この歌を実際に歌っているのはデボラ・カーさんではなくて、「最強のゴーストシンガー」と異名のあるマーニ・ニクソンさんだそうです。
彼女はこの歌のみならず、『王様と私』、『ウエスト・サイド物語』ではナタリー・ウッドのマリア役で、『マイ・フェア・レディ』ではオードリー・ヘプバーンのイライザ役での吹き替えで歌っていますが、彼女の存在は長年内密にされていたので、彼女のことを知る人は少なかったそうなのですが、その存在を世間に公表したのはデボラ・カーさんだったそうです。彼女と親交があったので、ここでも心優しい彼女は言わずにいられなかったのかもしれませんね。とりわけ正直そうなお顔をしているデボラ・カーさんらしいな、と思ってしまいました。
しかしこのマーニ・ニクソンさんという方は
「女優の特有の発音や声色まで似せて歌うニクソンは『最強のゴーストシンガー』としてハリウッドの業界関係者の間では有名であった」(Wikipediaより)ということで、私もこれらの曲を一度全部まとめて聞いてみたことがありますが、本当に全部が同じ人だとは言われなければ(言われても?)わからないくらい、その女優さんの声や雰囲気に合わせて歌っていらっしゃるように思います。
それからこの映画はもともとは1939年のアイリーン・ダンとシャルル・ボワイエの『邂逅』(原題:Love Affair)がオリジナルで、また1994年にもウォーレン・ベイティとアネット・ベニング夫婦が『めぐり逢い』(Love Affair)でリメイクをしていますが、オリジナルもリメイクも、ケ-リー・グラントとデボラ・カー2人のハリウッド大スターには敵わないと思います。
…ということで、もしまだ『めぐり逢い』をご覧になっていない方がいらっしゃいましたら是非是非御覧ください!
本当に最高のお薦め映画です!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます