第86話 【Side:ステラ】精霊樹の滝
「うわ、凄い光景だねー!!」
わたしは精霊樹の麓にある展望台から更に進み、ぐるっと精霊樹を回るとそれまで見えなかった、天から流れ落ちる大量の水流……壮大な滝がそこにはあった!
よく分からないけど、数百mの高さから降り注いでると思われる。こんな絶景な癒しスポットが街中にあるなんて感動モノだよ!
「あ、さっきのエルフのお姉さん?」
「アレックス、また会ったね〜!」
嘘。
何か気になって後を付けていたのだ。
「すっごい滝だね。こんなの見たことないよ!」
「そうだね。お姉さんも初めてなの?」
ほう、この子も初めて見たのか。ってことは……
「アレックスはこの王都の人じゃないの?」
「うん。お姉さんも?」
わたし達はお互いに笑う……何処かぎこちなく。
「奇遇だね、初めて同士なんて。あと、ステラでいいよ。」
「ステラ……数多輝く夜空の星々のような、キラキラした明るい性格そのものだね。それに可愛い名前だと思うよ。」
な、なんて?今までそんな褒め言葉を言われたことないよ!何て素直な子なんだろう。キミのが可愛いよ〜!!
「ありがとう。でも年上をからかうものじゃないよ!年はいくつなの?」
「26歳です。」
「え?」
聞き間違いかな?16歳……って言ったのかな?
「16歳?」
アレックスは口を押さえる。
「うん、16歳だよ。何歳って聞こえたの?」
「26って。聞き間違えたみたい、ゴメンゴメン!わたしも同じ16歳だよ。奇遇だね〜!」
「え?エルフで16歳?」
あれ?エルフって……わたし位だと何歳が妥当なんだ??デネブは300歳超えているから、16歳は変なのか!?
「いやいや、16歳な訳ないよね!216歳だし!!最近、滑舌が悪くてさー。あはは。」
「『わたしも同じ』って言ったような……」
わたしそんなこと言ったの?覚えてない。何か同い年だから嬉しくなって自然に口から出たのか!?
「そんなことより、これからどうするの?」
とにかく誤魔化す!話を逸らす!!
「これから……あの滝の水を汲みに行きたいんだ。」
「どうして?」
アレックスは少し考えてから答える。
「その……えっと……」
「ごめん、やっぱいいや。わたしが汲んできてあげようか?」
言い辛いことなんだろう。わたしが質問したせいでアレックスに嘘を付かせたくなかった。誰でも秘密はあるしね。
「自分で汲まないと意味が無いんだ。だから気持ちだけ貰うよ、ステラ。」
それは本当なんだろう。
「なら、サポート位ならしてもいいよね?オーケィ?」
「でも、悪いよ。」
わたしはアレックスの唇に人差し指を当てる。
「もう出航してるんだよ、海原に。あとはこの船長に任せなさい!」
「え?ステラって船長なの?」
このノリはイマイチかー。なるほど、なるほど。
その問いは敢えて無視して、アレックスの手を引いて駆け出す。
◇◇◇
「滝の水、汲めて良かったね。」
滝から流れ落ちる水はとても澄んでいて手にすくってみるとキラキラと輝いていた。そのまま口に含んでみると、あの巨木がしっかり濾過してくれているんだろう。とても口当たり良い軟水だ。
「ダメだ……。」
アレックスは同じように手にすくった水をそう言うと天を仰ぐ。
「ダメってどういうこと?」
アレックスは遥か上を指差した。
「滝の上の方は水の色が違うよね。」
確かに、滝の上の方は青色が濃い。光の加減かとも思ったけど……何か違うのかな?
「滝の水には精霊樹の霊気が宿ってるらしいんだけど、下に落ちるにつれて色が薄くなってる。霊気が空中で抜けているんだと思うんだ。源流の水じゃないと……ダメなのかも。」
そういうことか。しかし、源流ってことはあの高さまで行かないといけないよね。
「じゃ、あそこまで行くかー。」
「え?」
アレックスは戸惑って言葉を漏らす。
「行くしかないでしょ?」
「行けるの?」
わたしは首を横に振る。
「行けるかじゃなく……行こう!アレックス。」
わたしは彼の手を握り、引き寄せる。
「イイって言うまで目を閉じて。約束だよ。」
目を閉じて頷くアレックス。
「いくよ、ランタン。『マジカルコンバート』!」
ポケットから出てきたジャック・オー・ランタンが魔力を吸い込み、そして吐き出した魔力を指のリングに注ぎ込む。
「もう大丈夫かなー?行っちゃえ、『マジカル☆バースト』!」
リングから解放された魔力が細かな星々の流れとなり、その姿を魔法少女へと変える。
「あ、服が白い!ちゃんと変身できたっ!!」
ゴーファンでは黒い魔法少女姿になって困惑したが、今は本来の純白天使な姿で安心し感動した!
前にデネブが言っていた、ゴーファンでは魔獣王の魔力が強いから黒くなったのでは?という仮説が正しかったってことだよね!
「どうしたの?目を開けていいの?」
「まだダメだよ。ちょっと揺れるけど我慢しててね!」
アレックスをお姫様抱っこすると、そのまま走り出し……飛ぶ!
厳密には魔法少女は飛行ができない。背中に翼はあるけど飾りなのだ。なので、馬鹿でかい精霊樹を飛びながら駆け上がるしかない!
アレックスはちゃんと約束を守ってくれていたが、あまりの振動に悲鳴を上げ、わたしに抱きつく。ソコは〜……ま、いっか。
2回ほど滑落したけど、何とか滝の源流まで登ることができた。やればできるってことだね!
◇◇◇
「アレックス。」
反応してようやく目を覚ましたアレックスは辺りを見回す。
「ステラ、ここは?」
洞窟のような薄暗い場所だが、横には激しい川のように大量の青い水が流れていた。
「ようこそ、精霊樹の滝の源流へ。」
「凄い!本当に精霊樹の霊気溢れる源流だ!!」
気を失ったアレックスが目覚めた時には魔法少女の変身は解けていた。まぁ、源流に着いたら変身解除するつもりだったケド。見られたら大変だからね。
「さぁ、お好きなだけどうぞ!」
わたし達は鮮やかに光る青い源流を存分に堪能した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます