第21話 【Side:ステラ】全裸拘束からの解放!

 2週間。この身体が完治するまでに要した時間。そして、恥辱に耐え忍んだ期間。人生で最悪な時間であったことは間違いない。幸い、デネブ以外に訪れる人がいなかったのは救いだ。


 治療って言えば病院のベッドで安静にしているイメージしかなかったが、異世界の治療があんな羞恥プレイだなんて、この世界の人々は大変だなぁと心配しつつ、もう絶対に怪我や病気はしないと心に決める。


 ただただ水中で全裸緊縛の動けない日々。デネブがいれば話し相手にはなってくれたが、デネブも常に居るわけでなく、日に2〜3時間くらいしか様子を見に来ないので、ひとりの時間が大半だった。


 これからどうしようとか、どうしたら元の世界に戻れるのかなど取り留めのないことを考えつつもどうしたらいいのか分からないので、当面はこの異世界で生きていくしかないだろう。それには……魔法少女に変身できるようにならないとなぁ。何で変身できないんだろう?


 今日もデネブが来てくれた。色々と聞こうとするが先にデネブから質問をされた。それは単眼の魔獣をどうやって倒したのか?ということだった。ヴェイロンが不思議がっていたようだ。


 わたしは経緯を話す。はじめに魔獣の単眼に泥を塗り付けたのは敵の視界を奪うことよりも、魔獣が泥を拭ったときに単眼に細かい傷があれば泥が残るはず。いかに魔獣の単眼が強固とはいえバケモノじみた巨躯の騎士ヴェイロンが繰り出す、魔力を帯びた大剣からの斬撃を受けて無傷だとは思えなかったから。


 予想通り、微かな傷に泥が残っていたので、そこをピンポイントに狙い短剣を携え全力で突撃。奇跡的に強固な単眼を突き破ることができたのは、わたしひとりの力ではなく、むしろヴェイロンのお陰だと説明する。


 それを聞いたデネブはポカーンとしていた。あの過酷な魔獣の森海で上級魔獣を相手にまさか人間が臆することなく魔獣に挑めるものかと感嘆したらしい。そして更に驚いたのは、自分の手柄をヴェイロンのお陰と言ったことだと言う。どういうことだろう?


 デネブの質問が終わり……話すかどうか迷ったが、とりあえず話してみた。わたしの『魔法少女』のことを。


◇◇◇


 約束の2週間が過ぎ、窮屈な治療装置から解放され、晴れて自由の身となった。嗚呼、2週間ぶりのシャバは空気は美味い!と感じずにはいられなかった。


 治療部屋にはわたしが入っていたガラス容器の他に3つの容器があり、2つは空だったが、1つは液体が満たされていた。中には小さな球体のようなモノが入っていたが、薄暗く何かよく分からなかった。デネブに尋ねたところ『実験』とだけ答えてくれたが、それ以上は何も語らない。ただ、とても嬉しそうな顔が印象的だった。


 治療部屋は地下にあったらしく、階段をしばらく上り進むと、まだ地下なのだが入浴場があるのでわたしに入浴を勧めるデネブ。何という有難い気遣い。薬液に自浄作用があるとは言え、心情的には汚物にまみれた気分は拭えなかった。


 何と浴槽の湯は地下から汲み上げている天然温泉らしく、岩盤風呂のような作りで趣きがあった。


 この異世界に来て初めてのまともなお風呂。そして何よりここ2週間の間、排泄物が解けた水槽に浸され続けたステラにとって念願の入浴!有り難過ぎて涙が出る!!


 身体の隅から隅まで入念に洗い、しっかりと口うがい鼻うがいをする。流石に体内まで洗うことはできないので、自分が納得できる最大限に清潔な状態まで洗い続けた。


 温かい源泉掛け流しの温泉に浸かると傷が癒えた身体が更に癒されるように感じた。そういえば魔王との戦いから休む暇もなくこの異世界で魔獣に追い回され、挙句に全身ボロボロな瀕死状態。水槽内の2週間は不快感と羞恥との戦いで快適とはとても言えない。ようやく心身ともにゆっくりすることができたなぁと思い返す。


「そういえば、ヴェイロンは大丈夫かな?」


 まあ、金魚状態の時にヴェイロンに会っても、羞恥心で動揺して酷いことしか言えなかっただろうから、それはそれで会えなくて良かったのだろう。


 浴室から出るとデネブは脱衣所の椅子に座り読書をしていた。


「もういいの?」


 気づいたら軽く1時間以上は入浴していたので、悪いなぁ〜と思っていたが、予想に反した反応に何て良い人なんだと感激するステラ。


「ありがとう。むしろ長湯して待たせてごめんなさい!!とっても素敵なお風呂でつい時間を忘れちゃったよ。」


「気に入ってもらえて良かった。いつでも使っていいからね〜。」


 なんて良い人!!


「そう言えば……ヴェイロンはどうしてるのかなぁ?」


 デネブに尋ねるステラに、デネブが返す。


「なぁに?ヴェイロンのことが忘れられないのかなぁ〜?」


 急に照れたのか、湯上りのためだけではなく肌がほのかに紅色に染まるステラ。


「そ、そういうンじゃないよ!ただ、わたしを助けてくれたから。せめてお礼をしたくて。」


「このピチピチな身体で?」


 ステラの腰のラインをなぞるデネブ。


「ひぁ!?」


 不意を突かれ変な声を上げてしまった。


「もー、悪戯するデネブちゃんにはおしおきだよー。」


 湯上がり姿のままデネブを抱きしめる。デネブの口から出たのは……


「んー、まだまだだね。ヴェイロンは大きい方が好きみたいだよ~。ニヤニヤ!」


 デネブに言われた一言に、森の泉でヴェイロンに言われた台詞を思い出し、あらためて落ち込む。良い人……だけど悪戯っ子だ。


「(まだ成長するもん!グスン。)」


 自分の胸に手を添えながら遠くを見る。


 汚れた制服や下着は洗濯されていた。2週間ぶりに人並みな格好になれたことに感謝!


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


ステラの体形は可も不可もないのだが……胸の大きさを求められるとどうしても引け目を感じてしまう。魔法で胸を大きくできればなぁと考えたができなかった。魔法少女は万能ではないと感じた瞬間であった。あぁ無常……。


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、本当にお願いします~。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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