第91話 ワインの収集家だった義両親が日本で仰天したこと

11月の終わりに亡くなった義母が、この1年ほど一人で生活させるのが心配で。老人レジデンスという老人マンションに部屋を借りていたという話は書いたかと思いますが、1月中にその部屋を引き上げる約束をしているため、ほぼ毎週週末だけ主人と長男、次男という組み合わせで、度々3人でブルージュへ行っていました。


24時間以内の遠出は現在私達の住む地域では許されているので、行って次の日には帰るという日程ですが色々運ぶもがあり、力仕事が多いので、男手が必要という理由があったため、私と三男はドイツの自宅に留守番していることが多かったです。


先週は最後の大きな家具を引っ越し屋さんにお願いして、部屋のものは全部運び終わり、あとは地下に借りていたワインセラーに置いてある300本のワインというのを引き上げる必要があり、これが最後の大仕事だったわけですが、先週と今週の2回に分けて、ワインを運びました。


実はうちの義両親はワインを飲むのが好きなだけではなくて、ワインの収集家でもあったのですよね。


ですが、ワインセラーなしにワインを保存するのは品質の管理上(しかもその上300本という大量の)難しく、と、言ってワインセラーをわざわざ借りるほどワインが好きでもない私達は、ごく一部を残しあとはほとんど売ってしまう予定です。


それで幸いにして100本はもう先週、まとめてワイン専門業者に売ることができました。


なんと驚くことに、その中のたった3本ではありますが、1本1000Euroで売れたものすらありました!


ワイン業者さんはそのワインをまたもっと高値で売る予定なのでしょうから、1966年とか1978年とか、そんな古いワインもコレクターにとっては高値でも絶対に購入したいという程に好きな人というが確実にいるものなのだな、と思いました。


正直古いワインだと、当たり外れもあり、お酢のような味になってしまっているものに当たってしまう場合もあるそうなので、もちろんそんなことは承知でも、破格に高い値段でワインを買いたい人たち、コレクターというものがどんな分野にでもいるものなのですよね。


今残っているあと200本のワインは、ゆっくりと時間をかけて整理しながら少しずつ売っていくつもりですが、今回そのワインコレクターの端くれだった主人の両親の遺品を整理していたら1枚の写真が出てきたのです。


ワインが棚にズラーッと並んでいる写真なのですが、見覚えがあります。


よく見たら実は仙台の〇〇郡(市内ですらない)にあった酒屋さんの写真でした!


当時私と主人は仙台に住んでいたことがあり、そこに訪ねてきた義両親をよく行く酒屋さんに連れて行った際に義父がそれはもう非常に感激して写真を撮ったものだったのです。


そこのワインは周りに何もないような畑の真ん中にあったのですが、驚くことなかれ、錚々たる高級ワインがズラーっと並んでいたのです。


有名なブルゴーニュワインのロマネ・コンティからピノ・ノワール、ボジョレー・ヌーボーはもちろん、ボルドーワインのシャトー・ムートン・ロートシルト(ロンドンのロスチャイルド所有の)もシャトー・ラトゥールもシャトー・マルゴーもシャトー・ラフィット・ロートシルト(こちらはパリのロスチャイルド所有)も、まあ、とにかくその畑の中の一軒家の酒屋さんでは、無造作に、でも綺麗にすごい品揃えのワインが並んでいたとかで、義父が物凄くびっくりしていたのを覚えています。


しかも日本ですからね、全部それがまた物凄く高い値段で売っていたわけなのですよ。

輸入していて運送代も税関もかかり、高くなるとは言え、多分欧州で買うより少なくとも2倍以上は高い値段で売られていますよね、日本の場合。

また高くても買う人がいるっていう…あるいは高いほうが売れるということもあるのでしょうね、これまた日本では。


それで今回1本1000Euroで売れていたと喜んでいたシャトー・ペトリュスも日本ではいくらで売っているのかふと思い調べてみました。

シャトー・ペトリュスの2000年代のものが80万円というのを見つけてびっくりした私はもしや!!と思い調べると、義父のシャトー・ペトリュスは1973年と古すぎるせいか、さすがにそんなに高い値段ではなくて23万円くらいから場合によっては7万円くらいでも売られているようですね。

ということは、今回のドイツのワイン業者さん、非常に良心的に買ってくれたということ安心しました。


我が家にはあと、1937年のロマネ・コンティもあるそうですが、これだと100パ-セントお酢の味になっているはず、とのことで、これは売らずに思い出として取っておくのだそうです。


…というわけで、せっかくのロマネ・コンティは古すぎて飲めず、シャトー・ペトリュスもシャトー・ムートン・ロートシルトも古くて美味しくないだろうにも関わらず一応納得の値段で売れるようなので、飲まないままに素通りで私の目の前を通り過ぎていくようです。


ところが今回私が一緒に行き片付けを手伝っていたら、ひょんな場所からワインを見つけました!

ということでこれは主人に言って、私のワインにさせてもらいました。


今回私がせしめたのは2010年のシャト―・ジャックマンです。


調べるとドイツでは2011年ものであれば70Euroで購入できるようですが、2010年ものは見つけることができませんでした。ワインは年代によっては高くも安くもなるので、正直10Euroで売られているワインなのか、100Euroくらいなのかも検討もつきません。


しかも主人に聞いたら「そんな名前のワインはよく知らない」ということで、実はどうでもいいワインなのであっさりくれたのかもしれないです、よくわかりませんが…


私は味音痴なので、実はワインもそんな感じで正直どれが美味しいかもわからないのですが、10年くらい前なら、まださすがにお酢の味もしないでしょうし、何か自分の特別のときのために(今から一体どんな特別なことがあるのかどうかもわかりませんが、正直ほとんど何もなさそうですね)、取り敢えず大切に保管しておく予定です。



しかしそれにしてもそんなにワイン好きだった義父が、仙台の田んぼの真中の酒屋さんのワインに感激して、捨てられなかったのであろうその写真を見て、なんとなく胸が熱くなりました。

本当にびっくり仰天したんでしょうね。

それにしても日本のお店の品揃えの良さは平均したら世界一ですね、多分…というか絶対に。


この数日ドイツやベルギーのドーナツやチョコレートのことを友人との話題にしていたんですが、日本ではゴディバとローソン、あとピエール・マルコリーニとミスドがコラボして美味しいものを作っていると聞きました。すごいですよね。

他の国ではそんな美味しそうなコラボはまずないでしょうね。


義両親もワイン屋さんに感動した時の仙台の訪問では、他にもとても喜んだことがありました。

仙台のデパートでオーストリアの有名なデメルのザッハトルテが買えるとびっくりして、毎日お土産に買ってきていた程、それもすごく感動してましたね。



それにしても義父のこの酒屋さんの写真ですが、義父は多分驚愕のあまり、その写真を色々な人に見せたでしょうし、取っておきたかったのでしょうね。

なので私も1本だけ手に入れたワインと共に、義父の思い出として取り敢えず取っておこう、と思っています。






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