第22話 【Side:ステラ】居酒屋『南瓜亭』開店です!

「これが魔力を貯めていたリング?その……『魔法少女』とやらに変身するためのねぇ~。」


 デネブは手にしたシルバーのリングをまじまじと観察する。


「微かに魔力の残留を感じる。でも……こんな魔力は初めてだねぇ。」


「そーなんだ。そのリングの魔力はこの世界の魔力とは違うの?」


 デネブには自分の素性と秘密をサラッと打ち明けていた。魔法少女のことは本当は秘密なんだけど、未知の異世界で魔法少女に変身する方法を見つけるには誰かの協力が必要だった。


 出会って間もないデネブが信頼できるかという不安は……無かった。デネブは信用できる人だという確信があったから。


「調べてみないと何とも言えないかな。このリングを預かってもいいかな?」


「いいよ。もう魔力空っぽだしね。」


 今はデネブという藁に縋るしかないので二つ返事でお願いする。すると試すようにデネブは言う。


「疑わないのかい?このリングをかすめ取るかもよ~?イヒヒ。」


 子供のような含んだ笑みを浮かべ、デネブは魔女の帽子の中にリング落とし、帽子を裏返す。普通ならリングが落ちるハズが何も落ちなかった。


「ほーら無くなっちゃった。どうする~?」


「んー、なら……あげるよ。もう無くても同じだしね。」


 まったく気にしていない反応に拍子抜けし、仕掛けたデネブの方がポカンとする。


「オーケィオーケィ!時間ちょうだいねー。」


 帽子を深く被ったデネブの口元は綻んでいた。


◇◇◇


 また階段を上り、扉を抜けると……そこは食堂のような場所だった。


「ようこそ、わたしのお店『南瓜亭(かぼちゃてい)』へ。いわゆる酒場さね。」


 デネブが店の紹介をする。


「デネブちゃんって、てっきり魔法使いかお医者さんだと思ってたけど、居酒屋のママだったなんて意外というか……あれ?子供みたいな容姿だけど、大人なの?年はいくつ?」


「色々と聞いてくるね。嫌いじゃないよ、そういうの。」


 笑顔で答えるデネブ。その可愛い笑顔に癒される。


「齢300歳は超えてるかな?最近、自分の年が思い出せなくてねぇ〜。はぁ、膝が痛い。」


「(300歳!?あれ?急に年寄り臭い感じに。もしかして『呆け』?いや『ボケ』か!?ここは『ツッコミ』どころなのかな?)」


 なんか試されてる気分になる。


「じゃあさ、わたしがこのお店を手伝うよ。うんん、お店はわたしが継ぐよ!だから、安心して……隠居してね。」


「おや、隠居してもいいのかい?」


「もちろん!だから……お店と土地の権利証と金庫の鍵はどこかな?もしもぉ〜し、覚えてますかぁー?」


 耳元で大きな声でおばあちゃんに話しかける。


「いい性格してるね~。さすがはあのヴェイロンを困らせるだけのことはある。オーケィ、オーケィ!まだ店は譲れないけど、店の手伝いはお願いするね。まかない付きの住み込みでどう?」


 この異世界で行き先も拠り所もないわたしにとっては何とも有難い話だった。わたしが行く当てがないことを察していての誘いだったのだろう。


「ステラ、仕事を任せるからにはビシビシ行くから。わたし『商売人』ですから!!」


「ありがとう、デネブちゃん!」


 気付くとわたしはデネブを抱きしめて頭をナデナデしていた。


「お店では『店長』だよ、ステラ。」


「分かったよ、デネブちゃん!」


 撫でられてまんざらでもなさそうなデネブ。


「で、本当は何歳なの?10歳くらいにしか見えないけど。」


 さっきの『ボケ』で聞けなかったデネブの年齢を尋ねると……デネブの笑みが引きつる。


「だから~300歳くらい。『ダークエルフ』なんですけどー。」


 おばあちゃんプレイじゃなかったのか。そして、あらためてここはファンタジーな世界なんだなぁと再確認する。


◇◇◇


『南瓜亭(かぼちゃてい)』


 ここはヴェイロンが仕える王が統べる王都『ゴーファン』。その街中にある人気の居酒屋。目印は入り口に吊るされたカボチャの赤ちょうちん。


 デネブに店の回し方などを尋ねるが、返ってきたのは適当でということ。店長が言うのだから仕方がない。接客には自信はあったのでなんとかなるかな?


 実は『南瓜亭』にはデネブ店長の他にもう一人店員がいた。


 その人は『モーリス』。聞くところによるとモーリスは魔族の『サキュバス』らしい。


 サキュバスは『夢魔』や『淫魔』と呼ばれ……エッチな悪魔とのこと。なるほど、豊満で色気を醸し出す身体にセクシーな衣装。それだけでエロイ!それでいて真面目で大人しい性格はとてもエッチには見えない。これはギャップ萌えというヤツですか!?


「よろしくお願いします、モーリスさん。」


「こちらこそ……よろしくです。ステラさん。」


 優しい笑顔が眩しい!とてもエッチだとは思えない~。


「さぁ、開店するよー!ステラは入り口に赤ちょうちんとのれんを出して。モーリスはステラの面倒見てね!」


「はい、デネブちゃん!」


「はい……デネブ様。」


「『店長』だろ、君たちぃ!オーケィ?」


 夜の宴を待ちわびた客が居酒屋『南瓜亭』に入ってきた。


「いらっしゃいませ~!」


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


命の恩人であるデネブのお店『南瓜亭(かぼちゃてい)』を手伝うステラ。ファミレス店員は伊達じゃないところを見せられるか!?次回、乞うご期待。(o ゝω・)b


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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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