第40話 憤怒を包む純粋な愛
刀を抜き、風を纏い凄まじい速度で漆黒の刀をエリザベス一世に向けて迫った役小角は、刀の先から雷を放ちエリザベス一世を攻撃した。
エリザベス一世は、それに対し黄金の粒子を纏ったレイピアで雷を弾き、強く役小角を睨みつけ、レイピアで役小角の刀を鋭く突いた。
役小角が、エリザベス一世のレイピアの一撃に怯むと、エリザベス一世はそのまま間合いを詰め、尋常では無い速度で役小角の体をレイピアで連続突きした。
「ぐあああああッ!」
役小角が、その圧倒的な速度と腕力に為す術も無く悶えると、エリザベス一世は空に浮かぶ巨大な太陽から無数の熱線を放ち役小角の体を貫いた。
「うああああああッ!」
役小角は、先程と同じ様に体に大穴が開くと苦しみ藻掻いて、眼前の敵を睨んだ。
そして、クリエイターにかけられた言葉を思い出し、胸のグロリオサの花が深紅の輝きを放った。すると、役小角の体に空いた穴が見る見る塞がり、シンプルだった武装がダイヤモンドの様な角を作って再生し、漆黒の宝石と呼ぶに相応しい外見に変わった。そして、役小角は、強く刀を握るとその刀に雷を纏わせた。さらに、刀と同じ大きさの氷柱を幾つも出現させ、エリザベス一世に高速で射出した。だが、エリザベス一世は、それを高速で切り刻み、無力化した。そして、
「もう、貴方の力の程はわかっていますよ?
早く、降参なさい?」
と、我儘な子供を諭す様な口調で言うと、巨大な太陽から熱線を放ち、檻の様に役小角の周りを囲んだ。
そして、エリザベス一世は、役小角に近づくと熱線の隙間からレイピアを突き刺して、役小角を脅した。エリザベス一世は、本気で役小角を貫くつもりだったが、役小角の武装が先程とは比べ物にならない程に硬質化していたので、レイピアが、刺さらなかった。
エリザベスが、それに驚くと役小角は、身体中から強力な冷気を放ち、体を霜で覆うと熱線を殴りつける様にエリザベス一世の顔の横に拳を突き出した。当然の様に熱線に貫かれ焼かれる役小角の腕を見て、エリザベス一世は困惑し
「何をしているの?
気でも狂った?」
と、冷たく言い放った。すると、役小角は更に強力な冷気を放ち、腕を氷で覆って再生させ、エリザベス一世に対して笑いかけた。
「気など狂っていないさ
俺は、今怒っているんだ
自分自身にな
良いから少し離れて見ていてくれ」
役小角は、そう言うと、今度は頭を貫く様に熱線へ入り、体が串刺しになった。エリザベス一世は、もう訳がわからずに恐ろしくなり、熱線を解除した。すると、役小角の体が氷で覆われ、武装が常に冷気を放つ様に変化し、傷を再生した。すると、役小角は巨大な太陽を分厚い雲で隠し、豪雨を降らせた。
エリザベス一世が、それに驚き熱線を放って雲を払おうとした。だが、熱線は雲に穴を開けるだけで払う事は出来なかった。役小角は、放たれた熱線に対し、手を伸ばし強力な冷気を放った。すると、熱線が氷に変わりそれを皮切りに豪雨が雪へと変わった。
凍てつく風が一陣吹き荒び、役小角が刀を武装と同じ様な素材へ変化させると
「なあ、見たか俺の怒りを
俺は仲間を救え無かった自分に対する憤怒でいっぱいだ
この渇きが俺を強くする
もう、俺はお前何かに負けはしない!」
と、言うとエリザベス一世は、
「貴方は、そんなにおぞましい姿になってまで、目的を果たしたいと願うのですね
ですが、私は目の前の貴方がどんなに哀れでも、貴方を倒します
それが私の正義よ」
と、強い口調で意思表示した。すると、役小角は、
「どれほど美しく着飾っても
最終的に勝った方の正義だ
強い信念や誇りは弱者が抱いても何の意味もない
だから、俺はこの溢れ出る力でお前を滅ぼす
それが、俺の正義だッ!」
役小角が、そう言って刀を振り上げ役小角の身長程の大きさの竜巻を四つ発生させると、刀をエリザベス一世の方へと振り下ろし、竜巻を飛ばした。それに対しエリザベス一世は、それを雲の向こうに浮かぶ巨大な太陽の熱線でかき消した。竜巻が消えると、両者息を合わせたように同時に踏み出し、眼前の敵を一閃する。二つの剣は火花を発してぶつかり合い、お互いに雄叫びを挙げながら幾度も剣を交えた。
「「うおおおおおおおおおッ!」」
エリザベス一世は、振り下ろす剣の向きを突如変え、役小角の腹を突き刺す構えをして鋭く突いた。だが、役小角は、それを武装で弾きエリザベス一世の左手肩に刀を振り下ろす。エリザベス一世は、黄金の粒子を出して刀の威力を殺し、骨で止めると黄金の粒子を肩と右手に収束させ、右腕で刀の峰を掴むと、肩を支点にして役小角の刀をへし折った。その時にエリザベス一世は、レイピアを落とし、左手で役小角の顔を殴りつけた。すると、役小角はそれを首を傾けることで避け、エリザベス一世の腹に右手で思い切り殴る。だが、エリザベス一世は、それを腹で受け止め、その事に驚いた役小角の顎を右手で思い切りアッパーした。
「沈みなさいッ!」
勇ましい顔と声でエリザベス一世が、そう叫ぶと役小角は、軽い脳震盪で一瞬固まった。すると、そこでエリザベス一世は、役小角の足を思い切り踏みつけ、顔にラッシュを食らわせると、トドメに役小角の横腹を思い切り蹴って吹き飛ばした。そして、ここぞとばかりに巨大な太陽から熱線を大量に照射し、雲を晴らすとレイピアを拾い上げ、吹き飛んだ役小角の元へ走り、役小角の首にレイピアを突き刺した。
「貴方は、ここで死ぬの
それは、私がここで宣言した確定事項よ
二度と立ち上がれぬように、その魂までに我が勝利を刻み付けるッ!」
エリザベス一世は、そう言うと倒れた役小角を幾度も踏みつけ、蹴りつけると巨大な太陽から熱線を放ち、役小角の足を切断した。
既に息絶えた役小角は、ボロボロの体でただ地に伏すのみで、悶える事すらしなかった。
エリザベス一世は、ハンカチを取り出し血塗れの顔と手を拭うと役小角に背を向けて船内へと向かった。
疲れ切ったエリザベス一世は、レイピアを杖にしながら歩みを進めるが、途中で膝を着いた。
「女王陛下!」
それを急いでドレイクが助け起こすと、エリザベス一世は、微笑んで
「ありがとう
私の海賊さん
少し、疲れてしまったわ
もう少し、こうしていて貰える?」
と、優しく言った。すると、ドレイクは、
「少し無理が過ぎますよ
ごゆっくりおやすみください」
と、微笑んだ。
エリザベス一世は、少し安心し最後にもう一度役小角の死体の方へ目をやると、エリザベス一世は、死体から浮かび上がる魔法陣を見て立ち上がった。
「ドレイク、まだ見たいよ
見なさい」
すぐ様、先程までの強気な王女に戻りレイピアを構えるエリザベス一世だったが、煙の中祈る人の紋章が浮かび上がった役小角は、己の体を掻きむしるように自傷していた。
エリザベス一世がそれを見て、今まで戦っていた相手の異常に少し恐怖すると、役小角は、泣きそうな声で
「うああぁぁっ!
逃げろ、逃げてくれ
怒りで我を忘れそうだ!」
と、叫んだ。すると、それを聞いたエリザベス一世は、役小角に近づき役小角を抱きしめた。役小角は、それに困惑し
「何を...している」
と、尋ねると、エリザベス一世は、
「貴方の苦しみを放置するのは、騎士道精神に反します
楽にしてください
大丈夫、貴方は良く戦いました」
と、役小角を慰めた。
すると、役小角は血の涙を流しながら
「離れろ!
お前をこのまま殺すのは、本意じゃない!」
と、言うと、エリザベス一世は、
「離れません
私には、誰も命じる事は出来ませんよ?
良いから落ち着きなさい」
と、言って聖遺物を輝かせ黄金の粒子で役小角を包ながらそう言った。
すると、役小角の武装が少しずつ剥がれていった。役小角は、そのまま力尽きて眠った。
すると、エリザベス一世は、役小角を横にして寝かせると
「セシル、彼女達を解放しなさい」
と、言った。するとセシルは
「かしこまりました女王陛下」
と、言って即座に前鬼達をエリザベス一世の前に出現させた。
三人が現れるとエリザベス一世は、前鬼達の方を向き
「貴方の神と話をさせなさい」
と、強気な口調で言った。
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