第43話 ベルギーでフランス語を話すのは恥ずかしいこと?
ところで「ベルギーはフランス語よね」と言われることが多く、実際私自身も主人と知り合ったかれこれ25年前の頃は、当時の主人の実家のブリュッセルに行くとフランス語を使うことができて(下手でも一応仏文出身)それは嬉しかったものだった。
でもブリュッセルではフランス語でOKでも、ブル-ジュのお店でフランス語で注文すると主人に
「ここはフラマンの地域、フランス語は失礼です」とこの10年くらい前から文句を言われるようになり、なんとなく意味がわからなかった。
北部のオランダ語圏(フラマン系)と南部のフランス語圏(ワロン系)でもともと
対立があるのは知っていたので、単純に
「ブル-ジュはブルュッセルと違ってフラマン語(オランダ語の方言)の地域だからね」くらいにしか思っていなかったからだ。
でもこの数年やっと実は違う視点のせいなのでは、とふと思い当たった。
私の中では昔はヨーロッパの宮廷では使用言語はフランス語だったというのは聞いていたし、そんなわけでフランス語はいつもエレガントで上品そうな言語なのかと思っていたのだが、なんとここベルギーではフランス語を話すワロン系ベルギー人は、フラマン語を話すフラマン系のベルギー人にはどうも格下に見られているようだ、ということに思い当たったのである。
こちらは、Wikipediaをそのまま引用だが
「南北の経済格差
工業・サービス業が発達した北部のフランデレン地域と、石炭・鉄鋼業が
衰退した南部のワロン地域では失業率に2倍以上の開きがある
(後者の方が失業率が高い)。労働者の需給にギャップが生じても、
ワロン地域はフランス語以外話せない住民が多数であるため、
ワロン人がフランデレン地域で就労することが困難であり、失業率の
格差が縮まらない一因となっている。またブリュッセルは移民が多く、
低技能労働者が多いことから、失業率はやはり高い。
また、南北の経済格差も深刻で、フラマン系の裕福な北部と、
比較的貧しい南部という図式が定着している。
ベルギー建国時は、この図式は逆であり、南部のフランス語圏が
工業地帯として発展しており裕福で、北部が貧しかった。しかし、
今や北部のフラマン地域が裕福であり、北部が南部を見下している状態にある。」
…と、このようになんとWikipediaですらとっくの昔からこのように書かれていたようで、20年以上も年中ベルギ-へ行っていて、この真実に気が付かなかった私が間抜けだったということになるようだ。
今やベルギ-で裕福なフラマン人はオランダ語みたいなフラマン語、フランス語はもとより、英語も話すことができ、ドイツ語も数時間話すうちに理解できるという、信じられないほど高い語学の才能があるのは教育水準も高い彼らフラマン人だけ。
一方、生活に追われ、失業率も高いワロン人はあいかわらずフランス語しかしゃべることができない、という図式なのだとか。
そのせいかベルギ-ではフランス系のスーパ-マーケット
「Carrefour(カルフ-ル)」でさえも、フラマン系の「Delhaise(デレイズ)」
よりも格下に見られているようで、「あそこは安物ばかり」とうちの義母なんぞは忌み嫌っている。
主人一家の話だとフランスの安いス-パ-(でも「カルフ-ル」は全然安いス-パ-ではないと思うが)は蛍光灯が照らされていて、ドイツの安いス-パ-以上に驚くほど安っぽい作りであり、義母は子供達のサッカ-のリベリ選手のユニフォ-ムを買うために一度入ってみたら、頭痛がして一刻も早く出なければ、と思うくらいだったとか。
ベルギーではそんなとんでもないスーパ-はまずないので、そんなひどいス-パ-を作ることが出来るフランス人は信じられない、と話していたのを聞いたことがある。フランスと言うのはものすごく高級なものと、ものすごく低俗なものの間にすごい格差がある、ヨーロッパの中でも珍しい国なんだそうである。
多分に義両親の偏見も入っているのかと思いきや、主人もそうだと言っていたので、よく知らない私はその話を信じてはいるが、本当の所は実はよく知らないので、間違っているなら申し訳ない。
とにかくでもそんなわけで、ドイツ人一家でありながら、3歳からベルギ-で育った主人は、ベルギ-内の空気をいつも感じながら育ち、フラマン地方のベルギ-ではフランス語で話さないほうがいいと、なんとなく思うところがあるのだろう。
それでオランダ語もフラマン語もできない私が今ではどうやってブル-ジュで
注文するかと言えば、もう最近では開き直ってドイツ語になっている。
主人に
「ここでは失礼だからフランス語はやめて下さい」と言われ、英語で注文したら
「なんで英語にするんですか、旅行者じゃあるまいし!」と言われ、仕方なくドイツ語にしたら
「なんでドイツ語、ここはベルギ-ですよ!!」と怒られるのだが、一応ドイツ語も
ベルギ-の公用語(フラマン語、フランス語、ドイツ語でブルュッセルの駅の
看板などは少なくともこの3ヶ国語で書かれている)であるし、そのくらいのドイツ語であればいとも簡単に理解してくれるフラマン地域のベルギー人の優秀な語学力なのである。
なんならもういっそ日本語でも通じるのではないかと思うくらい語学能力の高いフラマン地域ベルギ-人の皆さんなので、今度主人がいない時に試してみようと思う。
主人がそばにいたら
「ここは日本じゃないです、いい加減にして下さい!!!」とさすがにぶちきれそうであるが…。
ベルギ-という国をより理解してもらうのに役立ったら幸いである。
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