第8話 女どものカーニバル-Weiberfastnacht

今日は少し硬い話を。

…と、いうのも今回はカーニバルについて少し説明させてもらおうと思っている。

堅苦しい話と思われるようであれば、どうか飛ばして読んでいただきたい。


カ-ニバルとは、木曜日の"Weiberfastnacht"から次の"Fastnacht"懺悔の火曜日を経て、"Aschermittwoch"と呼ばれる灰の水曜日までの6日間のお祭りで、通常この6日目の"灰の水曜日"と呼ばれる水曜日から、復活祭前日までの46日間の断食節に入る。


ヨーロッパで1年で最も大切なお祭りは、もちろんキリストが誕生したクリスマスと、キリストが処刑され復活したというイースターだが、クリスマスは毎年同じ日でも、復活祭であるイースターは必ず春分の日のあとの最初の満月の日曜日にしなければいけないというややこしい決まりがあり、なのでこの復活祭前46日間の断食期間から計算してカ-ニバルの時期が決まるため、毎年日付が変わるのだ。


ただ11月11日11時11分が正式なカーニバルの開催日ということだけは毎年同じで、でも本番6日間の最初の木曜日は年によっては寒い1月の後半だったり、あるいは今年のようにもう3月だったりするようなこともあり毎年暦を確認しなければならない。


それで今日はその"Weiberfastnacht"(ヴァイバーファストナハト)という日だった。


「女どもの」と品のない言葉で訳したのは、Weiberというが「女性」を表すあまり品の良い言葉ではないからで、"Fastnacht" というのは「謝肉祭」という意味である。


「女どものカーニバル」というのはなんだ、と思うだろうが、古くは女性が被っていたナイトキャップのような形のボネットという帽子をお互いに取り合う遊びから始まったとのことで、そのうちケルンの市庁舎に女性達が乗り込み、市長さんから鍵を奪うというような行事にかわっていった。


伝統的に、女性は自分自身を年老いた醜い女性に変装したのだそうで、黒い服でまるで魔女みたいだったろうけれど、でも実はカ-ニバルは魔女とは関係のないお祭りである。


それで今ではこの日は女性の無礼講が許される日、ということで男性のネクタイを切ってしまう日になった。

会社なんかでもこの日は男性は切られて良いように古いネクタイをしてくるわけで、私も一度実際に切らせてもらったことがある。

でも切った後、ほっぺたかなにかにキスをしなければいけない、ということを知らなかったので、切ったままサクっと終わらせてしまい悪いことをしたと思っているのだが、もし知らない日本人の旅行者がもし町で突然大きなハサミを持った魔女みたいな老婆にネクタイを切られたら腰を抜かすくらいびっくりすることだろう。


実際デュッセルドルフには日系企業が多く、この木曜日に街を歩いていて突然ネクタイを切られて非常に怖かったというような笑い話を聞いたことがある。


またこの日は正式には役所も学校もお昼までであり、お店なんかもやはりお昼に終わってしまうこともあり、今日は14時くらいにスーパーに買い物へ行ったら、半分くらいのお店はもう閉まっていた。

何かというとすぐ仕事を終わりにしたがるドイツ人なのである。


もともとこの「女どものカ-ニバル」は毎日朝から晩まで忙しい女性のために作られた日で、この日は女性陣も家事を投げ出して、女性達で歌ったり踊ったりのダンスを楽しむのを許された1年に唯一の1日だったということだ。


でも現代では女性だけではなくて男子陣も大いに楽しんでいる「女どものカーニバル」の木曜日なんで、この日はみんなで家事をまる投げして遊ぶ日、と変化してきているらしい。


またこれはドイツ全土の行事ではなく、カトリック教徒の多いケルン近郊のライン川周辺やミュンヘン近郊でのみ見られるお祭りだということもお忘れなく。


またネクタイを切られるのがいやでこの木曜日にはネクタイをして来ない男性も増えてしまい、ネクタイを切る習慣もだんだんすたれてきているのが現状のようである。

…というかドイツではそもそも仕事にネクタイを締めてくるという習慣自体も少ない気がするのだが…。

なのでデュッセルドルフの日系企業の皆さんはますます狙われることだろうから気をつけてほしい。


伝統というのはだんだん変化することもあり、ちょっぴり残念なことだなぁ、とドイツ人でもない私が思ったりした、今回はカーニバルの紹介となった。


長くなってごめんなさい。



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