第12話 薔薇の月曜日-Rosenmontag
昨日長男に「カーニバル中は誰も映画を見に行かない」と言われ、戦々恐々の中映画館へ行ったら、意外にも20人は観客がいて、怖い思いをせずに済んだ。
見てきた「エスケ-プ・ル-ム 2019」もなかなか手に汗にぎる映画で面白かった。
ところで「アラ-フ!-Alaaf!」の掛け声と共に今年も無事、薔薇の月曜日が終わった。
通常カーニバルで有名な街はこの薔薇の月曜日にパレ-ドが執り行われる。
金襴緞子と言ってもいいような色とりどりの帽子に羽をつけたり、貴族風な白いかつらを被ったり、豪華な衣装に身をつつんだカ-ニバル実行委員会を中心としたのパレ-ドからはカラフルなお菓子、おもちゃ、花束、サッカ-ボ-ルなど色々なものが宙に舞い、観客に配られる。
お菓子を投げるだけではなく、きれいなお嬢さんたちのアクロバットのようなダンス軍団がいたり、鼓笛隊、そしてもうひとつの目玉は山車である。
この山車は例年その年のテ-マにそったもので、メルケルさんは首相になってから必ず山車のお人形になって出てくるし、この数年はインパクトの強いトランプ大統領の登場が多い。
この数年でとても印象に残っているのは、メルケルさんが素っ裸でたくさんの赤ちゃん(ギリシャの経済問題のあった時なので、赤ちゃんはギリシャの意味)におっぱいをあげていたり、難民と共に波に飲み込まれて溺れそうになっていたりしたものだ。
例え素っ裸でも、ドイツ人(特にケルン近郊の)はメルケルさんには愛情を持って作成しているように思われる。
一方、北朝鮮の金委員長やトルコのエルドアン大統領、あるいはシリアのアサド大統領を出すときはもう少し辛らつである。
数年前には、金委員長、アサド大統領、プーチン大統領の三人が、「三人の博士」になって出てきて、おちょくっているのもあったっけ。
先頭の天使の服のアサド氏の上には「ノーベル平和賞」という文字がかかげられていた。というのもその前年10月にアサド氏が「自分が受賞すべきだった」との冗談めいた発言をしたことをうけてのことだったのだが、芸が細い!
他にもロシアのプーチン大統領が上半身裸で両腕をあげ、筋肉モリモリの左手には「軍備」、折れそうな細い右手には「経済」、これも好きだった。
でもなんといっても面白いのはトランプ大統領の山車である。
数年前だが、「お尻に耳がついた」だけの目も鼻も口もないお尻の形の顔のトランプが「アメリカ大統領」という名前と共に登場したのだが、ドイツ語の「尻の穴(ごめんなさい、下品で!)」はイコール「間抜け野朗」だから能無しの馬鹿たれ、という意味だろうか。
今日のケルンの山車でもトランプを見つけた。
カッコつけた後ろ姿のトランプなのだがズボンからお尻が少し出ていて、その出ているお尻に
「I love me」と書いてあったっけ。
彼ほど「I love you」という言葉が全く似合わない人もいないだろうから、こんなジョ-クを考えることができるドイツ人のセンスには毎回笑わせてもらっている。
政治的な風刺で政治家をおちょくることにはなんのためらいもないドイツ人が私は好きだ。
それからなんといってもすごいのはこのパレ-ドから投げられる観客へのプレゼントは全て自費であるということだ。
ケチなイメージのドイツ人でも、お祭りでは太っ腹なのである。
今年は強風の影響で、オ-バ-ハウゼンやボトロッフの地域などの今日のパレ-ドは中止だったそうだが、ケルンやデュッセルドルフなどはせめて中止にならずに幸いだった。
カ-ニバル実行委員会の血と汗と涙の努力を考えると、中止というのはあまりにも気の毒である。
うちの長男も村のパレ-ドで山車の上からお菓子を投げいて楽しそうだった。
パレ-ドを見に行ってお菓子やサッカ-ボ-ルをもらって喜ぶのは、うちでは今では三男だけになった。
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