第33話 ドイツ人が大好きなバーベキューパーティー

初夏から夏の時期、ドイツ人は実に頻繁にバーベキューパーティーをしている。

友達や仲間を呼んで、あるいは家族とだけでも、ドイツの夏の生活にバーベキューは欠かせない風物詩だ。


だいたいドイツ人が料理をしないのは、極端な綺麗好きのせいなのではないかと思われる。食事を作れば当然キッチンは汚れてしまう。一生懸命掃除をしても、これが油っぽいものだとどんなに頑張って掃除しても油汚れをきれいにふき取るのは大変なのである。


油っぽい料理を作るのは嫌だが、それでもフライドポテトはドイツ人は大好きだ。

ドイツ人のみならず、ヨーロッパ、アメリカなど欧米人みんなが大好きなフライドポテトだが、フライドポテトを作るFriteuse(フリトゥ-ズという名前、日本にもあるのだろうか?)という家庭用の小型の便利な機械があるので、冷凍のフライドポテトを買ってきて、その機械に投げ込むと数分後にはおいしい出来立てのフライドポテトを自宅で食べることができる。


でもドイツ人の場合は誰一人、この機械をまず家の中で使ったりはしないだろう。


油っぽくなることだけではなく、料理したものの匂いが家にこもる事もドイツ人には我慢できないようで、家庭内にドイツ人の伴侶などがいた場合は、そんな理由から魚を焼いたりするのもあまり良い顔をされないので、伴侶がいない間にさっさと魚を焼いて自分で食べてしまった方が得策である。


魚を焼く匂いが充満した家に帰宅して気分が悪くなった伴侶に文句を言われずに済むし、ドイツ人はそれほど魚が大大大好きと言うわけでもないので、美味しいものは自分でさっさと胃の中に入れてしまうのはお互いのためでもある。


…と、少し話がかわってしまったので元に戻すと、このフライドポテトの揚げる機械・Friteuseも通常は庭か、あるいはベランダで使うことが多いと思う。

バーベキューパーティーでもこのフライドポテトも大活躍である。


家に食べ物の匂いがつくことも回避でき、その上キッチンも汚さずに済むので、ドイツ人にとってバーベキューほど最高の料理方法はないことだろう。


これほど好きなバーベキューなので、その代わりバーベキューパーティー用のグリルは結構本格的な大きいものを買う家庭も多い。

1台当たり500ユ-ロや1000ユ-ロもする、ドイツの車と同じようにがっちりどっしりしたバーベキュー用のグリルはドイツの人気電化製品である。


お肉やソーセージを買ってきて、野菜を切って焼き、サラダを作り、デザートはバニラプディングと言って柔らかいプリン味のようなカスタ-ドにこれまた旬の苺を入れれば、お腹も満足、見た目も楽しい即席簡単パーティーがいつでもできる。

主婦にとっても楽ちん簡単リ-ズナブルな、これまた有難い夏のバーベキューパーティーなのである。


それで我が家も先週末は今回は台湾からのお客様をお呼びすることにした。

ある台湾の大学の学部長さんで奥さんとお嬢さんと息子さんの4人だ。


この一家、お父さんだけではなくお子さん達も非常に優秀で、お嬢さんは現在スイスの大学で研究中、弟さんも台湾の大学を終え、修士課程からはアメリカへ行きたいと考えている、ばりばり理系の超エリ-ト一家だ。


台湾人は親日家の方も多く、また国際的なご一家で様々な話題で盛り上がることができ楽しい一日だったのだが、この日はつくづくこの学部長さんに感心してしまった。


この学部長さんは私は1回しか会ったことがなかったのだが、いつも優しい笑い顔が印象的な素敵な方なのは知っていた。

パ-ティーが始まって、そんな彼がまずしたことは、なんということか、うちの息子達3人のために自分からわざわざ席を立ち、乾杯しに行ったことだった。

ニコニコ笑いながら、ごくごく普通の感じで子供達一人ひとりに言葉をかけていたのだが、その姿は普通の優しいおじさんそのもので、彼が大学では学部長という偉い地位の方とは忘れてしまうほど、その姿は本当に自然体そのものだった。

あまりに彼が感じ良いい方だったため、長男はもちろん、いつもは大人に対してあまり感じ良くできない次男、大人とはちょっと遠いところにいる三男まで、いっきに打ち解けてしまった。


私は今までよそのお宅に呼ばれてそんな風にその家のお子さん一人ずつにわざわざコップを持って自分から挨拶へ行ったこともなければ、よそのパ-ティ-でそんな大人と言うのも正直見たことがない。

なんて心の優しい人なんだろうと感激してしまった。


その上お子さん達もあまりに優秀で優しく素晴らしいので

「あなた達のようなお子さんがいるあなた達の両親は本当にラッキ-ね。

あ、でもこんな素敵なご両親のいるあなた達も本当にラッキ-ね」とお嬢さんと息子さんに言うと、

「はい、私達は両親の子供で本当に幸せでした」との、ここでもなんと素晴らしい返事!


実はこの学部長さん、牛肉は食べないということで、最初

「えっ、まさかなにかの新興宗教なんでは?」と思っていたら、お嬢さんが生まれた時命が危なくて、その際神様に

「もう一生肉は食べません、だから娘を助けて下さい」と神様に祈って、それを守っているからと聞き、こんな素晴らしいお父さんだったら、子供達も親を誇りに思うのは当然だろうと、ここで全てが納得で、奥様もこれまたご主人顔負けの優しげな素敵な方で、本当にめったにないパーフェクトご一家で本当に感動した。


こんな絵に描いたような素敵な一家って本当にいるんだなぁ…素晴らしいことである。


少しドイツのバーベキューパーティーの主題から外れてしまったが、こんな風に楽しかった我が家の今年の初回バーベキューパーティーの一夜であった。



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