第23話 【Side:ステラ】問題発生!しかも初っ端から!?

 まさか初出勤の初っ端から出鼻を挫かれるとは思わなかった……。


 本日の『南瓜亭(かぼちゃてい)』ご来店第一号は……骸骨が4体!?


 ホウキで普通に先頭の骸骨2体をブン殴る。


「ええぇーーー!?」


 その場にいた全員が驚愕する!!


「大丈夫だよ、任せて!こういうの慣れてるからさ。」


 自信満々に宣言すると店長デネブがあたふたする。


「んと、お客さんに何してんのさ。」


「え、お客……様!?」


 ブンブンとホウキを向けて威嚇していたが、予想外の言葉にホウキを落とす。


「んだテメーッ?人間の分際でよぉ!気でも狂ってるのかぁ!?どっちだろうが死ィ確定だぁ!!」


 息巻くスケルトンAが棍棒を振りかざしわたしに襲いかかって来た。


「やめてもらおうかな、店内ではさぁ~。」


 棍棒をステラに振り下ろしたスケルトンAと、そのスケルトンAを背後から羽交い締めにするわたしは、デネブの一言に動きを止める。


「やるなら外でやってね、キミタチ。」


 デネブは精一杯の笑みで出口を指差す。


 店の開店を待ち侘びた客だけでなく騒ぎを聞きつけた野次馬も集まるが、次々に来店する客は全体的に様子がおかしい。というか、見渡す限りモンスターで溢れていた!!


「いらっしゃいませ〜。」


 モンスター達に向かって挨拶をするモーリス。


「ど、どうなってるのコレ?」


 店内に溢れかえる多種多様なモンスターの群れに、流石に動揺する。


「とにかくよー、下等な人間にコケにされてキレてんよ。この人間、殺していいよなー!!」


 スケルトンDが大声で喚き立て、スケルトン4体がわたしを囲む。


「好きにするといいよ。たださ、このステラはヴェイロンから預かり、今日からウチの店員なんだよ。そこんとこは覚えておいてね。オーケィ?」


 スケルトン4体はデネブの話を聞くやいなや、それぞれ武器を下ろす。


「そうでしたか。ヴェイロン様が店長に預けたんで。いや、お騒がせしました。」


 この国で『ヴェイロン』の名を知らない者はいない。なぜなら、この国の王宮騎士団を統べる3人の騎士団長の一人だったから。わたしは後から知ったケド。


 こうべを垂れるスケルトン達だったが……


「それはそれとして、ステラ……だったか?客を殴り飛ばした詫びと誠意はあって然るべきだよねぇ?あー、首イッタはコレ!!」


 殴られたスケルトンA・Bを労わるスケルトンDがステラの顔を下から覗き込む。


「いや、知らなかったんですよ、スケルトンがお客様だなんて。襲われると思って……その正当防衛的な?あ、すみませんでした。」


「いや、正当防衛は無いよなぁ?言うに事欠いて。そんな言い訳、生前死後通して初めて聞いたわ!で、アンタ殴ったこと認めて謝罪したよね。謝ってくれてありがとね。でもよ、それじゃあ済まないよね?コイツの身体と心の傷に対して、アンタはどう責任を取るのかハッキリしないとなぁ。分かるよねぇ?」


 困り顔のステラはデネブとモーリスに視線を投げる。


「さっきも言ったけど……他のお客さんに迷惑だからさ、キミタチ、店の外で話つけてきてよ。」


 デネブが促すと野次馬のゴブリンから野次が上がる。


「何だよ、もっと見せてくれよ〜。人間の女が困ってるのを肴に酒呑みてーよ〜。なぁ?」


 賛同の声で溢れかえる店内。


「あらあら~!?それなら、どんどん注文してよね〜!タダ見は追い出すからね。皆さん、お楽しみください〜。あ、スケルトン達も注文してよね!」


 どうやらわたしとスケルトンズの件は、今日一番のショーに決まったようだ。商売人デネブ、ここにあり。


 スケルトンズは謝罪するわたしをネチネチに良心の呵責を突いた言葉責めを続ける。涙目になってきた。


 こんな奴等、力で押さえつければ何ということはなく事は終わるのだろうけど、モンスターが『お客様』なこの店にあって、『店員』であるわたしにはお詫びをするしかなかった。


 異世界での初勤務でいきなり初クレーム。何て日だ!と思いつつも、店内は立ち見が出るくらいの大盛況。デネブもモーリスも客対応で忙しくわたし達のことはそっちのけ。もう解放されたいという気持ちになる。


「わたしが悪かったので、その、出来る限りのことは……」


「ちょっと待って、ステラ!!」


 わたしの言葉を遮るデネブ。謝罪の言葉を固唾をのんで聞いていたスケルトンズや他の野次馬達は興が削がれる。


「そりゃないよー、店長ーっ!」


 スケルトン達からブーイングが流れる。野次馬からは野次や爆笑が飛び交う。


「お黙りっっ!!!」


 デネブの一喝にスケルトン達、そして、店内が静まる。


「はい、1ラウンド終了ね。5分頃に再開。オーケィ?」


 誰も文句は言わなかった。デネブは半泣きのわたしを店の奥に連れて行く。


「ステラ、何であんなことを言ったのよ?あれは自殺行為だよ!?」


 デネブの言葉に、わたしは堰を切ったように泣き出してしまった。


「どうしたらいいか分からないよー。何でモンスターがお客なの?訳が分からないよ!」


「本当に……別の世界から来たのかい?この国のこと何も知らないの??」


 落ち着くまでデネブはわたしを抱きしめてくれた。スケルトンズはデネブが何とかするからと言ってくるたが、わたしは途中で投げ出したくないと丁重に断った。


 そして、わたしは真っ直ぐスケルトンズの卓に向かった。


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


命の恩人であるデネブのお店『南瓜亭(かぼちゃてい)』を手伝うステラ。ファミレス店員は伊達じゃないところを見せられるか!?次回、乞うご期待。(o ゝω・)b


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、本当にお願いします~。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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