第32話 【Side:ステラ】託された秘策?仕上がりました!

「ステラちゃんは一生懸命やったんですから。わたしが慰めてあげます。」


 奴隷契約を破棄することに罪悪感を感じるわたしを後ろから抱きしめるモーリス。


「ありがとう、デネブちゃん、モーリスさ……ん!?ちょっと……」


 どさくさに紛れて、わたしの身体を弄るモーリス。


「モ、モーリスさん、どこ触ってるのよ〜〜〜!」


 実は、わたしがヴェイロンの奴隷になった辺りから、モーリスがベタベタしてくるようになった。最近、呼び方も「ステラさん」から「ステラちゃん」に変わった。


 朝寝坊なわたしをモーリスが起こす時には添い寝や覆い被さるようにしたり、着替えての時に近寄ってきたり。昨晩はお風呂にも一緒に入るようになった。


 中級魔法の壁に落ち込んでいたわたしに秘密の特訓をお風呂でやろうと誘ってきたモーリス。お風呂なら声が通るし湿度もあるから喉に優しいのかな?と思った。


 はじめに、どんな状況でも冷静さを保ち呪文詠唱できる特訓として、モーリスがいいと言うまで何があっても詠唱を続けるというもの。特訓が始まり呪文詠唱するわたし。そこにモーリスが洗剤で泡泡にした両手でわたしの身体を洗い始める。


「きゃっ!!ちょっとモーリス……何を!?あ、あれ……」


「ダメよ、ステラちゃん。集中して詠唱しなきゃ。ウフフ。」


 急に頭がグラ付き、もの凄い勢いで全身快楽が押し寄せる!見上げたモーリスの口元は三日月のような笑みが印象的で、わたしはそこで気を失った。


◇◇◇


 気づくとベッドで寝ていた。デネブの後ろについてきたモーリスの頭に大きなタンコブができていた。モーリスはお風呂での特訓はヤリ過ぎだったと謝罪した。頭のタンコブのことを聞くと、バツが悪そうにしてただ謝るだけだった。


 詳しい経緯は伝えられなかったが、モーリスの欲望はデネブの本気のゲンコツで打ち砕かれたらしく……すべては未遂に終わったそうな。


 皆さんお忘れだろうが、モーリスはサキュバス。夢魔や淫魔であり、肉体的・精神的な快楽と精を糧とする魔族の性が獲物の心と身体を欲するのは自然な欲求であり、悪意や殺意があった訳ではなかった。それはデネブが一番理解していたが、一応ケジメとしての鉄拳制裁だった。


 なお、何故モーリスがそんなことをしたのかと言えば、嬉し恥ずかしだけど、わたしのファンになったとのこと。


 きっかけは、あの誰もが畏怖する騎士団長ヴェイロンに毅然と向かい合い、奴隷に落ちてもなおめげることなく前に突き進む姿に、自分にはない強さに憧れたらしい。照れる!


 話を戻して、逃げるかどうかについてだけど、結論から言うと……保留となった。


 奴隷の脱走は重罪であり、捕まった奴隷を処刑される。それは主の威厳を保ち、他の奴隷が脱走しないための見せしめであり、暗黙のルールだった。


 勿論、デネブ達の協力があれば国外に脱出はできただろうけど、奴隷の脱走を許した主は後ろ指を指され無能と揶揄される。つまり騎士団長であるヴェイロンの名声や信用に傷が付くのは必至だった。


 命を失うかもしれないと分かりつつも、やはり恩義には報いたい。正直、気持ちが揺らいだ脱走案であり、デネブ達には本当に感謝しかないけど……一旦棚に置くことにした。


 しかし、王宮武闘大会に出場するとなるとやはりモヤモヤが晴れない。何のためにわたしが出場して上位を目指さなければならないのか?である。


「二人とも、聞きたいンだけどさ。ヴェイロンは何でわたしに大会上位を目指せって命令したのかな?」


「いじわる?」


「思いつきやノリ?」


「余興?」


 まともなプロファイルには至らなかった。


「んー、キモチワルイ。命令の理由が分からないのに命掛けろって言われても納得できないないんだよね。分かるよね、この気持ち。」


「気持ちは分かるけど、そんなのは普通のことなんだよ。奴隷は主から、兵士は上官から、国民は王から、例えば死地に赴けと言われれば行かなくてはならない。当たり前のことさ。オーケィ?」


 デネブが諭すように話す。なるほど、わたしが居た日本のような民主主義では無いようだ。基本ブラックな社会構造で上からの命令は絶対なのだろう。心の中では納得できなくてもやらざるを得ない。逆らえば罰が下される。


「イエスとは言えないな〜。何とかヴェイロンに理由を聞けないかなぁ?」


 あのヴェイロンに刃向かったデネブならと視線を投げ掛けるが、デネブからは良い反応は無かった。


 これ以上はデネブを困らせ迷惑をかけるだけだったので口をつぐむ。済まなそうにするデネブは、もう一つわたしに策を伝授する。そして、こちらも済まなそうにするモーリスからも、一つ策を伝授されたのだった。


 突貫工事だったけど特訓はひとまず終了。


 いよいよ、王宮武闘大会の開幕を迎える。


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


エッチなのはいけないと思います……が、ついつい。これでも抑えたつもりなんです。通報しないでくださいね。(;´∀`)


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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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