第35話 怠惰な悪魔

グラスホッパーが、海賊旗の掲げられた戦艦に向かった後、指示を出された残りのメンバーは、


「取り敢えず、残りのメンバーは、船で待機、俺達がピンチになったら援護してくれ」


と、キング・メイソンが指示を出し、クリエイターに指名されたメンバーは、ハウニブに搭載されたホバーバイクに乗って適当な戦艦に乗り込む事にした。


まずは、ガーダーの場合


ガーダーは、ホバーバイクで戦艦に乗り込むと、まずは、機械の兵士が集中して狙っている敵を探した。

すると案の定、機械の兵士が、集中している所があり、そこに向かうと、そこには、他の敵と同じ様な素材の鎧だが、兜に三日月をあしらった、日本の甲冑の様な見た目の黒い鎧を着た男が、日本刀を持って、機械の兵士達を攻撃していた。


「なんなんだ此奴らは、

煉獄の兵士は何人いんだ?」


そうやって、愚痴を零しながらも、凄まじい勢いで機械の兵士達を攻撃していく男にガーダーは、近寄ると、鎧の紫色に輝く部分から長方形のエネルギーシールドを四枚発生させ、日本刀を持った男を囲んだ。


すると、男は驚き、その隙に機械の兵士が、一斉に日本刀を持った男の上からトマホークを投げつけた。ガーダーは、それを見てやったと思ったが、日本刀を持った男は黒い稲妻となって空を飛び、まるで荒れ狂う龍の様に機械の兵士を破壊しながらエネルギーシールドの外に出た。

ガーダーは、それに驚くと、日本刀を持った男は、ガーダーを睨みつけ、


「なんだ、今のは?

てめえがやったのか?

お前は、他の奴らとは違うようだな

おもしれえ、来いよ

この奥州筆頭ッ!

伊達政宗が、相手をしてやる!」


と、叫んだ。

それを聞いたガーダーは、エネルギーシールドを操り、手裏剣の様に伊達政宗を切り裂こうとしたが、伊達政宗は、四枚のエネルギーシールドを軽く刀であしらいながら、


「おい、無視か?

てめえ、いい度胸してんなァ!」


と、言って黒い稲妻になり、ガーダーに向かって突進した。ガーダーは、能力で自分にシールドを張り、黒い稲妻を通過させた。

ガーダーに突進するはずが、通りすぎた伊達政宗は、驚いて人間の姿に戻った。

すると、その瞬間、ガーダーは、シールドを解除して伊達政宗にハルバードで斬りかかった。すると、伊達政宗は、それを刀で受け止め、ハルバードを押し返すと、瞬時にガーダーの左手を切りつけた。だが、ガーダーの甲冑に刀が弾かれ、ガーダーは、伊達政宗に突進した。ガーダーは、伊達政宗の懐に入ると、伊達政宗の顎にアッパーを食らわせ、怯ませると、続けて足払いをかけて、転ばせ、ハルバードの柄の後ろ端で伊達政宗の喉を突くと、出現させていたエネルギーシールドを一度解除し、新しく伊達政宗を上から圧する様にエネルギーシールドを出現させた。ガーダーは、伊達政宗を上から押さえつけると、ハルバードで伊達政宗の右上を切り裂いた。

ガーダーのハルバードは、ギミックで自分で武装から出現したエネルギーシールドを通過する。


「うああああああああッ!」


腕を切り落とされた伊達政宗は、絶叫し黒い稲妻になって、エネルギーシールドから抜け出し、再びガーダーに突進した。だが、ガーダーは、自分にシールドを張って、伊達政宗を通過させた。そして、伊達政宗が、一度目の失敗を元にガーダーを通過した後、上空に上がり、ガーダーの動きを待ったが、ガーダーは、出していたエネルギーシールドを解除し、黒い稲妻を閉じ込める様に、ピラミッド型にエネルギーシールドを出現させ、伊達政宗を閉じ込めた。


「ちくしょうッ!

出しやがれッ!

てめえ!

いい加減にしろよ!

ぶっ殺してやる!」


伊達政宗が、暴言を吐きながら、黒い稲妻となってエネルギーシールドの中で暴れ回っていると、ガーダーは、それを笑いながら、


「一度、それを解除したらどうだ?」


と、伊達政宗に言った。

だが、伊達政宗は、それに対し


「あん?

そんな手には乗らねえぞ!

絶対に解除してやんねえよ!」


と、言うとガーダーは、さらに笑って


「そうか、心配して言ったのに」


と、言いながらエネルギーシールドを操作して、伊達政宗をエネルギーシールドごと海に放り込んだ。放り込まれる途中、伊達政宗は、


「は?

てめえ、何言ってんだ?」


と、言っていたが、海中でエネルギーシールドが、解除されると


「うあああああああああッ!」


体を構成する稲妻が、海に散って行った伊達政宗が、絶叫した。

ガーダーは、それを見て腹を抱えて笑いながら伊達政宗が、散りきるのを待って、最後に残った聖遺物をエネルギーシールドで拾い上げてクリエイターに報告した。


「クリエイター、こちらガーダー

聖遺物を回収した」


と、ガーダーが言うと


「早いな

流石、対人戦最強能力者だ」


と、ガーダーを褒めた。

ガーダーは、それに照れながら


「良いから、聖遺物の解析を頼む」


と、言うと、クリエイターは、


「ああ、そうだったな

智慧ジュウホエ


と、言うと智慧ジュウホエは、嬉しそうに


了解ヤオミンバエ天帝シャンティー!」


と、言って聖遺物を解析した。


「解析完了です!

回収した聖遺物は、裏切りの毒杯ベネディクトゥス・グラス

能力は、

稲妻を操る能力です」


と、言うとガーダーは、


「やっと、皆みたいな攻撃手段が出来た」


と、言いながら聖遺物を武装の中に収容した。すると、クリエイターは、笑って


「君は今でも充分強いだろ」


と、笑った。

そんな会話をしていると、ガーダーは、足元に妙な違和感を思えた。


「ん?

なんだ、これ

何処で着いたんだ?」


ガーダーが、覚えた違和感は、足に何故か着いた大量の泥だった。


「なんだ?

どうかしたのか?」


と、クリエイターが、尋ねると

ガーダーは、


「いや、大した事じゃ無いんだが...」


と、言いかけて足元から体をドンドン這ってくる泥に驚き、


「うわっ!

なんだこれ!」


と、言いながらもがき、体にシールドを張って泥を落とした。すると、泥はシールドより少し多めの体積を包み込む様に増殖しガーダーに覆いかぶさると、そこへ敵の兵士が一斉にレーザー銃を連射した。

この船の兵士達は黒髭の船とは違い、アサルトライフル型が、標準装備で他にロケットランチャーや、戦場で戦うのにも関わらず、何故か迫撃砲まであった。

アサルトライフルから連射されるレーザーと、迫撃砲から放たれる爆炎が泥が砂になるまで浴びせられた。

だが、ガーダーはシールドを張っていて無傷だった。ガーダーは、エネルギーシールドを飛ばし兵士達を薙ぎ払うと、手から黒い稲妻を放ち、迫撃砲を破壊した。その後、黒い稲妻に変身し、甲板を暴れ回り兵士達を次々に焼き払って行くと、黒い稲妻の周りを砂がおおい、行く手を阻むと、海底から船を這う様に大量の泥が押し寄せ、ガーダーに押し寄せる。ガーダーは、シールドを張ろうと人間の姿に戻ると、その瞬間砂がガーダーの耳、鼻、口からガーダーの体内に侵入し、ガーダーの肺の中で動き回り、ガーダーの肺を二つとも破裂させた。


「あがっ!

うぁぁぁ、あぁ...」


突如、呼吸困難になり、パニック状態のガーダーを泥が覆いかぶさり、ガーダーを飲み込んで海中に引きずり下ろした。

ガーダーを纏った泥はガーダーが、深度5m程の深さまで沈むと、ガーダーから離れた。



「うああああああああッ!」


ガーダーは、屋敷の復活場所で復活するなり、悲鳴を挙げた。


「なんだったんだ

あれは!」


ガーダーが、叫ぶと屋敷の復活場所で聖と一緒に待っていたクリエイターは、


「敵の能力者は、伊達政宗だけじゃ無かったんだろう

すまないが、もう一度言ってくれ」


と、言うとガーダーは、


「何度戦ったって、あれには勝てないぞ!」


と、怒鳴った。

すると、クリエイターは、


「君なら、勝てるさ」


と、傍にいる聖の手を握りながら言うと、

ガーダーは、


「なんでそんな事が言える!」


と、怒鳴った。それに対し、クリエイターは、一度深呼吸をして


「君は、接近戦最強だと言っただろ

その君が聖遺物を手に入れて、稲妻を操ってる

もはや、君は無敵だ」


と、言うと、ガーダーは、


「だが、俺は、

君が、思う程...」


と、ガーダーが、言いかけると、クリエイターは、それを遮り


「良いか、よく聴け

僕が、君が強いと思えば君は強いんだよ

それは、評価では無く

僕の能力だからだ

だから、君は自分を信じろ

僕が、君を信じれば君は無敵だ

わかってると思うが、僕は君を信用して

もう一度行けと言ったんだ

なら、君は何だかわかるな?」


と、言うとガーダーは、それに笑って


「俺は、無敵だ」


と、言った。

すると、ガーダーの背中が輝き、呻きながら顔を苦痛に歪めて走る男の顔の紋章が飛び出すと、ガーダーの武装が、突如アンドロイドの様なSF使用の武装に変わり、数多くのギミックが施されると、クリエイターが、


「君は、その能力で外界との関係を絶った

人を恐れ、自分を恐れた君は、あらゆる害悪を遠ざけた、それは人として生きる上では死んでいるのと同義だ

君に与えた戒め恩恵で、僕の敵を屠り、

その怠惰の罪を僕の元で贖え」


と、言うとガーダーは、


「ああ、贖うさ

君の元で俺の怠惰をッ!」


と、言うとクリエイターは、グラスホッパーに連絡し、


「グラスホッパー、ガーダーを目的地に運べ」


と、言うと、突如現れたグラスホッパーが、


「了解」


と言い、ガーダーを元いた戦艦に戻した。


ガーダーを戦艦に戻した後、クリエイターは、聖に抱きつき


「はあ、はあ、

また、出来たぞ

あれで、ガーダーは大丈夫だよね!」


と、嬉しそうに聖に言うと、聖は、クリエイターの頭を撫でながら


「ええ、ええ、そうですとも

貴方のお陰で皆大丈夫です」


と、微笑んで言った。


ガーダーは、戦艦に戻ると武装のギミックを発動しセンサーで敵の能力者の位置を特定した。そして、ガーダーは、武装に搭載されたトラクタービーム物体を引き寄せる光線で、その能力者を捉え、甲板に引きづり出した。引きづり出された能力者は驚き、自分の周りに泥を纏わせながら


「やあ、驚いたな

どうやって私の場所を特定したんだ?」


と、言うとガーダーは、


「俺が授かった戒め恩恵は、数多くの発明で人類を堕落させる悪魔 ベルフェゴールの力だ

俺は、体を動かさずに何だって出来る

わかっただろう?

なら、俺の贖いの糧となれッ!」


そう言って、ガーダーは、エネルギーシールドを敵の体に突き刺さる様に出現させ、敵の体を三等分にした。だが、敵の体は泥となって崩れた。そのまま敵は姿を消すと泥を操り、ガーダーを飲み込んだ。すると、ガーダーは、武装に搭載されたギミックを発動し球状のシールドを作って泥を閉じ込めてそのままシールドを縮め、泥を消滅させた。だが、泥はガーダーの海底から船を這う様に供給される為、ガーダーの四方八方から襲いかかった。それを何処かに潜んでいる敵の能力者が、


「貴様は、色々便利な物を持っているようだが、私の前では無駄だよ

私は、どんなに戦略的に不利な状況でも諦めないで這い蹲う能力

大地を操る能力だからね

おっと、申し遅れていたね

私はホー・チ・ミン

英雄のなり損ないさ

気軽にホーおじさんバック・ホーとでも呼んでくれ」


と、言うとガーダーを泥で飲み込み海中に引きずり下ろそうとした。だが、ガーダーは、自分の周りを隙間無く囲む様に入口を付け、海に泥が排出される様に排水口が海へと向いた巨大なアルキメデスの螺旋粘性の富んだ流体の運搬に適したポンプを組み合わせた塔を作り、泥を全て海に捨てると、センサーでホーの居場所を突き止め、トラクタービームで引き寄せた。


「なんだと!?

そんな馬鹿げた物を用意していたとでも言うのか?」


と、ガーダーが出現させた装置に文句を言うと、


「ベルフェゴールの発明品は、全ての人間を堕落させる

俺の武装の発明品が対応出来ない状態など無い!」


と、言うとホーを自分の能力で作ったシールドの中に閉じ込めた。


「そのシールドは、外側からのあらゆる物理現象に干渉しない

同時にその中で起きた事は外界との関わりを持たない

つまり、お前はそこから出られない」


と、ガーダーが、得意げに言うと、ホーは、笑って


「では、どうやって私を倒すのかな?

まさか、餓死するまで私を閉じ込めて置く気か?」


と、尋ねると


「いや、俺は怠惰だからな

いつまでも能力を発動する様な事はしない」


と、言うとガーダーは、ホーのシールドの中に黒い稲妻を発生させた。

すると、ホーは驚き、泥になってそれを防いだ。


「干渉出来るでは無いか!」


と、ホーが、怒鳴ると


「俺の能力に俺が干渉出来なかったらどうやって解除するんだ、マヌケな奴め」


と、言うと、ホーは落ち着き払って


「だが、君の稲妻でも私は倒せない様だな」


と、言った。しかし、ガーダーは、それを笑って


「だから、言ってるだろう

俺の武装の発明品が対応出来ない状態など無いと」


そう言って、ガーダーは、この武装最強のギミックを発動させる。


「怠惰の頂点は、無限の供給だ

俺の武装に付いた最強の武装

第二種永久機関マックスウェルズ・デーモンで、そのシールド内の気体の分子を速い物だけ、遅い物をこの装置の中へと仕分け続ける事によって一度の落雷で無限にシールド内の温度を上げられる

つまり、さっきの落雷が俺の最後の攻撃だ

お前は、俺が何もしなくてもそのシールド無いで勝手に蒸発するッ!」


と、言うとホーは、


「何だと?

そんな事が出来るはず無い!」


と、叫ぶと

ガーダーは、黙ってそれを笑い徐々に崩れていくホーの体を眺めていた。


ホーが蒸発すると、ガーダーは、シールド内の分子から、聖遺物を構成していた物だけを第二種永久機関マックスウェルズ・デーモンを利用して仕分け、聖遺物を元の状態に戻すとクリエイターに連絡し


「聖遺物を回収した」


と、言うと

クリエイターにそれを解析してもらい


「回収した聖遺物は、

聖人の労働ベネディクトゥス・ハンマー

能力は、大地を操る能力です」


と、教えられると、ガーダーは、ハウニブに連絡し


「敵将 伊達政宗

敵将 ホー・チ・ミンの両名

ガーダーが、討ち取った!」


と、得意げにに報告した。

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