第38話 ドイツ・オランダ・ベルギー 3ヵ国国境地点
今日は「3ヵ国国境地点」といううちから50kmくらい離れた場所にある、オランダの名所?( …と言うほどでもないのだけれど)を紹介したいと思う。
ドイツで一番西の街にアーヘンという街がある。
人口約55万人の街だが、エリ-ト大学として有名なアーヘン工科大学とドイツで最初の世界遺産に選ばれたアーヘン大聖堂があるのだが、この大聖堂はカール大帝が建立したということで、大帝の街とも言われているアーヘンは、ドイツ人、フランス人共に人気のある街である。
なぜフランス人にも有名なのかと言えば、カール大帝は西暦800年頃ヨーロッパを統一した大帝で、その時のフランク王国という名前からフランスという名前ができたくらいなので、フランス人にとってもカール大帝は自分達のルーツと言っても過言ではないのである。
その証拠にアーヘンはフランス語では、エクス・ラ・シャペルという素敵な響きの名前も特別にあり、これがオランダ語だとア-ケンになるのだが、今日はこのアーヘンから5kmくらい先の「3ヵ国国境地点」の紹介だ。
ここにはオランダのファ-ルスから「4ヵ国国境通り」という道を通って、小高い山を登って行き、上に着くとまずオランダの塔があり、もう少し行くと今度はベルギーの塔があり、このどちらを登っても3ヵ国を見渡すことができる。
この「3ヵ国国境地点」はどこに国境を接しているかと言えば、ドイツ・オランダ・ベルギーなのだが、塔の横には3ヵ国の旗が立てられた、三角形のとがったオブジェがあって、三方向に「D」「B」「NL」という文字が書かれていて、観光客はここで写真を必ず撮っている。
ここに立つとまさに3ヵ国を跨げるという、それこそインスタ映えした写真を撮ることができるのだ。
それでこの「3ヵ国国境地点」の本当の楽しみは、オランダ側、あるいはベルギー側にある塔に登って三方向を見渡すと3ヵ国の違いを一度に目で見て楽しめるということができるところにある。
共に50mほどまでエレベーターで昇ることができ、上から3ヵ国を見渡せば、この3つの国の違いを明確に見ることができる。
草原と森と牛や羊がのんびりしている牧畜の国ベルギー、工場から煙がモクモクと上がっていてさすが工業国だとわかるドイツ、そして無駄なものは一切無さそうな、なんとなく整然とした街並みが続くオランダ ―とこんな感じの3ヵ国を一度に見渡せる。
またオランダはオランダ語ではネ-デルラントということからもわかるように、「低地地方」という意味が国名になった国で、ライン川下流の低湿地帯に位置し、国土の1/4は海面下に位置する低地の国であるのだが、ここはオランダで標高の高いファーザーベルク山(322.50 m)であり、長年オランダで一番標高が高い山でもあった。
ただ2010年からは、カリブ海のオランダ領にあり、そこのサバ島にある活火山マウントシーナリーは海抜877 mで、現在ではオランダで最も高い地点のなってしまったのだが、とは言うもののカリブ海まではどの道少々遠いし、また長年に渡って
「国内で標高が一番高い場所」という記念碑もあって、まだその記念碑も撤去されていないため、観光客はそこでも記念写真を撮っているのが通常だ。
とにかくそういうわけでオランダ国内では充分高く、そして3ヵ国を見渡せる塔はワクワクした気分にしてくれる特別な場所なのである。
最近はこのオランダ側からベルギー側に抜ける間の森の道に絶景の景色を楽しめるレストランもできたのだが、そこではなんと「3ヵ国国境ランチ」というランチセットができた。
オランダの柔らかいパンと美味しいチーズ、ベルギーの丸いパンとハム、ドイツの黒いパンとレバーのパテと簡単なセットだけれど、友人をここに連れていくとせっかくだからということで、だいたい皆このセットを注文している。
こんなアイデアは「さすが商魂逞しいオランダ!」と感心した。
物を売ることにあまり熱心ではないドイツなら多分こんなアイデアは出なかったことだろう。
そしてもうひとつここの特徴は、ここにはドイツ人、オランダ人、ベルギー人、フランス人もよく来るせいか、この2つの塔と中間の森の中のレストランの3箇所の店員さんは、オランダ人でもベルギー人でも、取り合えずドイツ語・オランダ語・フランス語を話し、観光客用に英語まで話してくれる。
ここは3ヶ国に接しているという以上に、森に囲まれているせいかなんとなくおとぎ話の世界という雰囲気も醸し出している不思議な空間である。
また「4ヵ国国境通り」という道を通って行く、と書いたように、一昔前はなんとここにもう1つ独立した小さな国があったのだということで、ドイツにもオランダにもベルギーにも属していなかった、日本ではほとんど知られていないこの小さな国については次回また書きたいと思う。
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