第20話 【Side:ステラ】金魚の世界が物語る……現実
ふと、家で飼ってる金魚のことを思い出した……水槽の中だけに。
金魚が病気になったとき薬液を入れた水槽で治るまで餌も控える日々が2週間位続く。人間で2週間もご飯食べなければ死ぬと思ったので、金魚はすごいなぁ〜と感心したものだ。水槽の中、観察されている自分がまさに金魚状態だなぁ〜としみじみ感じた。
「あのね、デネブさん。事情は分かったし、治療には感謝してるので……この拘束は解いて欲しいンですけど、お願いできますか?」
わたしの頼みに対してデネブは……端的に返す。
「無理。」
てっきり快諾してもらえると思いきや、まさかの拒否に面食らう!
「え!?いや、なんで??」
「んとね、この装置は完治するまで開けられないのよ。理由は、薬液があなたの治癒力を急速に高めてるんだけど、完治前に解放すると急激に治癒力が低下して身体との同期が取れなくなり、その負荷で身体が破壊してしまうから、完治までは絶対に開けられないのよ。オーケィ?」
「つまり、この姿のまま1週間いなきゃいけないってこと?」
コクリと頷くデネブ。命を救い身体まで治してくれているデネブにこれ以上わがままは言えないと観念したけど、ひとつだけ大事なことを聞かなければならない。さっきよりも焦っているわたし。まさか……ね。
「デネブさん、その……トイレは行ってもイイ……よね?」
若干モジモジしながらデネブの答えを待つステラ。まさか、それはないよね??
「行ける訳ないよね?話し聴いてた?」
『出られない=トイレに行けない』は予測の範疇だったものの、何か方法はあるのではないかと一縷の望みに賭けたが……徒労に終わる。じゃあどうしたらいいのか?という答えはデネブの口からは無かった。
SF映画やアニメなんかで似たようなシチュエーションはあったけど、中の人がトイレで困っている描写はなく、今の自分も大丈夫、何とかなるだろうと思っていたが、普通に尿意がやってきた。
「ここでするしかない、ですか?」
聞くまでもないだろう質問だったが、聞かざるを得ず口にするステラ。
「正確。」
もはや事務的に返すデネブ。
こんなことってあるの!?と心の中で愕然とする。16歳の女子高生が衆人環視のなか裸で拘束され、挙句に人前で放尿し、尿が混じり合う液体の中にいるわたし。当然、尿は口や鼻からは体内に入るだろう。
敢えて考えないようにしているが、尿だけでは済まない状況もありえるのだろうか?
「この液体は循環して入れ替えはされますか?」
「いや、最初に入れたままだよ。循環なんてされないね。」
最悪な状況であることが確定した。ただ、わたしの懸念を察したのかデネブは補足をする。
「この薬液は老廃物や排泄物を分解して無害な養分にしてくれるから大丈夫だよ。安心してね。」
それを聞いて涙が出るくらい安堵した。更にデネブが補足説明。
「モノによるけど、液体なら1時間位で、固形物ならだいたい数時間で分解されるから。体内に入っても最後は無くなるから同じだよね。」
「(数時間!?同じじゃないよーっ!!)」
心の中で叫ぶ!掴んだ蜘蛛の糸が切れた瞬間だった。更に追い討ち!
「あなたが薬液に入ってここ2日間、意識は無かったけど、排泄は活発にされていたよ。観察してる限り体内の固形物はもう出尽くしたと思うよ。薬液は常に体内も循環するから、尿意は頻繁にあると思う。我慢しないでどんどん出していいからね~。」
もう話す気力も起きなかった。
閉ざされた水中で排泄物にまみれながら裸で生きている金魚をこれほどリスペクトしたことはなかった。文句も言わずに愛嬌を振りまく健気な姿に目頭が熱くなる。もし帰ることができたなら、一番高いエサを買ってあげようと心に誓った。
そんなことを考えつつも、ついには年貢の納め時が訪れ……程なく透明な液体が色付いていった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
前回に続き、ステラの扱いがヒドイ回。SFなどの映画やアニメではよく見る水槽内の液体に浸される光景。生理現象はどうしてるんですかねー?謎です……。(*´▽`*)
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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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