第19話 シャルケ04の練習を見に行く

ドルトムントではサッカー場内の見学もさせてもらったと前回書いたのだけれど、うちの長男のように招待されていなくても、お金を払えばそのようなサッカー場内見学ツアーというのがどこのブンデスリーガのサッカークラブでもあるようだ。


私も長男と一緒の時だけではなく、別の機会に2回ほどドルトムントのサッカー場内見学というものに参加したことがある。

香川選手の更衣室はもちろん、それぞれの選手の更衣室で使っているベンチも座り放題なら、ドルトムントの選手達が実際に使っているシャワ-ル-ムまで自由に入ることができ、写真も好きなだけ撮る事ができるし、なんだかなんでも見て下さい状態の見学ツアーであまりのオープンさに驚いたほどだ。


でも中でも素晴らしいのは、選手達が毎回試合直前にトンネルみたいな中を通って、8万人以上のお客さんが待つアリ-ナのピッチに入場するのだが、見学者もそのトンネルの中を歩いてピッチへ出て行く経験を体験させてもらえることだろう。

しかもトンネル内では、臨場感溢れるファンたちの声援と大音響の音楽が鳴り響いていて、なんだか自分がサッカー選手にでもなり、ドルトムントの選手になって試合をするんだというような特別な気分になり、超鳥肌ものの体験を味わえる。


しかもこのツアー全部で1時間半くらいで、1人2000円もしないので、本当にリーズナブルなのである。


でもリーズナブルと言えば、シャルケ04はリ-ズナブルとはまた違うのだけれど、すごいサービスがある。

なんということかシャルケの練習は誰でも見に行くことができるのだ。


日曜日にシャルケの練習場に行くと、私達ファンの真横を選手達が練習場に向かって歩いて行き、20mくらい離れた距離での練習を見る事ができる。


これもまた今から6年くらい前、内田選手全盛期の頃、日本人の友人が内田選手のファンで、うちの長男もともとシャルケのファンということもあり、日曜日にシャルケの練習場へ見学へ行ったことがある。

うちからシャルケまではやはり高速で1時間半くらいで着くので、行けない距離ではない。でも日曜日にそこまで行こうという気分にはなかなかならないもので、日本人の友人が日本へ帰国する前にどうしても一度内田選手を見てみたい、ということでその日はわざわざ行くことにしたのだ。


練習場だというのに、ドイツにしては商魂逞しく、待ち時間に小腹が空いたファンのためにソ-セ-ジや飲み物が売っている屋台があったり、あるいはファンが買いたがるような選手のプロマイド写真なんかも売っていた。


それでシャルケの有名な選手が続々と出てきて、内田選手が出てくるのを今か今かと楽しみに待っている私と友人だったが、いつまで待っても内田選手はあらわれない。

どういうことか、と周りを見渡すと日本人の女性の方達が何人かいたので、

「今日はウッチーはどうしたんでしょうかね?」と声をかけてみると

「内田選手は昨日試合で活躍したので今日はお休みして良い日なんですよ」との返事をもらい、ずい分と内田選手に詳しいようなので、シャルケの近郊に住んでいるのに違いないと思い、

「どこにお住まいなんですか?」と聞くと、なんと日本から、と言うではないか。


150km離れた私以上に遠い場所から来ているとは到底思えないほど詳しく色々知っていて、よく聞けば数ヶ月に一度はここドイツのシャルケまで内田選手を応援に来ているのだとか。

なかなかの美人で話す様子もいやに落ち着いていて、内田選手の関係者(恋人とか)なんでは、と思うほどだったが、多分本当にただのサポーターの1人だったのだろう。

当時は内田選手の日本女性からの人気はすさまじかったようなので、日本から通うおっかけファンがいたとしても、ああ、なるほど、納得という感じだった。

実際そのくらい、内田選手はカッコ良かったのである。


でも、その数年後に内田選手が結婚されて、その時の彼女はさぞや悲しかったことだろうな、とその時は一度だけ会ったその女性をなんだか思い出してしまった。


日本へ帰国する友人も本当にがっかりで、次回もしまた私達が練習へ行ったら是非自分のためにサインをもらって下さいね、と色紙とペンまで渡されたのだが、私達も結局行かないまま、あれよあれよという間に内田選手も帰国してしまった。


一方内田選手に会えなかったものの、子供達は他の色々な選手のサインをもらうことができて、最後はクラブハウスで食事までして楽しかったようだ。


それにしても当時、内田選手のシャルケ04での活躍ぶりも本当にすごかった。

ドルトムントの香川選手、シャルケの内田選手、シュトットガルトの岡崎選手と、まだまだ他にも5人くらいはいた本当にどこを見ても楽しいブンデスリーガの試合だったのである。


ブンデスがまたあんなにたくさんの素晴らしい日本の選手でいっぱいになって欲しいと、ドイツに住んでいる日本人は誰もが今でも夢見ていることだろう。







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