キャラクターメイキング
「よし——、やるぞ!」
近所に住んでいる貴恵と共に帰宅した
玲愛はまず、すっかり
VR装置を使用する際は、ベッドに
長時間深い眠りに着くようなものなので、不安定な場所や姿勢でプレイすると、身体を痛めてしまう恐れがあるからです。
昔から敷布団を愛用している玲愛の自室にはベッドがないので、いつもリビングにあるソファーに寝転んでプレイしています
夕食の時間には、一緒に住んでいる祖母が玲愛を揺すってくれるので、夕食を食べそびれることもありません。一石二鳥です。
専用の装置を装着して目を
仮想現実へ溶け込んでいく時の感覚は、何度経験しても不思議なものです。
まるで、波一つない穏やかな水面の上でぷかぷか浮いているような。
そこからゆっくりと静かに沈んでいくような。そんな感覚です。
暗転した視界がじわりじわりと回復し、目の前に映像が映し出される中、
「あー、あー、あー、あーーー。うん、声は普通に出るね」
玲愛は発声練習中でした。
これは《FVW》においても共通していた点ですが、初めて間もない、仮想現実内で自分が操るアバターが生成されていないこの瞬間だけ、まるで魂だけが抜け落ちて、意思を持ったような不思議な状態になります。
身体を持たない、意識だけの存在。
一応、手や足など視認できる範囲にそれらしきものは付いているのですが——、なんとも
玲愛的には、かなり昔に涼花が言っていた、〝百人組手の雑魚〟という表現が一番しっくりときています。
暗い世界で
あまり深い
『 サーバーを選択してください。【
最初はゲームを遊ぶためのサーバーの選択です。
サーバーとは、簡単に言ってしまえば〝世界線〟のこと。
中身は同じでも、別のサーバーを選択したプレイヤーとは、会うことも出来ませんし、チャットを送ることさえ出来ません。
《TCO》では、朱雀、青龍、玄武の三つのサーバーに分かれているようです。
これは事前に分かっていたことなので、
「確か〝朱雀〟を選べばいいんだよね。——流石にみんなとサーバーを別にするのは寂しいかな……」
玲愛もすんなりと決めることができました。
『 【朱雀】でよろしいですか? Yes/No 』
「おっけーぼくじょー」
なんの
「……! うわぁぁぁ!」
目の前に簡易ウィンドウがあるだけの真っ暗な空間に、突然現れたのは光に包まれた、十体のアバターでした。
部屋の中央に居る玲愛を囲むようにして現れたそれらは実に
比較的背の低い玲愛よりも更に小さい子供のようなアバターから、一見するとモンスターにも見える大きな岩男まで。本当に様々な外見をしていました。
まるで、実験標本のように宙に浮いて眠っているので、当然動き出したり、話しかけたりしてくるわけではないのですが、尚のこと不気味です。
やがて、少し遅れて出てきたのは、
『 キャラクター生成:種族選択 』
「び……、びっくりしたんだけど! ひどい演出だ!」
腰を抜かした玲愛は怒っていました。
次の項目では、プレイヤーの分身となるキャラクターの種族を決めるようです。
《TCO》ではキャラクターの外見が自動生成されますが、完全自動生成の《FVW》との違いは種族を選べるという点です。
唯一、《FVW》が優れていた点といえば、〝性別〟を選べるというところでしょうか。
無論、男の子として生まれ変わった気分を味わう、
玲愛の友人である涼花は、男性キャラであるルークを操作していました。
そういえば今回、涼花はどうするのでしょうか。
玲愛は少し気になりましたが、とりあえず種族選択に集中することにしました。
選べるのは、ぱっと見では人型の様相を
パッケージに書いてあった説明曰く、バラエティに
「んー、別に私は普通の人間で良いんだけどなぁ……」
と、玲愛が悩んでいるのは〈
物言わぬ
「この子はなんだか地味かなぁ……」
玲愛が選ぼうとしている〈
ゲームでのビジュアルなのである程度美形ではありますが、なるほど確かに少しだけ没個性的ではありました。
なんだかんだと数分悩んだ末に、
「——よし、君に決めた!」
玲愛は、博士からポケモンを貰う少年のような眼差しで、種族を決定しました。
最後に、
『 プレイヤーネームの入力 』
「名前ね。あーる……、いー……、えー……。ふぅ。出来たぞ!」
玲愛は空中に表示された光学キーボードに、両手の人差し指を
入力したのはもちろん、
『 プレイヤーネーム【Rea】でよろしいですか? Yes/No 』
「ぼくじょー!」
一切の迷いなしに本名でした。
〝ド〟が付く田舎に住む玲愛は、個人情報の重要性をあまり理解していません。
各分野の科学の発展に
……とは言っても、一応、漢字表記は自重しました。
〝玲愛〟なんて、中々居ない名前ですし。念のため。
「大体、本名以外の名前で呼ばれても違和感しかないと思うんどけどなぁ〜……」
玲愛の本名プレイを
なんだバエルって、モンスターか。
レアは思いました。
聞くところによると、有名な高位の悪魔の名前のようです。
……悪趣味。
レアは思います。
でも、本人の前では絶対に言いません。遊理の機嫌を損ねるのは悪手です。例えるなら、ボス戦前に回復アイテムを全て使い切るくらい悪手です。
そんな他愛もないことを考えている内に、レアの視界は再び暗転しました。
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