第116話 【Side:ブレイブ】悪魔の契約

 目覚めたその場所は薄暗い部屋だった。


「あら、目覚めたようね。ウフフッ!」


 霞む視界には美人のお姉さんが俺を見下ろしていた。そうだ、一緒に飲んだ悪魔族のお姉さん。起きようとするがうまく起き上がれない。手足が拘束されていることに気付いた!


「これ何ですか!?」


 質問する俺に跨り、床ドンされる体勢を取るお姉さん。彼女は自分の唇を舌で舐め回すと、俺の耳元で囁く。


「ブレイブ、貴方はアタシのモノになるのよ。可愛がってあげるわ。」


 その言葉と吐息にゾクっとしてしまう。


「や、やめて下さい。俺はそんなの……」


「やめて下さいって……可愛いお願いをするのね?でもダメよ。貴方に選択権は無いの。ご覧なさい?」


 お姉さんの指差す方向には……壁に手足を大の字に鎖で縛られ、猿ぐつわをされたファナが居た!


「ファナッ!!」


 ファナは必死にもがくがどうにもならなかった。


「ブレイブ、この美しい容姿の貴方はアタシの玩具になるの。そうすればあの仔猫ちゃんは見逃してあげるわ。悪い話じゃないわよね?」


 信用していいのか!?いま俺もファナも抵抗できない状態で、逆らえば二人とも殺されるかもしれない。それなら俺が犠牲になれば……ファナは助かるかもしれない。


「分かった。俺ひとりでいいなら。先にファナを解放してくれ。それが条件だ。」


 お姉さんが手を叩くと部屋に半魚人が入ってくる。半魚人はファナの鼻をガーゼで押さえると、ファナは暴れた後にグッタリとする。


「ファナに何をした!!」


「眠らせただけよ。大事な人質なんだから手荒なマネはしないわよ。さて……アタシの奴隷となると言いなさい。約束が先。そうすればあの子は解放されるわ。それに、もういいんじゃないかしら?お仲間はオネンネしてる訳だし……ぼうやはもう強がらなくていいのよ。本当は臆病で卑屈で情けないのよね?アタシには分かるの。薄っぺらな勇気に透けて見えるぼうやの本質は……『マゾヒスト』。さぁ、本当のアナタをアタシにさらけ出しなさい。可愛がって……あ・げ・る。」


 悪魔の女は動けない俺の目の前で、俺の髪を掴み自分の目線まで俺の頭を引き寄せ、鋭い眼光で俺を見下す。


「さぁ、さっきの答えを聞かせなさい。アタシの奴隷になると言うのよ。10秒だけ待ってあげる。言えなかったら11秒後にあのメス猫は死ぬ。10、9、8、7……」


 10秒!?


「そんな、待って!早いって!!」


 非情な悪魔のカウントは止まらない!


「6、5、4、3……」


 半魚人はファナの首筋に短剣を突きつける!


 言わなきゃ!ファナを救うには俺がこの悪魔族の女の奴隷になるしかないんだ!!ただ1秒あれば言える、言うんだブレイブッ!!!


「2、1……」


 口が震えてうまく言葉が出ない。息がうまくできない。


「俺ブレイブは、ハァハァ……あなたの……ゲホッゲホッ、あなたの……えっと……」


 そういえばこの悪魔の名前を知らない。


「フフッ、いい子ね。アタシの名は『レオナール』よ。さ、続けなさい。」


「俺ブレイブは、貴女レオナールのど……奴隷になります。」


 俺の髪を握るレオナールは手を放し、高らかに笑う。


「言い忘れたけど〜、悪魔族との奴隷契約は魂の契約。永劫の契約であり、アタシの痛みはぼうやの痛みに、あり得ないことだけど、アタシの死はぼうやの死になるわ。つまり、ぼうやはアタシをあらゆるモノから守る必要があるの。そして、主人の命令は絶対。逆らえば地獄の苦しみに襲われる。でも……マゾヒストのぼうやにはご褒美かしら?ウフフッ!それでも逆らうのなら主人は奴隷の魂を終わらせることができる。奴隷の魂は粉々に砕け散り……消滅するの。ぼうやの生死はアタシが握っていることをよーく覚えておきなさい。」


 そ、そんな!?奴隷になるといっても口約束だけだと高をくくっていたが、とんでもない!今更クーリングオフもできそうにない。


 いや、そんな呪いのような契約だって解除方法はあるハズだ。そうだ、アリスから勇者クリスティーナを介し氷剣スノーホワイトに助力賜った時のように、精霊王にこの悪魔の契約を解除してもらえるのではと俺は考えた。大丈夫、今はファナを救うのが先決だ。


「はい、分かりました。」


「よろしい。では、ぼうやに命令よ。一緒に居た黒髪のハーフダークエルフの女を連れてきなさい。」


 全く予想もしてなかった言葉に俺は驚愕する。よりによってアリスを連れてこいだって!?


「何でアリスを!?」


「アリスって言うのね、あの娘。可愛い名前ね。アリスのことが好きなの?」


 ねっとりとした好奇の眼差しを向けてくる。


「そんなんじゃないです!」


「あらあら〜、それならアリスを連れて来られるわよね?じゃあ、あの仔猫ちゃんと引き換えね。」


「何を言ってるんだよ、約束が違う!!」


 レオナールはクスクスと笑う。


「見たいのよ。ぼうやがこの仔猫ちゃんとアリスのどっちを選び、どっちを見捨てるのかをね。楽しみだわ〜。ウフフッ!」


 俺は目の前が真っ暗になった……


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


酒は飲んでも飲まれるな!を何度繰り返せば気が済むのか、この二人は~。(~へ~;)

大切なことなので聞いてください。日本でのお酒は20歳になってからですよー!!


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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