第23話 宿に戻ると
流しのタクシーが運良くつかまえられて僕と優香さんは素早く乗り込んだ。
「急な雨でしたね」
タクシーの運転手は愛想よく話題を僕らに向ける。
「ええ。土産物屋さんで雨宿りをさせてもらっていたんですが」
「そうなんですか。雨やまないですものねぇ」
僕と運転手さんが他愛もない会話をしていると優香さんはウトウトしはじめていた。
僕の肩にもたれかかる無防備な優香さんの寝顔を見ていたら顔や髪に触れたくなった。
さっきの不意打ちにされたキスを思い出して胸が苦しくなった。
恋結びの宿に着いて僕は優香さんをそっと囁いて起こした。
「優香さん。優香さん起こしてごめんね。宿に着いたから」
「あっごめんなさい。寝てたんだね。私」
「いいんだ。疲れてたんだろうから」
僕たちはタクシーを降りて傘をさして小走りに宿に戻った。
僕たちはお互いそれぞれの部屋に戻った。
部屋に戻ると僕は高揚感に浸り、久しぶりの幸せな気分に心地よさを感じていた。
宿の小さな冷蔵庫に土産物屋さんで買った地ビールをつっこんだ。
ビールの一本は手に持ち窓辺に座り栓を開けた。栓を抜くといい音を立ててビールは僕の飲みたい気持ちを
宿の小さなグラスになみなみと注ぐと僕は一気に飲み干した。
「美味いな」
普段飲むビールとは明らかに違う味わいだった。
優香さんと飲みたいな。
ちょっと思ってしまった。
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