第14話 手をつなぐ
さっき出会ったばかりの美しい女性と僕は手を握り合っていた。
やけくそなわけでもなかった。
彼女は優香さんは初めて会った気がしなかった。
彼女の僕に甘えてくる仕草があまりにも自然すぎてだんだんホントの恋人同士なんじゃないかって思えてくるからこの人は人間なのだろうか? とすら思った。
江ノ電に揺られる。
僕は優香さんが自分で払うといった電車代も貰わなかった。
その先も僕は優香さんに払ってもらう気はなかった。
琴美と結婚する気だったからずっと貯金をしていた。
結婚資金はまるまるこの手元にあるんだ。
僕はその結婚資金をなにかにパアッと使おうと思っていたからデート代なんてたいしたことなかった。
僕の肩にもたれる優香さんの長い髪が僕にかかるたびにくすぐったくてシャンプーの匂いかな? 優香さんはすごくいい匂いがした。
思わず優香さんの髪にも顔にも触れたくなる。感触が知りたい。
「智史くん。どうして良いって言ったの?」
「んっ? なに?」
僕たちは恋人同士だ。
偽物の恋人同士だ。
だけどひどく心地が良かった。
僕は会ったばかりの優香さんとこうして手をつないで寄り添うことに深い癒しを感じていた。
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