第8話 【Side:ブレイブ】光ある場所を求めて
この世界『ラニューシア』には大小いくつかの国家がある。
俺たちが住まうのは大陸の北に位置する小国『オルガナ』。この国は北にある鉱山で採れる鉱物を他国と取引することで栄えていた。
しかし北の鉱山地帯には多くのモンスターがいるため、モンスター討伐や護衛などで冒険者が大変重宝されていた。安定的に仕事があると同時に、ともすれば一攫千金を狙える冒険者はこの国では人気のある職業であった。
隣国には二大大国である精霊王が治める『スピリットガーデン』があり、オルガナはスピリットガーデンと同盟を結んでいた。
もう一つの大国として、魔獣王が治める『ゴーファン』があった。長い間、スピリットガーデンとゴーファンは争いを繰り返す対立関係にあった。
ここ数年は冷戦状態であったが、最近になりゴーファンの暗黒龍がスピリットガーデン領を荒らす被害が出ており、両国間の緊張は日に日に高まっていた。
◇◇◇
伝説の武器アイスソードを手に入れてから、かれこれ2日間彷徨っていた。もう出口などないのではないかと思えてきた。地上を目指すべく上がりたいのだが、行く道は逆に地の底に降りて行くばかり。
出会うモンスターも奥に行くにつれ強くなっていった。
初心者に毛が生えた程度のパーティにとっては強敵を超えて全滅してもおかしくないモンスターばかりであった。
幸いだったのはこのアイスソードの力に尽きる!
一振りで薙ぎ払うと同時に凍結させることで、一撃で倒せなくても相手の動きを大幅に抑制することができ、難なく強敵も倒すことができた。
手持ちの食糧も厳しくなってきたものの、倒した敵で食せるもので食いつないでこれた。これも食に精通したパチャムの知識の賜物であった。水はアイスソードの氷を解かすことで不自由はなかった。
「そういえば、アイスソードは喋らなくなったね。でさ、もしかしてだけど出口を知ってるんじゃないかな?レジェンドだしさぁ?」
パチャムがそう提案してきたことに違和感を感じた。
「いや、前にコイツ言ってたじゃないか。出口は知らないから頑張れと。で、疲れたからしばらく寝ると。聞いてなかったのか?」
「いや、聞いてないけど。いつ言ったんだい?」
パチャムは全く覚えがなかった。後ろを歩くキューイに確認するが首を横に振るだけであった。
「もしかしてだけどさ、もうマスターのブレイブにしかアイスソードの声が届かないんじゃないかな。良くある話さ。」
寝ている以上、アイスソードが起きるまでは確かめようがなかった。ただ、アイスソードが出口を知らないことは全員が理解し、重い空気になった。
「もうダメだー。出られないんだから助からないよ、わたし達。もう、死ぬしかないじゃない!!」
ファナが座り込み、大声で叫ぶ!!休息は適宜取っていたので体力的なものではなく、精神的な不安が極限に達した結果だろう。
普段は前向きでパーティのムードメイカーだが、気は長いほうではなく、いつまで経っても出口がない迷路を彷徨うことは彼女にとって耐え難いストレスであったのだろう。
「ファ、ファナ!?そんなこと言わないでよ。だ、大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なのよ!ちゃんと説明してよ!!」
パチャムが気遣うように優しく声をかけるが、ファナには火に油であった。
そりゃそうだ。まったく根拠がない言葉がファナに響くはずもなかった。パチャムは咄嗟に出た言葉だったが、それ以上ファナにかけられる言葉を思いつかなかった。
「パチャムの言う通りだ、ファナ。安心しろ、大丈夫。俺たちは全員でここを出る。信じろ!」
フォローするつもりが……結局、俺も根拠のないことを口走ってしまったと内心ドキドキしつつ、誤魔化すように座り込むファナの頭をクシャクシャと撫でる。
「ウソ……。こんなに、こんなに迷ってるのに、何でそんなこと言えるのよ!」
「何でかな?ただ、そんな気がするんだ。まだ立てるだろ?ファナ。」
見上げるファナに手を差し伸べると、少し俯いたまま俺の手を掴む。
「ブレイブのくせに……生意気。街に戻ったら……ご飯とお酒ご馳走してよね!そ、それで手を打ってあげるよ。」
「お前、まだ未成年だろうが。まったく……」
その後、不思議とメンタルを取り戻したファナの頑張りと、4人のチームワークが功を奏し、この広大で複雑な迷宮を散々彷徨い倒した挙句、奇跡的に一人も欠けることなく地上に戻ることができた。
ボロボロな俺たちは約20日間ぶりに陽の光を浴びた。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
20日間もダンジョンに彷徨ってたら精神崩壊しそうですよね。ファナはそんな感じで情緒不安定になったんですが。考えただけでネガティブになります……。(lll-ω-)ズーン
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毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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