第76話 長男リ-グ戦 対トルコチ-ム

今日は今季4回目のリ-グ戦で、隣町の対トルコチ-ムでした。

うちの隣町のD町はここ近郊でも有数のトルコ人の町で、その町には25年前にはモスクまで建てられたわけですが、ドイツ人よりトルコ人の方が大きい顔をして町を歩いているという状態でもあり、もはやリトル・イスタンブ-ルという雰囲気です。


うちの村の血気盛んな、ばりばりドイツ人青年達も応援に来ていたので、こんなアウェイの試合で喧嘩にでもならなければ良いなと思っていました。

というか、この2人の青年は毎週うちの試合を見に来る常連さんなのです。


面白かったのは先週で、この2人はうちのS村に住んでいますから、まず13時の次男チ-ムの試合(対戦相手はうちの長男のいるH村クラブの2軍チ-ム)ではうちのS村の赤いチ-ムマフラ-を肩にかけ、それはアグレッシブにH村に野次を飛ばしS村を応援していたわけなんですが、次の15時の長男のH村クラブの1軍の試合には、S村のマフラ-をさっさと取り払い、今度はその下に巻いていたH村クラブの青いマフラ-を上に着込み、全力でH村を応援するという、まぁ、傍から見ていると、クスッと笑えてしまう彼らは、いつも非常に熱心に観戦しています。


2週間前には50kmも離れたアウェイの試合まで見に来ていたと、さすがの長男も驚いていたくらいです。その日、長男たちは大型バスの送り迎えがあったということで、7部にもなるとそんな良い待遇になるのかと、私はその話にも驚いていたわけなんですが、子供時代から1部や2部のクラブの下部組織でサッカ-していたら、自分で運転して試合に行くなんて、その方がびっくりなんでしょうから、人間立場によって、びっくりすることは本当に様々ですよね。


それで、今日はD村のトルコ人クラブへ行くと、たくさんのトルコ人のお客さんが見に来ていて、なんとも言えない雰囲気でした。

そんな場所で何か悪態でも付こうものなら、袋叩きに合いそうであると理解したのか、うちの村の青年二人は今日は静かにしていました。


この二人は3週間前のホ-ムの試合では相手チ-ムにいたトルコ人に差別言葉を投げつけ、まあ、本当に試合が中止になったらどうしてくれるんだろうと思っていたので心配でしたが、相手の陣地で悪態を付く程には度胸もなく、大馬鹿者でもないようだと知りホッとしました。


しかしながら、昔は本当の戦いをしていた、欧米人とイスラム教徒のトルコ人が今ではこうやってサッカ-の試合で勝ち負けを争うというのは、平和なものだとつくづく思いました。


476年に西ロ-マ帝国が崩壊した後、現在のスペインを通って勢力を伸ばしていたイスラム教徒をフランク王国宮宰のカール=マルテルが、有名なトゥール・ポワティエ間の戦いで破り撃退させることができなかったとしたら、もしかしたら現在の欧米はほとんどがイスラム教徒の国になっていたかもしれません。

732年のことでしたが、「トゥール・ポワティエ間の戦い」ではイスラム教徒は現在のフランスまで来ていたわけですから、ここを死守したカール=マルテルはそう考えると本当にヨ-ロッパの英雄ですよね。


私は別に敬虔なカトリック教徒でも仏教徒でもないですが、それでも世界の大変の国がイスラム教徒になっていなくて本当に良かったと思ってしまいます。

かと言って世界中がクリスチャンというのももちろん望んでいることはなく、色々な宗教、人種がある世界というのが一番良いのではないかと思います。


それにしても、これが1300年前なら、あるいはオスマントルコ全盛期の500年前なら、キリスト教徒とイスラム教徒が公平な審判のもと、仲良くスポ-ツをするなんてことはあり得ない事だったわけで、現在の私達の生活は格段に向上しましたよね。


試合で怪我をしたとしても、スポ-ツの中での怪我で、骨を折るなんてことすら滅多にないわけです。

それがたった何百年前は殺し合いの戦争をしていたわけですから、考えただけで恐ろしいです。


今日は16時半くらいから、その試合の場所からすぐのモスクから高らかに浪々と祈りの声が聞こえてきていて、その場所を一層イスラムチックにしていましたが、敬虔なイスラム教徒たちは本来ならその時間にサッカ-をしたり、あるいは観戦したりで、モスクへ行かないなんてことはあり得ないことなんでしょうから、サッカ-場にいた人達はマイルドイスラム教徒だったのかもしれないですね。


世界中の人がマイルド思想になり、宗教も思想もお互いを尊重できるようになれば良いですね。


たかがサッカ-の試合にもかかわらず、今の平和な世の中の有り難さをつくづく噛み締めて観戦を楽しんだ今日の午後でした。


試合は1対2でうちの長男チ-ムの勝利となり、ますます良い日でもありました。




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