第84話 離婚しても2人の合計年金金額の半分を貰えるドイツ

先日、「お母さん年金」について書きましたら、日本の方から、ではもしドイツで夫婦が離婚した場合には、将来貰える年金はどうなりますか、と質問があったので、私も興味がありそれについて調べてみました。


ドイツでは離婚をしたければ、まず1年間の別居生活を送らなければ認められないそうなのですが、本格的に離婚をする際には、最初に金銭的な面で具体的な話し合いをしなければならず、それが決着しないとそもそも離婚もできないようです。

その上、この金銭面での話し合いがややこしく本格的なので、離婚する場合は弁護士さんが必ず必要になり、二人だけの役所申請とかでは離婚すらできないのだとか。


まず財産に関しては、結婚後に二人で買った不動産は全く半分に分けられるようです。これはどちらに落ち度があったかは全く問題にもされません。

ドイツの離婚は、「落ち度」で争うわけではないようです。


そうなのです、これが日本とは多分大きく違う点かと思いますが、ドイツの場合は例えどちらかの不義密通(古くさい言葉ですみません)で離婚することになったとしても、そのせいで浮気をした旦那が悪いとか、不倫をした奥さんが悪いとかそんなことが問われるということは全くないということなのです。


よって普通は慰謝料も発生しませんが、ただし年金を分ける計算をするのに1年くらいかかるので、それが嫌で一刻も早く離婚したい(でも最低1年以上の別居生活だけは必ず必要)というような特別な事情などがある場合は、年金半分の代わりに、毎月の生活費を慰謝料のように払うというような事も場合によってはできるようです。


このような慰謝料については希望があれば、また任意で協議できるようです。


ではまずは大きな財産分与からですが、これは結婚時の財産と離婚時の財産から計算され、結婚した後に購入した不動産(その他土地や証券、保険、貯金、贅沢品など全て)は、例え不倫して他の男性の元へ勝手に出ていった奥さんへもほぼ半分に分割されます。ほぼ、と書いたのは、この計算は少しややこしいようで、

「夫婦間の財産の差額を2等分にし、最終的に残った財産が多い配偶者がその半分を相手に支払う」というように計算するのだそうです。


養育費に関しては、ドイツも北欧に似て「男女平等」の意識が強いので、これは父親、母親に関係なく、経済力の強いほうが弱い方に払い続けばければならないと判決がでるのが普通です。バリバリのキャリアウ-マンでご主人以上に経済力がある場合は、例えご主人の浮気が原因で離婚しても、別れた主人に経済力がなく子供が主人の方へ行くことが決まった場合はお金持ちの奥さんが養育費を払い続けなければならないでしょう。

もちろん逆もしかりで、何度も言いますが奥さんの浮気が原因での離婚でも、ご主人の方の稼ぎが多ければ、もちろん離婚後も子供が奥さん側へ行くと仮定した場合は、ご主人から奥さんへの子供の養育費は払われることになります。

これは子供が学業をしている間(大学生まで)支払い義務があるようです。


これは例えばなんですが、私の身近で起こった話をさせてもらいます。


主人の知り合いや、うちのご近所さんのドイツ人で、偶然2人共開業医の歯医者さんなのですが、奥さんの浮気が原因での離婚だったというのに、結局身ぐるみ剥がされるようにお金を渡さなければならなくて、そのうちの一人はなまじ資産のある開業医だったせいなのかどうなのか、莫大な支払いが生じて、最終的には彼の医院も潰れてしまったというケ-スもありました。

持ち家の資産価値までを計算して分けて払わなければならなくなるなら、そういうこともあるのかもしれないですが、彼の場合は本当に気の毒でした。


彼は離婚後若い奥さんをもらうのですが、その奥さんのお金遣いの粗さがトドメを指し、彼は持ち家も無くし、現在では60歳間近になって開業医から、他の経営者のいる歯科医にて雇われ歯科医になりました。

私のような専業主婦並に稼ぎしかない女性には有り難いと言えばいいのか、しかし正直なんと言えば良いのか言葉を失くします。

でも先程も言ったように、反対に自分が資産家の立場であるなら自分にも返ってくる、まあ、なんとも厳しい法律ではあります。

弱者を守るようにできているということなのでしょうけれど、これでは資産家はおちおち結婚もできなくなるのでは、と思いませんか?


でもこれには抜け道があって、結婚する際に誓約書を作成し、約束したことなど(例えばいつか離婚する時が来ても、この不動産に関して請求しませんというような)があれば、離婚する時にそこまで身ぐるみ剥がされるようにはならないそうで、資産家は大抵こういう契約書を交わして結婚するのではないかと思われます。


なんだかずいぶん味気ない結婚のように思われるかもしれませんが、離婚理由は関係なく、お金のある方がない方に支払わなければならない、ということがこれほど徹底されていれば、誓約書を作りたくなる気持ちもわかりますよね。

あるいはそもそも籍も入れたくない、というセレブ同士の結婚も多いので、これはドイツだけではなく、欧米では多くの国がこのような法律なのかもしれないです。


さて、そしてこれが今回質問された年金に関してですが、年金は完全に半分ずつ、になるようです。


例えば、

ご主人の年金   2500 Euro÷2  1250 Euro

奥さんの年金    500 Euro ÷2  250 Euro 



このように両方の分を共に2で割ります。

そして、 1250 Euro+ 250 Euro 合計 1500 Euro

で、どちらも将来受け取る年金は、このようにきっちり半分ずつということになるそうです。例ということで2つの年金だけ書きましたが、自分で払うリースター年金など、自分名義のプライベートの年金保険なども全部半分2等分にさせられるようです。


これは素晴らしいですね。私も知りませんでした。


ただし結婚期間を基にした計算になるので、例えば結婚5年で破局した場合に、でも男性は離婚後も働き続け年金を納め、奥さんは無職のまま年金者になった場合は、もちろん5年間分のみ計算されて受給ということになるのだそうです。


ですがドイツは離婚大国で2016年の離婚率は39,6%(これより最新のものはまだ出ていませんが、例えば2011年は49,7%もあったそうです)ということで、もし半分近くの夫婦が仮に離婚した場合は貧困な老人が増えるということにもなりませんかね、どうなのでしょうか。

ですがやはり経済力のない方が守られるという鉄の規則なので、経済力のない私のような人にはむしろ得なのでしょうね。


それから少し先の話になりますが、ではもしその離婚した主人が先に亡くなった場合は、今まで半分の1500Euroを貰っていた奥さんへの年金は消滅するのか、と言えば、もちろんそんなことはなくて、元主人が亡くなったら、離婚時に半分と約束した年金に関しては計算も終わり、既にかたが付いているということで、元奥さんは死ぬまで問題なく受給されるのだそうです。年金は主人の貯金から出るわけではなく、国から貰うわけですから、元主人が亡くなったら、「はい終わり!」なんてことにはならないということでしょう。


この計算自体も1年位かかるときもあるようですし、離婚時に裁判所がそのように計算したものは、後から変更になり、しかもなくなるなんてことはどうやら有り得ないようです。



しかし万が一、その前の夫が突然亡くなり、今まで1500Euroしか貰っていなかった奥さんが、その前の主人が受け取っていた1500 Euroを今度は自分が引き続き貰い、合計分の3000 Euroにできるかと言えば、それはどうなのでしょうか。

皆さんどう思われますか?

これは私も調べました。色々な知り合いにも聞きました。


でも現在聞いた範囲では、離婚の際にそれは決定される事柄なので、後になってから金額に変更があったりはしない、ということでした。

亡くなってしまえば、その亡くなられた方の分はそれで終わり、という意見が多かったので、今の所はこれにて結果とさせていただきます。


よってTwitterで私が「別れた主人が亡くなった場合、申請すれば、現在の年金プラス亡くなった主人の年金も受給されるようになり、元主人の死によって貰える金額も増えるかもしれない」と書いたのは完全にガセネタだったことをこちらにてお詫び致します。


勘違いした理由はドイツの弁護士さんが、自分に依頼すればこんなことも可能であるというような宣伝をネットに載せているのをちらっと読んだせいなのですが、ほとんどの人のケ-スに当てはまるわけではないようで、多分ごく一部では(仮にそもそも本当は自分の年金分が多かったというような場合とか他にも条件があるのだと思いますが)多少年金のポイントとして取り戻すようなことは可能かもしれません。ですが確信が持てず、と言って、主人にこの情報の確認を取るために聞いたりして、なんのことかと主人をびっくりさせるわけにもいかないので、今のところのこの話のまとめとしては、


離婚後に元主人が亡くなったら、その主人本人が貰っていた年金は消滅、でも離婚時に半分と決定された年金に関しては、元奥さんは当然死ぬまで問題なく受給される、ということだけは今現在の法律では100パ-セント間違いない結果であるとお伝えさせていただきます。


以上、今回は離婚した際のドイツの年金の受給についてでした。

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