第22話 他宗教に不寛容なイスラム教徒
こんなことを言うのはどうかと思うのだが、私のイスラム教徒の友達はものすごく頭が固い。
彼女はインドネシア人で、ご主人はドイツ人なのだけれど、彼女と結婚するためにご主人はもちろん改宗している。
なぜならイスラム教では女性は他宗教の男性とは結婚できないのからだ。
一方これが男性の場合はどんな宗教の女性と結婚してもいいということで、本当に男性本位の宗教とこんな所でも感じてしまうが、子供達も当然イスラム教徒でなければならず、彼女の場合はその上、
「゛敬虔な゛イスラム教徒でなければならない」ということで、それを基に全ての生活をしている。
もちろん一般的に広く知られているように、豚肉は一切禁止である。
私も豚肉は食べても食べなくても一向に問題ないのだけれど、彼女の場合は他の人と
バ-ベキュ-パ-ティ-なんかをする場合に問題が発生する。
一度でも豚肉を焼いた鉄板や網では、彼女はその鉄板や網を使って自分の神聖なお肉を焼くことはできなくなる。
神聖なお肉とはもちろん、ハラルのお肉屋さんで買った特別に処理された豚肉以外のお肉である。
豚肉を使ったハムやソ-セ-ジももちろん駄目なので、ハムサンドも食べてはいけない。
ハムサンドは食べられないというのはわかるが、子供達が小さい頃、ママ友仲間でみんなでピクニックへ行った時に私はハムサンドと卵サンドを持って行ったのだが、その2種類のサンドイッチを同じケ-スに入れて行ってしまった。
ハムサンドと同じ容器に入っていた卵サンドは、彼女達はもちろん食べることはできないなんてことは、その時まで全く思ってもみなかったからだ。
その他、ゼリーのデザート、グミなんかも絶対いけない。
なぜならゼラチンは豚から作っているそうで、親戚から子供達が貰うグミのお菓子はそのまま開けもせず(多分触るのもいやなのか)、彼女は我が家に持って来てくれていたっけ。
ソ-セ-ジとハム、そしてバ-ベキュ-パ-ティ-とお菓子にはグミが大好きなこのドイツという国で、彼女はともかく子供達は大変なんじゃないかと思うが、そこの長男と幼馴染であり、今でも大親友のうちの次男曰く、仲間達でバ-ベキュ-パ-ティ-をする際は、みんなはそのT君に合わせて、T君の肉から焼くようにすれば良いだけのことだから、特に問題はないとのこと。
そんな風にいつも考えなければならないのが面倒ではないのかしら、と聞けば、
「だって別にそんなの簡単だろ」と言われ、次男やその友人達は実は私より心が広く寛容であると感心してしまうことがある。
当時みんなで遊んでいたママ友の中にはポ-ランド人の友人もいたのだが、このAさんがよく言っていたが
「私達はイスラム教徒の決まりにいつも合わせなくちゃいけないのに、あの人たちは私達に合わせようとはしないわよね」という文句だったのだが、ポ-ランド人はカトリック信者が多いということを割り引いても、当時よく彼女達両方と多くの時間を過ごしていた私には、そのAさんの言いたいことも理解できた。
イスラム教徒の大事なことは、どうやらコ-ランに書いてあることを実践するということらしいのが、そこにはイスラムを信じない者は天国へは行けない、と書いてあるそうで、私と彼女の共通の友人が闘病中に、その死期が間近に迫った友人をイスラム教徒に改宗させなければ、天国へ行くことはできないのでとてもかわいそうだ、と彼女が言い出した時には本当にびっくりした。
マザ-テレサも天国へ行けるかどうかはわからない、なぜなら彼女のしたことがコ-ランにそうしろと書いてあるわけではないから、と言われた時にはさすがの私も少々喧嘩越しに言い返してしまったのだが、最近は宗教の話はなるべく避けるようにしている。
私は彼女と20年来のつきあいで、私は彼女は好きだから、彼女を失うのはつらいので、宗教問題は触れないに越したことがない。
もし彼女にイスラム教を否定するようなことを言えば、それは彼女の全てを否定することになってしまう。といって私にはイスラム教のその何もかも
「イスラムが絶対」という考え方は、一度生まれ変わって最初からイスラム教徒に生まれでもしなければ、現世では到底受け入れることができないだろう。
それでもイスラム教徒の天国には、イスラム教徒しかいないということなので、そもそも世界のたくさんの人がそういう天国へ行きたいと思っているのかどうか、イスラム教徒の方達は一歩引いて考えてみたらどうだろうとよく思う。
生まれ変わってもイスラム教徒の家には生まれたくないともやはすでに願っている状態の私は、宗教の自由な国日本に生まれ、そして今ドイツに住んでいることは本当に幸せである。
信仰の自由と言うものは本当にありがたいことなのだと、海外に住んでつくづく知った。
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