第24話 【Side:ステラ】ちゃぶ台は返していこう!

 スケルトンズのところに戻ると談笑しながらエール酒をゴクゴクと旨そうに飲み干していた。なお、骸骨なので飲んだ酒はそのまま床にビシャビシャ溢れ落ちる。


「(うわ~……スケルトンがお酒飲む意味あるの?)」


 心の中で疑問に思う。


「大変お待たせしました。」


「ん?あぁ、遅かったねぇ。もう泣き止んだの?泣き声聞こえたよ~。辛かったねぇ。心配したよー。で、どうオトシマエつけるの?みんなにも聞こえるように話して。」


 詰め寄るスケルトンD。


「よく考えたら、わたし悪くありませんので。」


 スケルトンズは固まり、店内がザワつく。


「は?何言ってるの?さっき自分が全面的に悪いと認めたよね?責任取るために何でもするって言ったよね?」


 ちゃぶ台をひっくり返されて苛立つスケルトンD。他のスケルトン達もヤジを飛ばす。


「え?記憶にございません。証拠あるの?」


「いやいや、ここに居る全員聞いてるだろが!なぁ、お前等?』


 肯定派と否定派と反応はマチマチで、単に面白がっている野次馬が大半だった。


「チッ!でもよぅ、コイツ等をぶっ叩いたのは事実だぜ!!どう責任取るんだよ!?あぁ?」


 殴られたスケルトンA・Bと肩を組み凄むスケルトンD。ウンウン頷くスケルトンC。


「わたしはホウキで掃除をしてたら、勢いよくホウキにぶつかったのはそっちですよ?なので、わたしは悪くないんです。」


 店内はザワザワする。


「下手に出てればつけ上がりやがって、人間の分際でっ!!」


「それでも、わたしが悪いと言うなら……わたしを店長に預けたヴェイロンと、店長にも責任があるということになりますが……大丈夫ですかぁ?」


 明らかに顔色(?)が変わるスケルトンズ。


「汚いぞ、人間!!」


 そんな言葉しか出ないスケルトンD。


「まだ因縁をつけるのなら、ヴェイロンと店長とわたし3人で土下座しましょうか?ヴェイロン呼んできますよ?」


 騎士団長の名を出された時点でスケルトンズに勝ち目はなかった。


「勝負あったな。人間に負けるなんて恥ずかしいなぁ。オマエらこそその人間に謝ったらどうだい?」


 野次馬からスケルトンズに野次が飛ぶ。


「クッ……帰るぞ、お前ら!」


 スケルトンDが店を出て行く。金魚のフンのようにスケルトンA・B・Cも後を追う。最後に出ようとしたスケルトンCをわたしが捕まえると、モーリスが手を差し出して微笑む。


「お客様、お代をお願いします。」


 それ以来、スケルトンズは『南瓜亭』に顔を出すことはなかった。そして『南瓜亭』におかしな人間の店員がいるという噂が広まった。


◇◇◇


 街の様子を見てあらためて異世界に来たことを実感する。


「本当にモンスターばかりなんだね、この街は。」


 この国は『魔獣王』が統治する王国『ゴーファン』。大陸の東部に位置する大国のひとつ。


 領土内に例の『魔獣の森海』を有することと、国民が多種多様なモンスターで構成されていたことで『魔獣王の国ゴーファン』と呼ばれた。


 なお、街に住むことが許されるのは意思疎通ができるだけの知能があるかで判定される。知能の低い魔獣は街中にはいない。そのため一定の秩序はあるみたいだった。


 モンスターや亜人で賑わってる街中の景色はまさにハロウィンのよう。まぁ、ご厄介になっているデネブが魔女な姿で毎日ハロウィン感が否めない。


 重要なのはこの国ゴーファンのルール。スケルトン事件でデネブが教えてくれたのは『この国では非を認めたら終わり』ということ。認めたが最後、奴隷として絶対服従することになる。そして、奴隷を解放するヤツなんかいないのがこの国の国民性であった。


 あの時、デネブが教えてくれたのは『非を認めてはいけない』『認めたら無かったことにする』『理不尽でも非が無いことを押し通す』など立ち回り方を教えてくれた。そのお蔭でわたしはスケルトンの奴隷にならずに済んだ。


 次に、街の往来に人間は全くいなかった。というのも、この国では人間は奴隷に近い最下級種族で、基本は国の管理種族として労働力にされていた。


 ただ、人間にしてみれば他種族から命を守られるメリットがあったが、管理されているため自由は皆無とのこと。それを聞くと同じ人間としては凄くショックだった。


 そんな人間であるわたしがこの魔獣の国の酒場で店員として働くなんて普通では考えられないことらしい。数日後もすれば人間の店員など消息不明になる。何故なら、この街には食人を好む種族・モンスターが住んでいるから。国の管理から外れた人間に安全は無かった。


「コレがあれば安全なの?」


 コレとはデネブから渡されたペンダントで、ヴェイロンがわたしにとデネブに託したものだった。『騎士団長が認めた者』という証で、コレがあればこの国で困ることや襲われることはないだろうとのこと。それでもバレなければ問題ないと考える輩は多いらしく油断は禁物だとデネブに釘を刺される。


「開店まで時間あるし、散歩にいってくるね〜!」


 刺された釘はどこへやら。まだまだ知らないこの街を見て回るのはとても刺激的だった!街を歩き回っていると……みんなわたしに視線を向ける。はいはい、人間が通りますよ~!


 しばらく散策していると、街頭に貼られた貼り紙に目が止まる。


「王宮騎士団主催『王宮武闘大会』開催?どんなだか興味あるから観に行こうかな。あ、王宮騎士団主催ならヴェイロンに会えるかも。」


 ヴェイロンには助けてもらったお礼をしたかったし、単純にこの異世界の武闘大会がどんなだか興味が沸いたので、絶対に観戦しようと思った。


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


モンスターが闊歩する街、そんなところでは日本の常識なんて通用しないよね。郷に入っては郷に従うしかないよねー。思いのほか順応しているステラ。たくましい!(;´∀`)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、本当にお願いします~。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る