第21話 アリサが知らないボクと『ブルーノート』の最後の風景
ボクが大阪で過ごした最後の夜は、奇しくも『ブルーノート』だった。
隣にはヒロミさんが座っている。
「結局はヒロミさんの言うとおりになりました。黙っていましたが、ボクはミイちゃんと契りを交わしてしまいました。その結果がこの体たらくです。」
「やっぱりね。そうだと思ったわ。それでまた苦しい思いをしてるんでしょ。だから言ったじゃない。ダメよって。」
「はい。ヒロミさんの言うとおりでした。もうボクは壊れそうです。」
「どうして私の忠告を聞かなかったの?それでミイちゃんはどうしてるの?あなたがこんなに苦しんでいるのを知ってるの?」
「彼女は新しい事業に取り組んでいて、新しいパートナーといい感じで進んでますよ。先日、ちらっと様子を見てきましたが、お店はメディアにも紹介されて盛況のようです。もうボクが行っても余計なことになるだけだなと思いました。でもその姿を見て、良かったなと思う反面、苦しくて死にそうです。もう恋も終わりにします。ヒロミさん、お情けでいいですから、ボクにキスしてくれますか。」
「あなた、ホントにいい人ね。そしてホントにダメな人ね。」
ヒロミさんは、そっと慰めのくちづけをくれた。
やがて彼女の吐息を感じながら、ボクはボクでなくなっていた。
果たしてボクはこれからどうすればいいのだろう。どうすべきなのだろう。
もう、ボクの行き先も安らぐ場所も、・・・・・・何所にもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます