第44話 夢の乗馬ホテル-その1
この1ヶ月ほどとても慌しい日々を過ごしていたが、その慌しい日々の中、乗馬ホテルという休暇場所で、バカンスも楽しんでいた。
11月1日金曜日は「死者の日」というカトリックの祝日で祭日、金曜日から日曜日まで学校が休みだったので、三男と2人で3泊4日の休暇に出かけたのである。
…というのも、以前この「カクヨム」にてドイツの乗馬クラブについての質問をいただき、調べているうちになんとも夢のような休暇ホテル+乗馬というものを見つけてしまい、ここ半年ほど乗馬をはじめたがっていた三男と、昔から乗馬が夢だった私と2人の希望が合致したので一緒に行くことにしたのだ。
調べるとこのホテル、簡単なシンプルホテルで、ユースホステルのように子供だけで泊まれるたくさんのベットが置かれている部屋なんかもある。
子供達が友達同士で来たらざそ楽しいだろうとは思うものの、今回はどうしても私も行ってみたかった。
なので三男と2人だけの個室にしてもらうことにした。
ついでに長男次男も共に連れて行き、皆で楽しい乗馬体験でもしようかと誘ってみたら、
長男には「いや、行かない」
次男には「乗馬だぁ? けっ!」と言葉にすらなっていない返事をされた。
「あぁ、大きくなるともうどこでも一緒には来ないなぁ」くらいに私は思っていたのだけれど、これは後になって長男次男はそれだけではなく他のもっと明確な理由があって一緒に来ないのだと言うことがわかるのだが、その時は私はまるで気がついていなかったのだ、長男次男は私が三男を乗馬に連れていくことを快く思ってはいなかったということに。
次男はそもそもあまり三男の良いお兄ちゃんでもなんでもないので、自分が行かないで済むなら、三男が行くのはどうぞ勝手に、という感じなのだが、長男は実はとても弟思いの兄なのである。
それから数日後、
「自分が行きたいと言うのはわかるけれど、なんで三男まで一緒に乗馬へ行かなければいけないんだ」と、長男が真面目な顔で私に聞いてきた。
意味がわからず
「あら、違うわよ、三男が行きたいって言うから一緒に行くんだけれど」と言うと
「三男に乗馬みたいな女の子のスポーツをさせるだなんて…」と言うではないか。
つまり、長男次男にとっては「乗馬」=「女の子」のスポーツ、それを男子である三男にさせようとしている母である私の神経を疑う、という気持ちが、次男の
「けっ!」という返事に現れていたらしいのだが、ドイツ生まれでもドイツ育ちでもない私がどうすればそんなことがわかるというのだろう。
確かに小学校の持ち物のキャラクタ-は女の子は馬のモチ-フが多く、クラスで乗馬している子供はほとんど女の子、それは知っていた。
でも男女差をあまり意識させないような教育をしているドイツで、それほど明確に
「乗馬は女の子のスポーツ」と決まっているとはあんまり考えたこともなかったのだ。
ただ三男に聞くと、三男に友達の中には男の子でも乗馬をしている子供達がいて、三男にとってはそれほど強い、「乗馬」=「女の子」というイメ-ジはなかったようで、クラスで12歳のカテゴリーのドイツ代表選手枠に入っている障害馬術競技の選手の女の子がいたり、そういうのを身近に見てカッコ良いと思っていたのかもしれない。
そもそも三男は、長男次男はばりばりサッカーで頑張っていたのに、サッカ-はとても苦手で、どこのチームに入れてもベンチ要員となることが多く、6歳の時にはやめてしまっているくらいなので、サッカーのように
「ザ・男の子のスポーツ!」みたいなことは得意ではなく、そういうわけで周りにもサッカ-をしている友人も少ない。
一方、長男次男は長い間友達もみんなほとんどがサッカーをしている友人ばかりだったので、確かに彼らの周りで乗馬をしている男の子というのはあまりい、というより全くいなかったように思う。
だからといって、では本当にドイツでは「乗馬」=「女の子」のスポーツなのかと言えば、そういうわけでもないが、実際乗馬をしているのは8割が女子で、これが障害馬術競技になると半分以上が男子、また障害馬術競技で良い選手になると今度は逆に男子が8割と増えるのだと近所の乗馬クラブの人に教えてもらった。
そもそも乗馬はドイツでもお金がかかるスポーツであり、それとは反対にサッカーはほとんどお金はかからない。
やはりドイツでも男子よりは女子にお金がかかる習い事をさせる傾向が長年あったのかもしれない。
…と、前振りが長くなってしまったが、その乗馬ホテルのことは次回へ続く。
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