第9話 【Side:ステラ】女子高生は騎士と出会う……異世界で

 鬱蒼と生い茂る暗い森の中、巨大な樹木の幹で気配を消しながら休息を取るふたり。


 ソーシャルディスタンスなのか、お互い少し距離を置いて座っていた。


「あとどれ位で、その……街に着くんですか?」


 心配そうな口調で問いかけるが、男は微動だにせず、少し間をおいて答える。


「5日も歩けば着くだろう。それまでお前が獣の餌にならなければの話だがな。」


  男の口調からは軽い悪意とも侮蔑とも取れる印象を感じる。


「(そんな言い方しなくてもっ!ぷんぷん!!)」


 頬を膨らませ心の中で憤慨する。


 返された男の言葉に2日前なら絶望を感じたかもしれないけど、今はそんなに驚きはしなかった。まぁ、この男の口から漏れ出す皮肉がせいぜいイラっとする位だった。


 とにかく今は少しでも休んで体力を回復しないと、男が言ったとおり獣の餌になって人生が終わることは理解できた。


◇◇◇


 わたしは『牛田 美輝(うしだ みき)』。東京の都立高校に通う16歳の女子高生。


 そんなわたしの隣で距離を置いて座るのは……濃紫の鎧を着けた巨躯な騎士。


 ブレザー姿の女子高生とファンタジーに出てくるような騎士が並ぶ姿って……異質というかミスマッチ極まりない絵ずら。もはやギャグ漫画のソレだよね。


 そんな鎧の騎士『ヴェイロン』との出会いは2日前……それは最悪な出会いだった。


◇◇◇


 目が覚めた時、わたしは明らかに見知らぬ異質なこの森に倒れていた。


 辺りは既に陽が落ちて真っ暗で、その時のわたしは疲弊した心身状態。見知らぬ深い森にただひとり、そして空腹の三重苦に……その場でまた気を失ってしまう。


 次に目を覚ましたのは、鼻孔が香ばしい香りにくすぐられた時。


「ぐぅぅ~~~!!」


 ひどい空腹感から赤面するほど腹の虫が咆哮を上げ、その香りに口の中はよだれが溢れて来る。周りを警戒することなく、嗅いだだけで美味しいと分かる香りの方向へまっしぐらに駆け出す。


 少し離れた巨木の幹にハッキリと視認できる明かりがあった。いったん木陰に身を隠し気配を消しながら明かりの方向の様子を伺う。明かりは焚き火のもので、火に焼かれる肉の豊潤な香りに……


「ぐぅぅぅぅ~~~!!ぐるぐるぐぅぅぅ~~~~~!!!」


 あぁ……恥ずかしくて死にたい。


 恥じらいを感じつつも、どうしようもなく焼かれた肉に飛びつきたい衝動に駆られる!!


「それで隠れているつもりか?俺の食事を邪魔するとは……許せぬな。出てこい!!」


 そこには鎧を纏った騎士がいた。体格や声から男の人だ。騎士はそう言葉にすると立ち上がり、手にした鈍く光る漆黒の長剣を高く掲げる。


 わたしは動けなかった。一瞬にして空腹を忘れる位の殺気に包まれる。


「出てこないなら、こちらから行くぞ?」


 一歩、二歩……確実にわたしの方に歩みを進める騎士。


「ぐぅぅ、きゅるるぅぅ~~~!!」


 わたしは観念して木陰から姿を見せる、両手を上げて。たぶん顔は恥ずかしさに赤面していただろう。


 騎士は木陰から出てきたわたしを見て動きを止める。


「子供?人間の子供か!?」


 騎士の口からは驚いたような言葉が漏れる。


「あのぉ……食べ物を分けて貰えませんか?お腹が空いていて、もう我慢できなくて。お願いします!」


 またお腹が鳴りそうなのを必死で抑え込みながらわたしは深く頭を上げる。


「有り得ないな。こんなところで。」


 騎士はわたしに歩み寄りながらそんなことを呟く。


 何か……様子がおかしい!?


 この騎士は何の躊躇なく大きな剣をわたしに大きく振り下ろした!!激しい剣戟で舞い上がる土埃。


「フン、どうせ魔獣が人間の子供に化けているのであろう。こんな魔境の深層に人間など居るはずがなかろう、馬鹿めが!」


 土埃は風に流されてゆく。


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


女子高生と鎧の騎士。なんて絵ずらやねん!そして女子高生に剣を振るう騎士。騎士道はどこへ!?( ゜Д゜)


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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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