第24話 イースターがX'masより大切な祝日なのは何故?

ところでせっかくなので、もう少しイースターについて説明させていただきたい。


前回

「キリスト教徒においては1年でクリスマスと同じくらい、あるいはそれ以上に最も大切な祝日なのである。」

と書いたのだが、日本ではイースターは復活祭のことということはわかっても、どちらかと言えばクリスマスの方が大切な日だと捉えられているのではないだろうか。


聖金曜日から始まるこの祝日だが、金曜日にキリストは十字架にかけられ亡くなられたということになっている。

聖書ではその3日目の朝(3日目なら月曜日ではと言いたくなるが、この日は絶対に日曜日でなくてはならず、3日目ではなく3回目の日と考えればいいようだ)、マグダラのマリヤと数人の女性がキリストの墓を見に行くと、お墓は空になっていて、天使がキリストの復活を伝え、マリア達はそれを12使徒に伝え、ペトロ、ヨハネはじめ、弟子たちとそして2500人もの群集が復活されたキリストの姿を確認したという。キリストはそれから再び連日神の教えを説き、40日後についに神の国天国へ昇天されるというのが一連のキリスト復活節の物語である。


死者が生き返るというような奇跡をおこしたイエズスは神の子以外の何者でもない、これこそがキリストは神の子である決定的な証拠であり、また神の御前において、

「永遠の命」を説いてきたキリストの話は本当だったのだと使徒たちや群集が心から信じた記念の日くらいに私自身はこの祝日の意味をとらえていたのだが、それは正しいけれど、でもまだこれではこの話の本当の意味にたどり着くには不十分である状態だ。


だいたい本当に復活したのかどうか本当にはわからない、伝説じみた話がどうしてそんなに大事な祝日になるのか不思議なものだ、と思ったりしないだろうか?

そもそもキリストは本当に復活したのか、磔刑とは通常死ぬまでに3日くらいかかるものではないのか、ならば実際にはキリストはそもそもなくなる前に気絶した状態で葬られただけで、単に3日目に目が覚めたということを復活と言っているのが真相ではないかとか諸説もあるそうだが、この復活記念日において大切なことは、実はこの復活が本当だったのかどうかということですらない。


実はこの話はもう少し踏み込んで考えてみると、この話の焦点は本当は違う点にあるということが理解できるのである。


キリストが官憲に囚われた際、12使徒全員がその場から逃げたのはご存知だろうか。最長老で使徒のリ-ダ-的存在であり、後にロ-マカトリック教会初代のローマ教皇と認定されるペトロでさえも、官憲に捕まりイエスの弟子であるか尋ねられた際、

「私は彼のことは知らない」と3回も嘘をついたことは有名だ。

ところが、そのおびえて逃げた12使徒全員がこの復活祭を経た後に、劇的に真のキリスト教徒と変わり、12人のうち実に9人が、ローマ、トルコ、ペルシャやインドで逆さ十字架刑、X字型十字架刑、斬首刑、生きながら皮をはがされるというようなむごい刑で殉教する道を選ぶことになる。


この当初臆病者だった12使徒が、こんなにも勇敢に布教を始めたのは何故なのか。


キリストの復活が本当にあったのかどうか今となっては誰にもわからないのだが、この使徒達の激変ぶりをみると、キリスト復活、あるいはそれに匹敵するくらい衝撃的な出来事があったということには違いないのでは、と推測される。

そういう意味でも、この出来事は「復活」と考えるのが一番おさまりが良く、これ以外の選択肢はないように思える。


つまり磔で処刑されたキリストを見捨てて逃げた使徒達はこの一連の出来事で真のキリスト教徒となる道を自ら選び、布教活動を始める。自らいばらの道へ進むことを決心するのだ。

それはつまりこの復活が契機となったということで、イースターとはキリストが復活したということを単純に祝う日というよりも、キリスト教の真の始まりの日と理解すべき日ということになる。


それが証拠に英語やドイツ語では「復活祭」は「東」という語源から変化した

「イースタ- Easter」や「オースタ- Ostern」と名づけられているではないか。

東と言うのは日が昇る場所、光が来る場所、神様が君臨される場所とヨ-ロッパでは考えられてきた。


この日を境に、キリスト教が生まれ、世の光である神の教え、すなわち光が来たという意味が「イースタ-」なのであり、キリスト誕生のお祝いも始めにキリスト教ありき、なので、そう考えると一年で一番くらいに大切な祝日だという意味はご理解いただけたと思う。


今回、日本の皆さんには馴染みの浅いイースターについて長々と書かせてもらい、あまり興味は持たれなかったかもしれないが、自分なりにまとめてみたかった。


最後まで読んで下さった方がいれば心から感謝したい。





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