第25話 まどろんで夢を見る。

 久しぶりだった。

 こんなにすぐに寝てしまうのは。


 僕は眠りに落ちて夢を見た。

 琴美とまだ生まれてもいない僕の子供が三歳ぐらいの男の子になって笑っている夢を見た。

 二人のそばには慶太がいた。

 三人は仲良く遊びながら笑っていた。



 トントン…。

 小さな音だったがドアをノックする音で僕は目覚めていた。


「はい」

 僕は立ち上がりドアを開けると宿の浴衣を着て髪の濡れた優香さんがいた。

 長い髪をアップにしてヘアクリップで留めた姿に釘付けになる。

 うなじが色っぽいってこういうことか。

 優香さんの風呂上がり姿にドキリとした。

「お風呂ありがとう。先に入ったよ」

「ああ。いえ」

 僕はドギマギとした。

 こんな気持ちを見透かされてしまいそうで恥ずかしかった。

 優香さんはじいっと僕を見ていた。

「僕も風呂に入って来ようっと」

 慌てふためいた僕に優香さんはフフッと笑っていた。


「ビール。さっきくれるって言ってた地ビール飲んでも良いかな?」

「えっ? ああ良いよ。部屋に入る?」

 僕はあまり考えなしに優香さんを部屋に招き入れていた。

 よく冷えた地ビールを優香さんに渡して僕は部屋をあとにして風呂に向かおうと思った。

「ゆっくりしてて。僕も風呂に…」

 優香さんに背中から抱きしめられてしまった。


 こっこういう場合。

 どうするべきか男としては悩ましい問題だと僕は焦りながら思っていた。

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