第24話 夕食までに
夕食の前にお風呂に入りたかった。
小さな恋結びの宿にはお風呂が一つしかなかった。
僕はまず風呂には入りたかったが先に優香さんに入ってもらおうと思ったので、僕は一階に降りて優香さんに伝えてもらおうと宿のおばあちゃんを探した。
おばあちゃんの他にも旅館には働く人がいた。聞くとお客が来た時だけ手伝いに来るというおばあちゃんの娘夫婦だった。
「通りにあるとはいえ、ひっそりとした小さな旅館でしょ? あまりお客さんもたくさんは来ないのよ」
おばあちゃんは数年前に亡くなった旦那さんと旅館を切り盛りしていたそうだ。
「食事はすいません。部屋食ではなくて食堂になります」
「はい。分かりました」
僕は嬉しくなった。だって食堂で食べるなら優香さんと会えるんじゃないかな。一緒にご飯が食べられるじゃないか。話もできる。
優香さんとおしゃべりしながらご飯を食べると想像しただけで僕の気持ちはソワソワとしてパアッと明るい気分になった。
僕はおばあちゃんの娘さんにもうひとりのお客さんに先にお風呂を譲りますと伝えた。
古びていたが丁寧に掃除された清潔で風情のある恋結びの宿に僕は居心地の良さを感じていた。
ふたたび部屋に戻ると僕はゴロリと畳に転がった。気持ちいい。
畳の匂いが微かにして僕はいつの間にかまどろんでいた。
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