第56話 ドイツでの新型コロナウィルスのこと その2


ついに今日はドイツでも新型コロナウィルスでの死者が出てしまい、午後はそのニュ-スで持ち切りだった。

車を流れるラジオもTVのニュ-スもトップニュ-スで報じられていた。

しかも亡くなられたのはうちのNRW州の方で、先日ここにも書いたうちの近郊40kmくらいにあるH市から一人、あとはエッセンという大都市から一人ということで、79歳の男性と89歳の女性だったそうである。


先日私が「H市は落ち着いて」、と書いたのは大きな間違いで、相変わらずこの街では学校などは閉鎖される措置が2週間に渡って取られているのだそうだ。

なぜ間違えたかといえば、先週TV何かのニュ-スでH市は学校やプ-ル、ダンス教室、サッカ-活動を休止にして、コロナを抑え込むことに成功している、と聞いたからなのだが、それは一時的なことで今でもこのH市は100人以上感染者がいるそうで、今日3月9日時点でのドイツ全土の感染者は1194人、我がNRW州はドイツの中でも最大の484名なのだそうで、それに続くのがバイエルン州の256名で、この数は日増しに増えているので、明日起きたらまた200人くらい増えているかもしれない。


そう思うのも、この1ヶ月のコロナ感染者人数の増え方がすごい勢いだったからなのだ。


中国で感染者のニュ-スが流れたのは1月の初旬だったのだろうか?

1月11日には中国での感染者は41名。

日本で最初の感染者が確認されたのが1月21日。

その頃ドイツではこのニュ-スは1日数回しか流れていなかったように思う。

1月25日の欧州初のフランスにて3名の感染者が出たあたりからドイツでもこのニュ-スが頻繁に聞かれるようになってくる。

1月28日には欧州で2番目、ドイツ初の感染者がこのH市から出て、TVでもラジオでもこのニュ-スが年中流れるようになり、でもその頃は

「コロナ」と「中国」はいつもセットで聞こえいた。

(最初は「中国」とセットの名前で呼ばれていたコロナも、今ではどうもドイツもそれどころではないようで、「コロナウィルス」とだけ呼んでいることが多い。「中国」のことどころではないという感じなんだろう)

そして1月31日にはイタリアでもついに2名の感染者が確認された。


2月初めにケルンのメッセ会場に通訳として仕事へ行っていたのだが、中国人の出店は無くなり、中国人のビジネスマンは来ていなくて、ケルンのメッセ会場は非常に閑散としていたのを覚えている。お菓子のメッセだというのに、なんとなく人が少ない、珍しいほど寂しいメッセであった。


その後の週末(2月10日前後)はOrkan Sabineという嵐がドイツを襲い、学校などは休校に。

その間にベルギ-、スペイン、イギリスでも徐々に感染されるのだが、それぞれの国で感染者は10人以下という状態が長く続いたことに安心していた時期があったのだろうか。

というより、ドイツのNRW州では1年で一番大きなイベントカーニバルのお祭りをする都市が多く、お祭りの用意で非常に忙しい上、とても楽しいし、ということで気分はコロナウィルスどころではなくなっていた、というのが正しいかったに違いない。

少なくともNRW州ではそれで間違いないと思う。


嵐が来て、その後、大事なカーニバルがあり、コロナウィルスのことがなんとなく一頭の片隅に忘れ去られていたのではないだろうか。


この頃、ベニスのカーニバルが中止になったニュ-スはもちろん流れていたが、かといってそれはケルンやデュッセルドルフ、あるいはこの近郊の町には関係ないこと、どうしてもこのままカーニバルを決行しなければ、という感じだったのかどうなのか、今となってはわからないのだが、一般の人はそれでもどこか対岸の火事、という気持ちのほうが強かったように思う。カーニバルがお流れになってしまうのでは、というような話も全く出ていなかったように記憶している。


実際この間の1週間程は人数も16人の横ばいが続いていたからという理由もあるだろう。


それが劇的に変化したのが、カーニバルも無事終わった2月の終わり、ドイツ国内に50人を超える感染者が出てきたあたりからと思う。


3月にはH市はドイツの中でもコロナウィルスの最初の感染者を出した市として有名になり、そこの学校は全て休校になった。

最初は1週間の休校の予定が、後に2週間に伸びてしまい、今日はついに死者も出て、この市はこれからどうなることだろう。

私と主人はこの市内にあるダンス教室にも来週から週に一度通おうと思い、騒ぎが一度収まったかと思っていたので1週間前に申し込みをしたのだが、ダンスレッスンは当然中止になったそうだ。


あと3月2日の月曜日には買い物へ行くと、水、パン、お米、パスタ、缶詰の食料品、小麦粉などが売り切れ状態になっていて、とてもびっくりしたのを覚えている。

つい1週間前はカーニバルのお祭りで皆が浮かれていたというのに、驚くほどの激変ぶりだった。


でもその2日後くらいにお店に行ったら、通常の状態に戻っていて、1週間後の今もそれは変わりないので、人々の

「急いで買い占めなきゃ」という意識はすぐになくなったようではあったけれど。


ドイツ国内感染者は

3月3日には157名

3月5日には262名

3月6日には534名

と倍々に増えていき、今日ついに1000人を超え、1194人になり…、一体明日は何人になっていることだろうか。


H市の感染が広まったのはカーニバルのお祭りのせいだったそうだが、それを言うならケルンやデュッセルドルフのこれからの増加もあるのだろうか、などと考えると、10000人の感染者で終わるようにはとても思えない。


イタリア、フランス、ベルギ-などと違って、ほっぺたにキスをする挨拶はないが、ハグの挨拶も握手の挨拶もあるドイツだし、カ-ニバル中に感染者が異常な勢いで増えていたとしてもなんの不思議もないと思う。


今日はついに今週のチャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン対ドルトムントの試合が無観客で開催されることに決定した。

昨日は元ドルトムントの監督で、現在はリバプール監督を務めるユルゲン・クロップ氏がコロナウィルスについて意見を求められ

「重要な物事について、サッカー監督の意見が重要だという考えが好きではないし、理解できない。(中略)私のように(新型コロナウイルスについて)知識のない人が発言すべきでなく、きちんと専門知識のある人が発言すべきだ」っと発言されたとニュ-スになっていて、あまりのカッコ良さにまたまたファンになってしまったが、とにもかくにもNRW州は有名なサッカ-チ-ムが多い州なのである。

そのNRW州でコロナウィルスの死者が出てしまったのだ。


これからブンデスリ-グの試合もがどうなっていくことか心配しているドイツ人は、コロナウィルスを心配しているドイツ人の数と同じくらいには多いかもしれない。


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