第27話 【Side:ステラ】カボチャの悪魔……その力、魔性
『王宮武闘大会』、それは毎年魔獣王の国ゴーファンで行われている生死を問わないバトルロイヤル。
参加者は強者総勢100名で、最後の10名になるまで戦いは続く。
生き残った10名には多額の褒賞と王宮軍での地位が与えられる。希望者は誰でも参加できる訳ではなく、強さや魔力などの厳格な基準を超えている、過去の実績、または、王宮軍中隊長以上の推薦が参加条件であった。
それほどこの大会に出場することは名誉なことであり、下克上で成り上がる機会でもあった。
戦いの火蓋が切られ、それぞれ目の前の敵に襲い掛かる!!
◇◇◇
「風よ水よ、我が身を守る盾となれ!『ハイドロエアウォール』」
体長3mに近いミノタウロスの斧による渾身の一撃を左腕の盾で受ける。
普通なら盾で相手の攻撃を受け流すところであり、圧倒的体格差がある相手の攻撃を受け止めるのは愚かな選択だろう。強烈な攻撃の重さに耐えきれず全身の骨が砕かれ絶命することだろう。
だかしかし、わたしは敢えてミノタウロスの攻撃を受け止めてみた、左腕の小さな赤い盾で。
「なんと、人間がミノタウロスの一撃を受け止めたーっ!あれは人間だが『カボチャの悪魔』と呼ばれるステラだぁぁぁーっ!!」
場内に響くアナウンスでわたしのことが取り上げられる。わたしは右手で手を振ってみせた。
重く強烈な衝撃を水と空気の層で吸収し抑え込むことでその凶暴な威力はおおかた緩和された。
自分より遥かに小さく小枝のような腕で、しかも人間の少女に必殺の一撃を受け止められるとは夢にも思わなかった様子。いい表情だ。ま、ミノタウロスの表情はよく分からないけど。
「土よ水よ、彼の者たちを飲み込め!『マッドフォール』!」
ミノタウロスを中心に半径2m程の大地がぬかるみ、その中にいたモンスター達は転倒したり身動きが取れなくなる。
「クソッ!!何なんだこの人間はぁ!?」
もがく程に自由を奪われていくミノタウロス達。少しは小馬鹿にした人間恐ろしさを痛感しただろうか?
「あんま殺したくないんだよね。リタイアしてくれると助かるなぁ。」
ステラは右手に持った……魔法の杖にはとても見えない短い木の棒、いわゆる『棍棒』を振り上げながらお願いする。
「ふざけんな!リタイアなんかできるか!!」
斧を投げつけるミノタウロス。続けて他のモンスター達も罵声と武器を投げつけてくる!
「ひどーい!せっかく提案してあげてるのにー!!」
わたしは当然知らなかったが、リタイアした者は卑怯者の烙印を押され、次回以降のこの大会への出場権が剥奪されるばかりか、数年間は国管理の奴隷として扱われることになる。つまり、参加者にとって死と同じくらい不名誉な選択だったのだ。それでも死ぬよりはいいと思うんだけどねぇ。
「動けないなど戦場では死に値する屈辱。その姿、儚く美しい。」
わたしは3歩4歩と後方に飛び退く。ぬかるみにいたモンスター達は頭など急所を撃たれて絶命する。そこには長い銃のような武器を持つ、ヴェイロン程ではないが2m近い細身長身の男性がこちらに銃口を向けていた。顔色は気分が悪いのか蒼白だ。
「魔法が得意なのかね、お嬢さん?2つの魔法を織り交ぜるとは……面白く美しい。何にせよ数を減らせて良かった。今は美しい貴女のハートを狙うのはやめておこう。ここではなく、今宵ベッドの上で是非。」
そう言うとステラに投げキッスをして去っていく。呆気にとられ呆然とするわたし。
「あ、名前聞くの忘れた!危ない人リストに入れとかないと。」
背筋の悪寒に耐えながらも……でも強いと感じた。
コロシアムの掲示板に目をやる。
【戦闘可能】56
【戦闘不能】44
参加者は全員、首に付けられた状態感知の首輪により、戦闘可否がリアルタイムで掲示板に表示される仕組みになっている。戦闘開始から約1時間、『戦闘可能』が残り10まであと46体倒す必要がある。思ったより早く終わるかなと思っていたけど、そうはならなかった。強者が残る後半からが長丁場であり本番だった。
「あれ?確か『南瓜亭(かぼちゃてい)』のステラだよね?アンタ酒場の店員でしょ?何でこの大会に出てるんだ?あぁ、それより、この前のアレ本当に美味かったよ!!何だっけ?『アンバー』??」
見覚えがある顔だった。何度か『南瓜亭』に来店してくれ、先日行った新メニュー発表会にも来ていたワーウルフ兄妹の妹『キリコ』だった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
王宮武闘大会開幕!亜人や魔族などモンスターに混じってただ一人参加する人間の女子高生。どうなるのん?(;´∀`)
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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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