第21話 イスラム教に寛容なドイツ人
欧米で吹き荒れていた難民・移民問題だが、常々とても感心と思っていたのがドイツの寛容さだ。
ドイツがたくさんの移民・難民を受け入れてきたのはご存知だろう。
2015年の記録では89万人の難民を受け入れた記録が残っている。
2016年に28万人の庇護の申請者、2017年では9万人の庇護を申請者を経て、
2018年6月中旬までに、ドイツはすでに他のEU諸国に登録されている約2万人の庇護希望者を受け入れている。
世界の中では難民受け入れでは第6位のドイツだが、EU国の中で絶対数では、ドイツはフランスとスウェーデンを上回ってトップに立っている。
そして人口に関連して考えると、2018年の統計ではドイツではそもそも総人口が8100万人なので、ドイツには1万人の住民あたり117人の難民がいるという計算になるらしい。
ただ2015年当初は難民受け入れに大賛成だった人が実際多かったのだが、しかしながら2019年の現在、難民受け入れに協力したい人の比率はドイツ全国で
間違いなく、賛成 2.7%
どちらかと言えば賛成 13.8%
わからない 6.9%
どっちらかと言えば反対 43.9%
絶対反対。 32.7%
と、このように様変わりしてしまい、現在では反対者の方が多くなっているのが実情だということだ。
でも私は2015年当時、最初の頃はなぜそんなに難民を受け入れることができるのか不思議に思い、会うドイツ人に聞きまくっていた時代があったのだが、その当時のドイツ人は
「困っている可哀想な人達を助けるのは当然のこと」と普通に答えていた人が多く、そんな考え方自体私には非常に新鮮で、なんて素晴らしい立派な国民性なんだろう、と心底感心していた。
今でもうちの村のドイツ人達は非常に難民受け入れに協力的な人達が多い。
少なくとも声高く反対している人と言うのはニュ-スでは見ても、実際のドイツ人では私は見たことがないのだが、ただしうちの村のある、ここNRW州(ノルトライン・ウェストファーレン州)はドイツ内でもカトリックの町が多く、また人間性も非常にオープンであるといわれているのだ。
そもそもうちの町がある、ドイツ北西部に位置するNRW州の大都市にはもともとトルコ人が多い。
移民の多くはそのほとんどは1960年代以降「外国人労働者」としてドイツに移り住んだ人々で、そんなわけでドイツで4番目に大きいケルンはじめ、ドルトムント、レバークーゼン、エッセンなどNRW州の大きな街はその1960年代に移住してきたトルコ人の2世3世がそのまま居住しているトルコ街と化している。
私がドイツにおいては村暮らしが良い、と感じるのは実は1つにはそういった理由も大きい。
このNRW州の大都市になればなるほどドイツ人の比率より、道行く人はイスラム系の外国人の方が多いほどで、
「ここはイスタンブールですか?」と言いたくなる様な場所も実際に多いのである。
このドイツ人の外国人を受け入れ、生活の面倒までみようということはもちろん素晴らしいのだが、この他宗教への寛容さに対してが実は私が一番感心しているところである。
自由と人権の国ドイツでは他国の宗教を迫害することには非常に大きな抵抗がある。
それはなぜかと言えば、第二次世界大戦にてユダヤ人を迫害して収容所に送り、大虐殺をした記録を学校の授業では徹底して教え聞かせ、家で見るTVの番組でも年中忘れないように放送していて、戦後70年が経ってもドイツ人の記憶から忌まわしい歴史が決して消えたりしないよう国家をあげて取り組んでいるという教育の努力が実った結果なのだが。
人々が罪深い過去を忘却しないよう日々気をつけて暮らしているドイツでは、イスラム教徒を追いやることは、ユダヤ人を虐殺した過去が直結して思い出され、それは大罪であったと心底反省している彼らにとって、表立って声を大にしては到底言えない恥ずべきことなのである。
そんなわけで昨年2018年9月にはついに、ケルンの近郊に欧州内で一番大きいイスラム教徒の聖なる礼拝堂モスクが建設された。
もちろんこの建設には賛成派反対派とたくさんの衝突もあったようだが、開会式にはトルコからエルドアン大統領もわざわざやって来て、大々的にドイツ在住のトルコ人を筆頭にイスラム教徒は祝賀の雰囲気に包まれていたようだ。
「難民受け入れ反対!」とは言えても、
「イスラム教徒受け入れ反対!」とは言えないドイツでは、トルコ人はじめイスラム教徒達にとって欧州内でも非常に生活し易い国であることは間違いない。
100年後くらいには、キリスト教徒よりもイスラム教徒の方が多くなりそうな勢いのドイツの現状だなぁ、と思う最近である。
そう考えるとますますドイツで大都市には住みたくないと思うのであった。
イスラム教徒があまり好きではない、ドイツ人とは違って心の狭い私なのである。
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