第42話 【Side:ステラ】淫魔と夜の帝王と好色亀と

「あれ……燃えてるのに熱くない??」


 重厚なマントが燃え尽くすとその激しい炎は消えた。


「これは一体?」


 その場にいた全員が発火現象に疑問を抱くが、ジオが語り出す。


「そういえば……魔界亀レッド・ヘルタートルは好色の化身であり、自らの美学を邪魔するものを排除すると聞いたことがある。それがあの炎だったのかもしれない。」


 確かに、最初に発動した時に着ていた衣服や防具のすべてが無くなり、今まさに身体を隠すためのマントを纏った途端に発火したことを考えると合点がいく。


「あ、ゴールドさんの大事なマントが。ごめんなさい!お父様の形見が……燃えちゃった。」


「君のせいではないだろう?突然で驚いたが、これもイヤラシイ魔界亀の仕業みたいだしな。しかし、これではキミの身体を隠すことが出来ないな。何とかしないと、また変なのが寄ってくるぞ。アレのように。」


 指差す方にはマジマジと見つめるジオと、その後方の観客席から身を乗り出しマジマジと見つめるモーリスの姿があった。


「(変態が増えてる!!)」


 モーリスは遅ればせながら叫ぶ。


「ステラちゃん、おめでとうー!素敵だよ〜!!(その姿っ!!!)」


 モーリスの隣にはデネブの姿もあった。


「いや、まさか勝ち残るとは思わなかったよ。スゴイスゴイ!」


 呑気に嫌なことを言いデネブがステラに何かを投げる。キラキラとしたソレをステラはキャッチする。


「これって……いま渡すかなぁ〜。」


 苦笑いを浮かべてしまうわたし。


 あらためて半裸に近い身体を隠しながらジオにはジト目を送り、モーリスとデネブにはとりあえずVサインで返すステラ。


「二人とも、ありがとうー!」


 ジト目を避けるように物陰に隠れていたジオからも何故か賛辞が送られる。


「ステラちゃん、おめでとう〜!」


「あ、ありがとうございます……ジオさん。貴方も、おめでとうございます。」


 賛辞を返され、嬉しさに駆け寄るジオ。そんなジオの後頭部に空き瓶が当たる!


「わたしのステラちゃんに近づくな、変態!!」


 モーリスが罵倒する。


「キミは確か……そう、バスト96、ウエスト58、ヒップ92のナイスバディで有名なサキュバスのモーリス。」


「そーですけど、何か?それより、ステラちゃんのキスを奪った上に、ストーキングするなんて許せません!」


「何故、サキュバスが私のステラに固執する?二人の愛について。」


「いや、ドレインされただけでしょ?貴方みたいな変質者に大事なステラちゃんは渡しません!」


「そうか『エナジードレイン』はキミの仕業か。まぁ、ステラの熱いヴェーゼを味わえたのだし、今更どうでもいいが。」


 空き瓶やゴミを手当たり次第に投げつけるモーリス。


「この場に立てないキミはその場から私とステラの仲睦まじい姿を見ているがいい。」


 空き瓶などを避けつつわたしに近づいてくるジオと、同じ速さで後ずさるわたし。


「ステラ、人気者だね!お互い生き残れて良かった良かった!!あの約束は守ってよね?」


「痛ったぁあぁーーー!!」


 キリコがわたしのお尻を叩いて言う。お尻に見事な紅葉が色付く。


 ここでアナウンスが流れる。


「お待たせしました。只今より表彰式を行いますので8名の勝者は表彰台までお集まりください。」


 8名は集合し表彰台に上がると、大きな声援が押し寄せる!!あらためて100名の中から勝ち残ったと実感する8名であった。


 遅れて表彰台に上がって来たのは『王宮武闘大会』の主催者である王宮騎士団の3長であった。


・王宮騎士団騎士団長ヴェイロン


・王宮騎士団魔法院長マビノギ


・王宮騎士団近衛隊長ゲシュタルト


 騎士団長ヴェイロンから言葉を賜る。


「8名の勝者よ、お前たちの戦いは見事であった!これからはその力を我等が王のために役立てよ。」


 次に、魔法院長マビノギから、8名それぞれに褒賞が与えられる。しばらくは不自由しない位の金貨と、騎士団小隊長クラスの勲章が手渡される。


 最後に近衛隊長ゲシュタルトから言葉を賜る。


「通例ではこれで表彰式は終わりだが、本日は勝者たるお前たちは我等が王に御目通りできることとなった!ありがたく思え!!」


 勝者たちは元より、会場全体から更に大きな歓声が上がる!


 わたしはキョトンとしながら周りを伺う。王様がどんな方かも知らないのでピンと来ないが、普通に考えてとても名誉なことなんだろうとは分かる。


「あの〜、王様にお会いする前に着替えてもいいですか?」


 ヴェイロンだけならまだしも、見知らぬ偉い方々の前なので下手に尋ねる。


「貴様、その姿は是非とも王に見せるが良い。レッド・ヘルタートル様の力を解放し身に纏うなどなかなか無いことだ。王もさぞお喜びになることだろう!」


 近衛隊長ゲシュタルトがそのまま謁見せよと命じてきた。


「(こ、この国の奴らはオカシイのばっかだ!!女子にこんな姿のままで居ろなんてどうかしてるよ!?)」


 どうせヴェイロンに言っても同じだろうと諦めムードで視線を向けるステラ。やはり無視だった。分かります。


 そこに助け船が入る。口火を開いたのは魔法院長マビノギであった。


「しかしゲシュタルト殿よ。人間のその貧相な姿を我らが王に晒すのは無礼に当たる。」


「ぬ!?では、どうしろと?」


 魔術に精通した魔法院長であるマビノギだからこその提案を行う。


「ひとまず盾を前段に戻しそう。王が望めばその時は再び次段に進めよう。」


 マビノギが真紅の盾に手をかざし詠唱を始めると盾が収縮を始める。と、同時に身体をかろうじて覆っていた真紅の縄も消え去り、文字通りの全裸になる!


「いやぁ〜!!」


「人間よ、これで身体を覆うがよい。」


 マビノギは大きめの布を手渡す。


「あ、ありがとうございます!」


 これでようやく裸体を隠すことができ、内心……大会を勝ち抜いたことなんかよりも嬉しかった!!


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


布切れの下は全裸!?どうなるステラ、ドッキドキ~♪(*´▽`*)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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