第29話 【Side:ステラ】劇団ドテカボチャの愛憎劇……開幕!
「お帰りなさいませ、御主人様。」
「あら、ようやくお帰り?何処で浮気してたのよ、ア・ナ・タ!」
モーリスが迎え、デネブが久々に顔を出したヴェイロンに浮気疑惑を投げかける。
「そんな!?ヒドイ!!わたしだけって言ってくれたのに、騙してたのね!?」
厨房から現れたわたしは震える手に肉切り包丁を握りしめていた。
「あら?愛人の癖におこがましいわね、この泥棒猫が!」
デネブと睨み合い互いに罵倒し合い、デネブもホウキを持ち出す。
「殺してやるっ!!」
「小娘が生意気ね。おいで!」
互いに肉切り包丁とホウキで打ち合う!若干動作がスローでぎこちない。
「やるわね、小娘。」
「アンタこそ。ババァの癖にしぶといね。」
不敵な笑みを浮かべるが、ババァ呼ばわりされたデネブが逆襲する!
「お姉様とお呼び!!」
「うるせぇ、クソババァ!!」
どう見ても見た目わたしが姉でデネブが妹で、知らない人が見たら姉妹喧嘩なのだが、それにしても容姿と言動から立場に違和感がある。まぁ、ここの客は事情が分かってるので特に文句は出ない。
デネブとわたしは互いに殺る気で、手に持つ肉切り包丁とホウキで襲いかかる!何故か更にスローモーションで。
「ヴェイロン様、出番ですよ。お願いします。」
モーリスがヴェイロンに促すが、面倒臭そうに言う。
「酒を。そして貴様が行け。」
注文のお酒をヴェイロンに出してから、モーリスが二人のところにスタスタと駆け寄る。
「やめてくださいっ!!」
二人の間に割って入るモーリスの腹と背中にわたし達のエモノが突き刺さる。
「きゃあ~!」
「モーリス、何故アナタが!?」
「ヴェイロンは?ヴェイロンはどうしたのよ??」
わたし達はモーリスに詰め寄る。
「ヴェイロン様は……来ない。ガクッ。」
致命傷に受け、息をひきとるモーリス。二人はモーリスの亡骸を抱きしめながら誓う。
「嗚呼、愛しのヴェイロン。伴侶であるわたしでもなく、この卑しい仔猫でもなく、アナタの愛が何処にもないなら、生きている意味がない〜。」
デネブが熱い想いを示すと、
「何故?その大きな手でわたしを抱きしめ、ときに野獣のように、ときに魔獣のようにわたしを弄んだアナタはもういない。なら、わたしはもういらないのねぇ~、愛しき人ぉ〜。」
わたしも負けじと儚さで消え入りそうに想いを示す。そして、自分の持つ凶器で自らを貫き、果てる。
「さようなら……ア・ナ・タ。」
「さようなら……ヴェイロン。」
こうして騎士ヴェイロンをめぐる3人の女の歌劇は幕を下ろした。かのように思えたが……
「あはは。死んだようだね……クソババァ!」
わたしは颯爽と立ち上がる。自ら胸を刺して自害したかのように見せかけていたが、先が鋭利ではない肉切り包丁を突き刺しても死ぬことはなかった。
「これで……ヴェイロンはわたしだけのモノ!キャ!!」
「そんなことだろうと思ったわさ、この発情猫娘!」
デネブも起き上がる。デネブも自ら貫いたフリをしていた。まぁ、ホウキで身体を貫ぬくほうが有り得ないのだが。
「こうなったら、ヴェイロンに誰を選ぶか決めさせるしかない!」
意見が一致した二人はカウンターでちびちび酒を飲むヴェイロンに詰め寄る。
「お待たせ〜!さぁ、どっちを選ぶのよ、アナタ!?」
「ヴェイロン〜、わたしだよね。」
流れる沈黙。ヴェイロンは酒を口に運ぶだけだった。
「さぁ、さぁ、さぁ!!」
こっちを見もしないヴェイロンの前に並び3人で問い詰める!ん?モーリス復活!?
「おーい、くだらない遊びはそんくらいにしてよぉ、注文してもいいかい?唐揚げとポテトフライ。あと、とりあえず酒3つ!」
一度注文が入ると、他からもここぞとばかりに注文の声が上がった。
わたしはハンバーグだけでなく、この世界の食材で簡単にできそうな居酒屋メニューをいくつか追加していた。
ここの住人にはどれも目新しいらしく好評だった。この異世界で食堂や居酒屋をやれば相当儲かるのでは?と本気で考えてしまう。
異世界の料理を調理をしながら、カウンターのヴェイロンに話しかける。
「森以来だね、ヴェイロン。あの時はわたしを助けてくれてありがとう!アナタはわたしの命の恩人だよ。」
わたしはヴェイロンに感謝の言葉を伝える。
そこにいた客たちがその言葉を聞いて拍手をする。だが……それは美談への拍手ではなかった。
「ヴェイロン様は格が違いすぎる!まさか相手から奴隷契約を申し出させるなんて!!しかも、あの『カボチャの悪魔』を!!!」
店内はお祭り騒ぎになった。今回はデネブもモーリスも接客でバタバタしていて止めることができなかった!!
イマイチ状況が理解できないわたしに、聞きつけたデネブが問う。
「ステラ……あなた、ヴェイロンの奴隷になりたかったの?そんな訳ないよね??もしやだけど『命の恩人』が最上級の奴隷契約の言葉って……知らないとか言わないよね??」
「えっ!?知らないですけど……ええぇっっ、奴隷??」
わたしは慌てふためいた!ただお礼を言っただけなのに、こんな大ごとになるなんて全く予想出来なかった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
茶番劇にお付き合いいただき、ありがとうございます。お代は結構です。('ω')ノ
お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、本当にお願いします~。m(_ _ )m
毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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