第10話 北陸紀行

『ブルーノート』の彼女は終わった。ここから先、本編では彼女のことを本名で呼ぶことにする。もちろん彼女の名前はあの夜聞いた「アリサ」である。


十一月最終日曜日の午前八時三十分。ボクは大阪駅の中央改札口近辺に立っていた。もちろん北陸旅行のためにアリサと待ち合わせしているのである。

九時半の電車に乗る予定なので、待ち合わせの時間は九時だから、まだ来てないだろうとは思っていた。それでも今までに待ち合わせの時間に遅れたことのない彼女のことだ、きっと九時には来るだろう。果たしてその十分前、彼女は現れた。

「おはよう。待たせた?」

「いいや。大丈夫だよ、待つのは慣れてるから。たったの二時間しか待ってないし。」

「また、ウソばっかり。でも、今日のこと、楽しみにしてたわ。昨日、電話くれたときもちゃんとお出かけの用意をしていたのよ。」

この時はすでに電話での連絡交換ができるようになっていた。

「電車は九時三十分発だから、まだ少し時間がある。コーヒーでも飲む?」

「いいけど、お弁当とか買わなくていいの?」

「金沢の到着時間が十二時過ぎの予定。向こうで昼食タイムでもいいと思っていたんだけど、どうする。」

「それならそれでいい。任せる。」

二人は駅構内のテラスでコーヒーを注文した。

随分寒くなってきた。晩秋の朝はまだ寒い。吐く息も白くなりがちだ。温かいコーヒーがボクらの心と体を温めてくれる。


北陸方面の特急は十一番線。指定席も取れてゆったり気分。

「金沢までは、電車に揺られてざっと二時間半だ。ゆっくり行こうね。」

列車の中はそんなに混んではいなかった。まだ十一月ということもあるだろうし、明日が月曜日ということもあるだろう。観光地へ向かう人は少ないようだ。

一人旅なら駅弁とビールを買って、揺られながらの旅行でもいいのだが、今回は二人旅。行程の最初から酒臭いのもムードがないかと思い、アリサに合わせてスナック菓子とコーヒーを持ち込んだ。

「まだ雪は降ってないだろうけど、結構寒いのだけは覚悟しておいてね。」

「アリサ寒いの苦手かも。四国って結構暖かいのよ。」

「いいさ、寒かったらボクが暖めてあげるから。」

二人はシートに座ったままずっと手を握っていた。今日も隣でヴァニラの香りがする。

窓の景色はやがて冬の様相をまとっている琵琶湖に差し掛かる。木枯らしに湖面を削られる姿が寒々しい。

「ここから先は清々しい風景なんてないかもよ、雪山を見るまでは。冬の北陸は一面群青色の風景だと思うよ。」

「ヒロさんは北陸に何度も行ったことがあるの?」

「ボクの両親が福井県の出身なんだ。だから東尋坊や永平寺なんかによく行ったものさ。知ってる?福井県って。」

「知らな~い。アリサは四国しか知らないもん。ヒロさんがこれからどんどん色んなことを教えてくれるんでしょ。」

「そうだね。いい先生になれるようにがんばるよ。アリサもいい生徒でいてね。」

そう言って軽くほっぺにキスをする。

「だめよ、みんなが見てるところでは。恥ずかしいじゃない。」

「手は握っていてもいいでしょ。アリサが迷子になったら困るから。」

「迷子にならないように、ずっと離さないでいてね。」

とても五十代のおじさんと二十代の若い女の子との間で交わされている睦言だとは思えない会話だ。自分の年齢を忘れてアリサの隣に座っているボクがいる。


「そういえば『ブルーノート』の最後の夜、ヒロミさんから『ミイちゃんが辞める原因はあなたじゃないでしょうね』って言われた話をしたよね。あの人鋭いね。ちょっとドキッとしたけど、そんなニュアンスの話をヒロミさんとしたことある?」

「ヒロミさんにお客さんの話なんてしたことないわ。ヒロさんがしゃべったんじゃないの?それともそんな雰囲気が出てたのかもよ。」

アリサはボクの顔を覗き込むようにして問いただす。

「まあ、ボクがキミにご執心だったのは知ってたからね。でも普通はお客さんの影響で辞める人っていないんじゃない。」

「アリサがあのお店を辞めたホントの理由を知りたい?」

「何か特別な理由があったの?」

「新しい仕事のこともあるけどね、一番の理由は、ヒロさんとこういう仲になったからよ。」

と言ってじっとボクの目を見つめる。

「それは責任重大だな。骨の髄までしゃぶりつくすぐらい可愛がってあげないと、神様に申し訳ないな。」

「なにそれ。どんな神様に何をお願いしたの?」

「恋の神様に『どうぞボクに可愛い女の子をおつかわし下さい』ってね。そしたらアリサが現れたってわけさ。」

万事がこの調子である。ふざけてばかりいるわけじゃないが、こんなところでまじめな話をしても仕方ないし、ちょっとお調子者ぐらいの感じでしゃべってないと間が持たない。そんな感じがしていたからである。

おかげで電車の中も楽しい時間を過ごせた。ずっと手をつないだままで。


金沢の駅に着いたのが予定通りの十二時過ぎ。じっと座っているだけなのに、適当に空腹になるのだから不思議だ。

「さて、チェックインには時間がある。まずはなんか食べようか。金沢名物ってなんだろう。おでんかな。」

「寒いからおでんいいわね。」

「じゃあそれで決まりね。」

駅前から少し離れた商店街でおでんのお店を探す。さすがは繁華街だけあって店は選び放題だ。適当に小綺麗な店を選んで暖簾をくぐる。店内はテレビでよく見るカウンター方式の座席だ。店奥の方の席を陣取って、二人並んで座る。

「まだ陽は高いけど飲む?」

「そうねえ。働いている人たちには申し訳ないけど、私たちは休みだもんねえ。いただきましょ。」

アルバイトなのだろう、注文を取りに来た若いお姉さんに熱燗と猪口を二つ注文する。おでんは目の前でぐつぐつと煮えているものを好きなだけ注文すればよいシステムだ。ボクは前菜のつもりで大根と春菊と豆腐を注文する。アリサは車麩、蒟蒻、巾着をオーダー。熱燗もおでんも冷えた体を温めてくれる。

「ランチの後はどうするの?どんなエスコートをしてくれるの?」

「まずは定番の兼六園かな。それから金沢城あたりまでは見学しておくか。お勉強の時間はそれまで。あとはゆっくり温泉に入るっていうコースでどう?」

「さすがヒロさんね。散々寒い目に会わせてから、あったかい温泉に入れようっていう作戦ね。」

「違うよ。寒いところだと、くっついて歩けるでしょ。それが狙いだよ。」

「うふふ。」

と笑いながらボクに体を預けてくる。ややもすると体が触れ、髪が揺れるたびにヴァニラの香りがボクを誘う。

そしてゆっくりとした時間が過ぎていく。


ハーフなのにお猪口を手にして、日本酒を舐めるアリサの姿は色っぽく映る。なんとなくギャップがあるように見えるのがいいのかも。

ほどほどに日本酒が体を巡ったおかげか、少し頬を赤く染めたアリサも可愛らしい。

このあとはバイ貝やカニなど、金沢特有のおでんをたいらげ、お腹も体も温まり、二人は四度目の食事会を終えた。これから始まる本格的なデートに向けて。


兼六園も金沢城も二人にとっては、ただの散策コースでしかなかった。入園の際にもらったパンフレットを見るわけでもなく、ただぴったりと体を寄せ合って歩いていた。寒いことを理由に。

ときおり景色を指差し、その景色を背景に写真を撮るアリサ。たまに立ち止まり説明の看板を読んだり映像を見たりもしているが、内容は頭に入っていない。そんなことよりも二人でずっと一緒にいられることが何よりも楽しいのである。

天空ではトビが空中で弧を描いていた。まるで二人をずっと見おろしていたかのように。まるで二人の笑い声が聞こえていたかのように。

晩秋の明るい空は今日も北陸らしくどんよりとした雲がゆれている。


「そろそろ行きますか。」

「そうね。」とニッコリ微笑む。

充分に散策を楽しんだ二人は、荷物を預けておいた駅へ一旦戻り、そこからタクシーで今宵の宿へ。ボクはできるだけ落ち着いた雰囲気の宿を探しあてていた。床張りの廊下にあまり高くない建物。立地がよく眺めがいい。露天風呂はあるが、残念なことに混浴ではないところが悔やまれる。

チェックインをして部屋まで案内してくれる仲居さんがチラッチラッとボクたちを見る。宿帳に別々の名前を記入していたからだ。「いったいどういった関係なんだろう。」そう思っているに違いない。しかしこういう仕事柄か、なるべく顔には出さないようにしているようだ。

部屋に通されて荷物を降ろす。仲居さんはお茶を入れながら、館内の案内と利用時間の説明を行う。「お二人はどういうご関係ですか。」などと失礼なことは決して聞かない。聞かれたら「恋人同士です。」という回答は用意していたが。

仲居のおねいさんは「ごゆっくり。」とだけ言葉を残して部屋をあとにした。

あとは二人の世界である。


部屋は和室六畳二間のシックな部屋だ。山の上にあるので街並みを見下ろす景色もいい。

「いい眺めね。」開口一番アリサが伸びをしながら言った。

「お気に召していただいて光栄です、お嬢様。ボクが建てたわけじゃないけどね。」

後半のセリフは余計である。

景色を見ていたアリサの肩を後ろから抱き、頬にそっとキスをする。アリサは振り向いてボクの顔をみつめて、唇を合わせに来てくれる。

「寒かったでしょ、あったかいお湯に浸かっておいで。もう入れるはずだよ。」

ボクはアリサの体を離して服を脱がせるポーズをする。

「もう、ホントに。」

と言ってボクの頬を軽くつねってみせる。

「ちゃんと自分で脱ぐわよ。でも着替えるまでは向こうを向いていてね。やっぱり恥ずかしいから。」

と言って隣の部屋に部屋付きの浴衣を持っていく。彼女が着替えている間にボクもそそくさと浴衣に着替えてしまう。室内は暖房が行き届いてはいるが、半纏がなければさすがに肌寒い季節だ。

浴衣に着替え終わったアリサは二十六歳の大人の色気が充満していた。ハーフの顔立ちが浴衣に微妙なコントラストを生み出す。ボクは思わず彼女を引き寄せ、唇を奪いにいく。ネットリトした甘い香りがボクを包む。ボクの手は自然と彼女の腰周りを抱いていた。

「浴衣姿も綺麗だね。うっとりするよ。ボクが暖めてあげてもいいんだけど、まずは優先権を温泉に譲ることにしよう。」

「うふふ。気障な言い方ね。ちゃんと温泉を満喫させて。一時間は入ってるわよ。」

時計の針はまだ十六時を指したばかり。夕食の時間までは充分にゆっくりできそうだ。

「じゃ、ボクは茹で上がっちゃたいへんだから、少し遅れたタイミングで行くことにするよ。ちょっと調べておきたいこともあるしね。」

待ち合わせを一時間後の一階ロビーとしてアリサを部屋から見送ったあと、館内の説明パンフレットと相談を始める。さすがに一時間も風呂に入るとのぼせ上がってしまうだろうし、宿泊の予定は二泊だ。明日は飽きるほど満喫できるはずだ。

それよりも館内の散策もしておく必要があった。アリサを楽しませたい。単にそう思っていただけだった。


「そろそろ行くかな。」そう思って大浴場へ向かう。温泉なんてボクも久しぶりだ。

もうすでに何人かの先客があった。髭がかっこいいご老人と、どっかの青年団の団長っぽい若者。小さな子供連れの親子もいた。ボクがその中にはいると丁度年代別の標本ができそうだ。

少し熱めの湯は冷えた体に染み渡った。「おおおっ。」人は頃合のいい湯に入るとどうして唸りながら浸かるのだろう。ボクも例外ではなかった。頃合のいい湯に浸りながら、アリサは今どうしているのか想像する。そして湯当たりしてないだろかと心配もする。

彼女だっていい大人なんだから、ボクが心配するまでもないんだけれど。

それにしてもここの温泉はいい湯加減だ。もしかしたらボクでも一時間ぐらい入っていられるかも。

などと思っていると、アリサを送り出してから約束の一時間が経とうとしていた。

ボクはそそくさと浴衣を調えなおし、浴場のドアを開けて出た。

すると、丁度そこには女湯から出てきたばかりのアリサがいた。いいタイミングだった。

「あら、今出てきたところ?アリサもよ。よかった。一人で待つことになったらどうしようと思ってたから。」

「そう思って早めに出てきたよ。もうちょっと入ってたら、今夜のおかずになっちゃうところだったし。」

二人はそこから手をつないで部屋へと戻る。廊下も階段もずっと繋がったまま歩いていた。


部屋に入ると奥の六畳には布団が敷かれていたのに気づく。

それを見て見ぬフリをして冷蔵庫の中からビール瓶を取り出す。

「アリサも飲むだろ。」

「うん、すごーく喉が渇いてるわ。」

二つのコップにビールを注ぎ、「チン」と乾杯。

熱く火照った喉に冷たいビールは心地よい。

「湯加減はどうだった?お気に召していただけましたか?」

「とってもよかったわ。とっても幸せ。ヒロさんありがとう。アリサをつれてきてくれて。それにやっぱりヒロさんはアリサが思ってた通りいい人だった。」

「ん?どういうこと?」

「だって。」と言ってその目線が奥の六畳に向かう。

アリサを見ると少しはにかんだように、

「あんなの見たら、狼の人はそれだけで飛びついてくるんじゃない?でもヒロさんはちゃんと理性があるし、やっぱり安全パイなのよ。」

「お楽しみは後にとっておくタイプなんでね。お子様ランチだってエビフライは最後に食べてたと思うよボクは。」

といった口も渇かぬうちにアリサの隣へ座る。

店のシートで座らせていたような斜向かいの体勢でアリサと対峙する。そのまま体を引き寄せてアリサの唇を奪う。

「今日のこの日を待ちわびていたよ。キミを堂々とこの腕の中に抱ける日を。」

湯上りのアリサはヴァニラの香りを付け忘れている。アリサそのものの匂いがする。ボクの手は浴衣の中には侵入しない。外側から腰の辺りを抱いたまま、ぐっと抱きしめる。ボクの唇はアリサの唇と耳元と首筋だけを愛撫する。この匂いを堪能するだけで今は充分だ。

そのとき、アリサはボクの分身にノックしてきた。ボクもアリサのビキニの上からあいさつをしてみる。

「なんだかお店にいたときのようだね。あのフロアよりはかなり明るいけど。」

「うふふ。お店ごっこしてみる?」

面白そうな提案だ。アリサが言うほど安穏な安全パイを自称するつもりはないが、体をむさぼるだけが目的で来た訳じゃない。恋人との旅行を楽しみに来たのだから。しかし、元キャバ嬢の彼女がいるならこんなオプションもあっていい。

「今日は何人から指名を受けてるのミイちゃん。」

「今のところはヒロさんだけよ。」

「そういえば、板長さんも後で指名するって言ってたかも。」

「その頃にはもう閉店しているわきっと。」

お互いに秘部をまさぐりあいながら、甘い吐息だけを存分に楽しんでいた。官能の時間は二人を包み込むように止まっていた。


やがてときは再び動き出す。


「そろそろお腹がすいたかもね。」

「そうね。デザートは後なんでしょ。」

「そのとおり。」


食事は部屋出ししてくれるので、フロントへ合図を送ればすぐに支度をしてくれる。

予約していたとおり、今夜は寒ブリとのどぐろを堪能するのだ。

準備に半時間ほどかかったろうか。目の前のテーブルの上には目を見張るほどの皿や鉢が並べられていた。

「四国ではめったに食べられない美味しい魚を召し上がれ。」

二人は美味しい魚を堪能した。奥の六畳に敷いてある布団のことなど忘れたかのように。ボクは覚えていた。飲みすぎて使い物にならないように気をつけるために。だから、今宵は熱燗を少しだけ。

アリサもきっと忘れていないだろう。時折り意識したように「うふふ。」といいながら色っぽい目線を送る。今夜は箸を持つ仕草さえも色っぽく映る。

料理は抜群だったが、本編はグルメ小説ではないので詳細は控えておくことにしよう。


宴の時間は終わった。仲居さん数人による後片付けも無事に終了し、あとは蜜月の時間だけが待っている。

片付けの間にボクもアリサも身支度を整えていた。アリサの首筋からは再びヴァニラの香りが漂い始める。

アリサは座椅子に座っているボクの膝の上に乗ってきた。ボクは彼女の体ごと大きく回した腕で受け止める。少し酔っている体がほのかに熱く火照っている。軽くキスをしてから、

「熱いお茶を入れてくれないか。少し醒ましたいんだ。」とお願いする。

「はい。」とだけ答えて、お茶の支度をしてくれる。

暖房が効いている部屋の中だから、酔いを醒ますには冷たい飲み物でもいいのかもしれないが、気分もリセットしたい時は熱いお茶に限る。


「アリサ、こっちへおいで。」

膝の上ではなく、隣に座らせる。肩を抱き寄せ、浴衣の中に手を忍ばせる。いつものとおり弾力のある肌がボクの手を押し返す。

いつの間にか斜向かいに座る格好となり、体は正面から抱き合っていた。

「夜はまだ長い。ゆっくりと時間は過ぎるんだよ。」

そう言って浴衣の中に忍ばせた手はブラのホックを外しにかかる。

「うまいのね。今まで何人の女性のホックを外してきたの?」

「たまたま外れただけだよ。それよりも綺麗な体をボクに見せて。」

浴衣もブラもゆっくりとアリサの体から剥ぎ取っていく。そこには女性特有の美しい曲線が現れ、ボクの目を楽しませてくれる。

「明るいところは恥ずかしい。」

「あの店だって真っ暗じゃなかったよ。」

「もう私はミイじゃないのよ。」

腕で胸を隠しながら恥じらいを見せる。

「おいで。」アリサの手を引き、奥の六畳へと誘う。


「もう、ここからはボクも狼だよ。」

すでに浴衣もブラも剥ぎ取られているアリサ。あとは下につけているものだけだ。それもあっという間に剥ぎ取って、アリサは生まれたままの姿になった。

初めてみる姿ではないが、今日はベッドではなく布団の上というのが妙にエロチックだ。ボクも肌につけているものを乱暴に脱ぎ捨てた。

アリサの上から覆いかぶさるように体を重ね、唇を陵辱しつくすと同時にボクの手は彼女の胸の膨らみを鷲づかみにして乱暴に弧を描いていた。

アリサの手はボクの分身へと伸びていく。やがて二人は互いの秘部へのくちづけを求め、その匂いを堪能するかのように舐めあった。

ここまでゆっくりと来たからか、アリサの口撃は次第に激しくなり、ボクの砲撃が悲鳴を上げだす。ボクはアリサの体を器用にすり抜け、後ろから抱きしめる。ボクの指が洞窟探検を所望しだしたので、この体勢からアリサの洞窟をまさぐっていく。

いつものように繁みがあり、いつものように石碑がある。その奥の入り口でボクの指は回転しながら探検を始めた。アリサはボクの体を握り締めるかのように抱きつき、熱い吐息をもらす。溢れ出る甘美な粘液を確認すると、ボクは首筋の匂いとともに、胸の膨らみにある硬い突起にあいさつをする。時折り歯をあてながら。

「ヒロシさん、来て。」

やっとの思いで弾き出したような声。しかもちゃんと名前で呼んでくれた。その声を合図にボクはアリサの上に重なるように体を合わせた。

洞窟の中は思いのほか熱かった。

ゆっくりとその温度を確かめるように、行ったり来たり、来たり行ったりを繰り返す。久しぶりの感覚と官能の痺れに酔いしれる。

お互いに上になり下になり、前になり後ろになり、体温を確かめ合う。時々ささやくように声をかけ、ときおりむせぶように吐息が漏れる。

やわらかなアリサの体は、色々なポーズでボクを攻めてくれる。ときおり激しく、ときおりスローに。そのスローの時間がないとボクの砲撃はあっという間に終わってしまう。特に洞窟の中でクイックイッと動かれたときには危うく漏れそうになってしまい、少し甲高い咆哮を挙げる始末。

ボクもたまに分身を引き抜き、代わりに鍵ばった形のままの指を侵入させて、激しく上付きを攻撃してみたりする。アリサの嗚咽にも似た声はボクの耳で心地よく奏でられるヴァイオリンに聞こえた。

弾力のある肌はいつまでもボクの愛撫を弾き返してくれる。しばしばアリサの手は、行ったり来たりしているボクの分身を確認するかのようにさしのべられ、その度にボクの背筋にはゾクリと走るものを感じていた。

まだ互いに演奏する題目は残っていたけれど、程よい疲れが今の演奏を終了させる雰囲気を醸し出す。ボクはアリサの耳元で「愛してる」と告白し、「ありがとう」と礼を述べた。

アリサは「私もよ」答え、ボクの背中に腕をまわす。

「アリサ、今日のために準備してきたの。一緒にいって。」

その言葉の意味を理解したボクは、楽曲の最終章を演奏するかのごとくフィナーレを迎える。痺れるような感覚とともにボクの砲撃は最後の慟哭を解き放った。


若いアリサの体は、心地よい疲れを伴いながらも、少しの休憩で次の対戦さえも辞さない色艶を放っていた。しかし、ボクの体は乾坤一擲となる一撃を放ったところである。回復には暫しの猶予が必要だ。若い頃は連投でも構うことなくマウンドに上がったものだが、今も昔の物語である。


しばらくは余韻を味わうかのようにじっと抱き合う二人。唇だけはずっと互いを気遣っていた。熱く火照ったアリサの肌は少し汗ばんでいて、すべすべとしたキメの細かさを際立たせていた。

アリサはボクの分身がたたずむ砲台へと向かい、やがて軟らかくて温かな舌で包み込んでくれる。しばらくの間、ゆっくりと味わうようにボクの欲望の証を搾り取った後、ボクの唇を求めに来た。

ボクはヴァニラの香りを確認するかのようにアリサの胸元に顔をうずめ、赤子のように胸の突起物を吸い尽くす。余韻は長く続いた。何分も何十分も。この時間が永遠に続いてもいいと思った。

ボクたちは特に言葉もなく、見つめあうだけの時間を楽しんでいた。

冷たい北陸の北風は、二人の逢瀬を見守るように窓の外に吹いては渦を巻いている。



先に言葉を発したのはボクの方だった。

「ありがとう。いい冥土の土産になったよ。」

「早すぎるよ。あんまり早くアリサを置いていかないで。」

「まだ夜は長い。ちょっと散策に行かないか。建物の中にいくつかレクレーションできるところがあるみたいだよ。」

「うん。」

二人は熱く火照った体が冷めるのを待って、浴衣を身に着け半纏を羽織る。

部屋を出たボクたちは、誰が見ても恋人同士にしか見えなかった。親子ほどの年の差があるにもかかわらず。だから、手をつないで歩いている姿は少し変に見えたかもしれない。

そんな周囲の目線も気にせず、ボクたちはずっと手をつないで歩いている。

「ピンポンでもしに行かない?」

「アリサ、割と得意よ。もしかして私が相手なら勝てるとでも思ってる?」

バレーボールをやっていたというアリサの体つきは、わりとがっしりしている。いかにもスポーツができそうな雰囲気だ。

「すごい自信だね。ボクもそれなりだよ。教えてあげようと思って誘ったぐらいだからね。」

通い合った仲だからか、いたずらっ子っぽく笑顔を見せるアリサがとても可愛く見える。

ピンポン台は全部で三台。そのウチの一台があいていた。フロントで申し込み、ラケットとピンポン玉を借りる。

「さあ、腕だめしだよ。」と言って玉を打ち込んでみる。

カコン、カコン、カコン、カコン・・・・。

自称するだけあって、アリサもかなりの腕前だ。軽いラリーならいつまででも続きそうだ。

「ヒロシさん、流石ね。」

球を打ち返しながらボクを褒める。もう彼女はボクのことを「ヒロさん」とは呼ばなくなっていた。

ちょっとボクの体勢が崩れて浮いた玉を返したそのとき、アリサは思いっきりスマッシュを打ってきた。

「ビシッ!」

玉の軌道はボクが差し出すラケットの数センチ先を抜けていった。

「やったな。もう容赦しないぞ。」

ニンマリしながら、アリサが思いのほかピンポンが上手だったことに喜びを覚えていた。

ボクがわりと色んなスポーツをこなすタイプなので、同じように運動ができる女の子は好きだ。一緒に色んなスポーツを楽しめるかも。そんな期待が膨らんでくる。だから嬉しいのである。

三十分も楽しんだろうか。玉を追うたびに再び体が温まってくる。館内は至る所で暖房が効いているので、そこそこ動くと少し汗ばんでくる。

「汗をかいちゃったな。もう一度温泉に浸かりなおしてくるか。」

「そうね、もう一度汗を流してくるのもいいかもね。」


ボクたちは一旦部屋に戻り、タオルを持って大浴場へ向かう。もちろん、手はつないだままだ。そして大浴場の入り口のところで別れる。次の待ち合わせは三十分後。

ボクは熱い湯に浸りながら、熱い逢瀬を思い出していた。

望んでいたこととはいえ、若干の罪悪感が脳裏をよぎる。このままずっと彼女と一緒にいるわけにはいかないのだろうと。しかし、今のところはその先を考える術も意向もなかった。まだ始まったばかり。ゆっくり考えればよいことだと。


程よく汗を洗い落としたボクは、少し早めに出てアリサを待つことにする。

湯殿を出たすぐそばにあったマッサージチェアに腰を下ろし、コインを入れて心地よい振動を楽しんでいると、

「気持ちいい?」

しばらくして、不意に現れたアリサがボクに声をかける。

「早かったね。これすごくいいよ。さっきの運動で疲労した筋肉をほぐしてくれそうだ。」

「アリサにも替わって。」

あまりにも気持ちよさそうにしていたので、アリサも興味を示したようだ。

「ああ、背中の部分は気持ちいい。」

「もしかして、アリサも結構おばさんになってきてるかもよ。」

「ホントにそうねえ、考えたらあと何年かで三十歳になっちゃうのよ。」

きりっとした顔立ちだが、はっきり言って二十六歳には見えない。初めて会ったときももう少し若いと思っていた。そんな彼女があと四年もすると三十歳になるというのだ。

いやいや、すでに五十を超えたボクが言うセリフではない。ボクなんかと比べたら彼女はとてつもなく若い。その若さがうらやましいほどに。


「汗を流してすっきりしたら、もう少し飲みたくなったでしょ。バーがあるみたいだから行ってみない?」

「初日からいきなり飛ばしてない?アリサ、今日は疲れたわ。バーは明日のお楽しみにしましょ。」

そう言って自分の腕をボクの腕に絡ませる。ニッコリ微笑んで、ボクに体を寄せながら歩く。またぞろ彼女の香りがボクの鼻腔を刺激する。まだヴァニラの香りはしない。


部屋につくなりアリサは慎ましやかにお茶の用意をする。

熱い茶を注いだ後は、ボクの隣に座る。

「ヒロシさん、今日はアリサのために色々とありがとう。ホントに嬉しかったわ。」

少し下向き加減で話しているが、涙ぐんでいるようにも見えた。ボクはそれをみぬフリをしてアリサの肩を抱く。

「アリサのためじゃないさ、ボクのためにやったことなんだ。それに付き合ってくれて、礼を言うのはボクの方だよ。」

アリサは少し潤んだ瞳のまま顔を上げ、そして少し目を閉じる。

ボクはそのままの体勢で、アリサの唇を奪いにいく。

やがてなだれ込むようにしてボクはアリサの体を押し倒していた。そしてそのままの体勢でずっとアリサの匂いを堪能していた。


今度は先に言葉を発したのはアリサだった。

「お、重い。」

「えっ?」

「うふふ、冗談よ。どうせ抱き合ってるなら、冷たくて硬いところよりも温かくてやわらかいところがいいわ。」

「そうだね。」

部屋の暖房を少し落とし、二人で布団の中に潜り込む。

「ベッドじゃない寝床に入るのは久しぶりでしょ。」

「記憶にないわ。子供のころからずっとベッドだったもの。中学生の修学旅行以来かも。」

ボクはニッコリ微笑んで、アリサの体を引き寄せる。

「まだ興奮していて眠れそうにないけど、しばらくこのまま抱いていてもいいかな。」

「嫌って言っても逃がしてくれないんでしょ。」

「じゃあ、嫌って言ってみて。」

ボクは少しヴァイオレンスチックな遊びも好きだ。

「その手には乗らないわよ。」

アリサはさらりとかわす。

正直言ってボクの体も少し疲れを呈していた。まだ興奮が収まらないのは事実だが、疲れた体は休息を求めていた。ボクの手はアリサの浴衣の中に侵入し、張りのある若い肌を求め、その感触を味わっていた。その手が胸の膨らみに達したとき、ボクは自然にアリサの唇を求めていた。


この日のうちにムリをするつもりはなかったが、アリサの手がボクの分身に具合を聞いてきたので、ボクの意思にかかわらず彼が勝手に返事をしてしまう。

アリサは布団に潜って、ボクの分身の様子をうかがいに行ってしまった。やがて軟らかくて温かく包まれていくボクの分身が歓びの悲鳴を上げ始める。その声が聞こえるのか、アリサの活動はどんどん加速する。さすがにこのままでは完全敗北が目前に見えたので、早々に白旗を掲げ、アリサの指令本部にそのことを伝える。今度はボクがご本尊にお礼参りに詣でることとする。

膝を立たせて足をM字に開かせると、すでに濡れているのがわかる洞窟の入り口がそこに見えた。

小さな繁みをかき分けてボクの舌は洞窟の入り口から奥へと探索を始める。

ボクの指は同時に小さな石碑にもあいさつを行う。洞窟の奥からどんどん湧いてくる泉がボクの舌をさらに潤していく。

アリサは小さな声を漏らして、両手でボクの頭をかかえる。ボクの鼻腔は洞窟の中でアリサの泉で溺れそうだ。窒息する前に泉から這い出ると、今度は洞窟探検隊をカギ状に固定した指にゆだねる。アリサのネットリとした舌は再びボクの分身を求め、二人の振動がシンクロしていく。

再び燃え上がる体と心。目と目が合って、やがて重なり合う。

「今度はアリサが上になる。」

そう言ってボクの体を押し倒す。ゆっくりとボクの分身をアリサの洞窟に招きいれ、静かに動き出す。自ら動きながら宙に舞うアリサの体。ときおりボクは胸の膨らみを堪能しに行く。いつものように張りのある美しい曲線だ。

ある程度満足したアリサは、ボクに次の合図を送る。ボクはアリサと体を入れ替え、ゆっくりと覆いかぶさる。

そして興奮を少し鎮めて新たなイニングに入るが如く、ボクはアリサの首筋の匂いを満喫し始める。二度目の湯上り以降、ヴァニラの香りをまとっていないアリサの体は、女性らしい柔らかい匂いが漂っていた。それはそれでボクの官能神経は刺激される。

胸の膨らみの頂点に君臨する突起物にくちづけを挑み、心を込めて刺激を提供する。膨らみは鷲づかみされたまま、ふくよかな弧を描き、嗚咽とともにしっとりと汗ばむ。

洞窟への侵入許可はすでに下りていたので、もう一度アリサと見つめあったタイミングで攻撃部隊の侵攻命令を下した。

ゆっくりとそして激しく、ボクの呼吸と同じようにアリサの呼吸も乱れていく。時折り漏れるアリサの声がボクの本能を刺激する。ボクはアリサの顔色を見ながらテンポを変えていく。時にワルツを時にサンバを。

二回目でもあるので、多少の急ピッチでも維持はできる。アリサも色々なサービスを試みてくれる。ボクの分身が洞窟の掘削を行っているときに、ドリルの振動具合を確かめに来たり、膨らみのないボクの胸の突起物にくちづけであいさつしたり。その度にボクも様々なお礼参りを行使した。

しかし終わりのない祭りはなく、神輿の奉納とともに神秘な躍動は終焉を迎えることとなるのである。

一回目と同様に、ボクはありったけの迸りをアリサの中で果てつくし、心地よい倦怠感に包まれる。

しばらくの間、ネットリとしたアリサの女神と挨拶を交わし、ぐっと抱き寄せたまま時間を止めた。

あとは甘く切ない静寂が二人を包むだけだった。



どれだけ眠っただろうか。

アリサを腕に抱いたまま、アリサの唇を求めたまま、深い眠りに落ちてしまっていた。

ボクが目を覚ましたとき、アリサはまだ深い眠りの中にいた。ボクの腕の中で。

我が上腕筋は痺れることなく、アリサの枕としてその役割を全うできていたようだ。

しばらくの間、可愛いアリサの寝顔を眺めていたが、彼女が自分の手の中にあるという満足感と、彼女を傷つけてはならぬという責任感の両方を感じ始めていた。

やがて、アリサもボクの気配に気づいたか、虚ろな目を半分開けて目が覚める。

「ヒロシさん、おはよう。」

どうやら、アリサはボクのことをもう「ヒロさん」と呼ぶことはないようだ。

「おはよう、アリサ。もしかしてボクが先に寝てしまったかな。」

「ヒロシさん、疲れていたもの。アリサの接待ばかりしてくれて。腕枕もずっとしてくれてたし。でも、私的にはヒロシさんは私の腕の中で眠ったことになってるのよ。ホントに嬉しかったから。」

時計を見ると朝の六時を少し回ったところだった。

「少し早いけど、朝のあいさつをしていいかな。」

「アリサもしたいわ。」

ボクはアリサの唇へ軽くキスをする。昨日の熱い時間が記憶の奥底からクッキリと蘇る。今日から新しい一日が始まる。そんな気がする。

「ボクはやっぱり安全パイになれなかった。でもこれからはキミを守ることで新しい安全パイになることを誓うよ。」

「少しおじさんのナイト(騎士)ね。期待してるわ。アリサはヒロシさんの何になればいいの?」

「そうだなあ。とりあえず傍にいてくれればいいよ。危険な狼の期待に応えることはないからね。ずっとこのままでいられればいいんだけどなあ。」

「うふふ。ヒロシさん子供みたいね。アリサよりずっと子供みたい。だから年齢差を全然感じないのね。きっと。」

そんな風にいわれると、急にアリサがおねいさんっぽく映るから不思議なものだ。


「さて、早朝から温泉は入れるみたいだから、体も気分も起こしてこない?」

「ウン。」とうなずくアリサ。

部屋を出て温泉に向かう二人。もちろん仲良く手をつないだままで。

朝の静けさも、鳥のさえずりも熱い二人を見送っていた。



朝食は食堂で和食膳。朝から大きな焼き魚が付いてた。

「昨晩はかなり激しい運動をしたので、たっぷり栄養補給をしなきゃな。」

「アリサは朝からこんな大きな魚なんて食べられないわ。」

「でもお腹はすいてるんじゃない?昨日はあんなに激しかったし。」

「うふふ。でもさあヒロシさん、他の人みんな、私たちのことどう見てるのかしらね。」

「知らない人たちは父親と娘だと思ってるよ。だから、手をつないで歩いてるところを見かけた人はきっと、『仲のいい親子ね』なんて言ってるかもしれないよ。」

「うふふ。さあ、いただきましょう。ご飯入れてあげるね。」

膳の上におかれている茶碗をアリサに渡す。賄いまでしてくれるなんて、ちょっと気分がいい。基本的にボクは毎日朝食を食べるタイプなので、朝からホカホカのゴハンはありがたい。いつもはパンだったりレンジで温めなおしたものだったり、喫茶店でモーニングだったりと味気ない。そういえば、朝昼兼用のたこ焼きなんてのもあったっけな。

美味しい魚と佃煮があれば、ゴハンはすすむ。二回もおかわりをしたおかげで満腹だ。アリサはゴハンこそ一膳だったが、驚いていた魚は全部食べきった。

「こんなに大きな魚を一人で食べたのは初めてよ。」

「後でボクがその魚を食べた可愛い女の子を食べることになるかもね。だからいい肉付きになっておいてね。」

「美味しく食べてね。」

アリサもこのような返しができるようになったかと思った。なんとなく上手にあしらわれているようだ。彼女はボクとの会話のやりとりでも、明らかに成長している。


食後のお茶をすすりながら今日の相談を始める。

「さて、今日はどのように過ごしましょう。まさか一日中、抱き合ってるわけにもいきません。ボクは死んでしまいます。夜はご奉仕させていただきますので、明るいうちはご容赦下さい。」

「ええ?まるでアリサがヒロシさんを従えてるみたいじゃない。逆よ。」

ちょっとふくれっつらになった顔も可愛い。

「ボクは今キミにメロメロなんだから、ボクがアリサの恋の奴隷になっていることは確かだよ。まあ、それはいいとして、どうする?」

ちょっと嬉しそうにニコニコして、ボクに満面の笑みを投げかけてくれる。

「どんなプランをお持ちですか、先生。」

「いきなり先生になっちゃったな。一つは一日中ここで温泉三昧。まだ館内でも訪問してないところもあるんじゃない。二つ目は市内観光。こじんまりしたところが二、三箇所あるみたいだよ。三つ目はボクの趣味の動物園見学。ちょっと遠いけどね。最後の四つ目はレンタカーを借りてドライブ。海でも見に行きますか。っていうのでいかがでしょうか、我が愛しのお嬢様。」

「ホントヒロシさん凄い。ちゃーんと用意してくれてるのね。アリサがヒロシさんのそういうところにどんどん惹かれてってるのわからない?そういう包容力って若い子たちにはない魅力よ。素敵なオジサマ。」

そう言ってボクにウインクを送るアリサ。大衆の面前ではさすがにそれは少し恥ずかしい。

「そうねえ。女の子の定番で、海が見たいわっていうのはどう?」

「じゃあ、行くあてもなくレンタカーを借りますか。」



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