第6話 【Side:ブレイブ】異世界での目覚め

 俺の名は『ブレイブ』。


 このファンタジーを絵に描いたような異世界『ラニューシア』で生まれ育った……んだけど、俺には別の記憶があった。


 それは……地球で生まれ育ち、そして死ぬまでの記憶。


 かつての名前は『吾妻 勇希(あづま ゆうき)』。


 今日は俺の誕生日で、ちょうど前世で死んだ時と同じ14歳になった。そう……突如、東京を襲った巨大なバケモノに殺された14歳に。


 前世の記憶は俺が5歳の時から鮮明に思い出すようになり、今の両親や友人に話したが、当たり前ながら信じてはもらえなかったので、そのうち前世のことを話すのをやめた。


 その悔しさをバネに、前世の、そして、この世界からすると全くの異世界の記憶や知識があれば、このファンタジーな世界で革命を起こせるのではないか!?一攫千金を手にできるのではないか!?と考えた時期もあったけど……たかが中学二年生の知識で何ができよう。超人中学生でもあるまいし。


 むしろキモヲタ厨二病とバカにされていた役立たずには何のアイデアも行動力も湧かなかった。


 唯一の救いは、転生後の俺はなんと、結構なイケメンで高い運動能力を持っていた!そして、そして、人間ではなく、なんとエルフに生まれたのだった!!これは死んだ甲斐があったと言わざるを得ない。紛れもない勝ち組だぁ!!!


 以上のことから、俺は憧れのファンタジーな異世界で『勇者』を目指すことにした。前世ではダメ人間のまま死んだけど、今はスペックが違う!この転生は主人公補正そのものなのだから!!まぁ、今のところチートな能力やスキルが無さそうなのが不満ではあるが。


 なお、前世で14年、そして、今世で14年生きたのだから、気持ち的には合計で28歳の大人な気分であり、早々に一人称を『僕』から『俺』に変えることに成功したのだった。


 ただし、ドリームな厨二病イケメンにまともな友人や恋人ができる訳もなく、周りには変わり者ばかりが集まるようになった。


「おーい、ブレイブ!聞いてるのか〜い?」


 おもむろにジャンピングニーからのヘッドロックが決まる!

 

「痛いーっ!離せよ、ファナ!!」


「スキだらけなんだよブレイブは。そんなんじゃこれから先、生き残れないよっと。」


 更に締めてくるのはホビットの女拳闘士『ファナ』。俺と同い年の14歳。ちっこいくせに馬鹿力があり侮れない。長身の俺の首を絞めながらファナの胸が後頭部に当たる。薄いのが残念だが……。いや、ロリもありだ!


「ほらほら、戯れてないで早く行くよ。ファナも降りな。」


 こいつはハーフエルフの司祭『パチャム』。こいつも同じく14歳。男のくせにひ弱で頼りないが……真面目で料理は美味いから重宝されている。パチャムは俺の上に引っ付くファナを引き剥がしてくれた。


「……。」


 少し離れて俺たち幼馴染3人を眺めているのは、無口で無愛想なバードマンの『キューイ』。他のメンバーとは年が離れたオッサンで狩人だ。


 そして、俺ブレイブは剣士。長剣と盾で華麗に攻撃を受け流し、しなやかに敵を斬り伏せる。まぁ、結構ミスが多いのはご愛嬌。


 この4人でパーティを組み、日々この世界の探求に勤しんでいた。


「深淵なる未知のダンジョンが俺たちを呼んでいる!さぁ、行こう……ここから始まる伝説の冒険へ。」


 ヘッドロックから解かれた俺は手櫛で前髪を掻き上げ、前方に広がる深い闇を内包する洞窟、いやダンジョンを指さしそう宣言する。


「いやいや、何度も入ってる洞窟で依頼された鉱石を集めるだけだからね。お使いだよ、お使い!」


 いつものようにツッコミを入れるファナ。台無しである!


◇◇◇


「これは……『アイスソード』!レジェンド級の武器だよ!!」


 パチャムがクリっとした眼をさらに丸くしながら、興奮気味に叫んだ!


 ここは洞窟から更に地下深いところにある太古の迷宮。通路に施された模様や装飾から、数百年は前に造られたものと思われる。これこそRPGでの定番、ザ・ダンジョン!という趣があった!!


 俺達は彷徨いながらもこの迷宮の探索を続けた結果、祭壇らしき場所に辿り着く。祭壇は一面を青く輝く氷塊に覆われ、幻想的な景観は見る者の視線を離さなかった。その中心に一際輝きを放つ青い長剣が一振り突き刺さっていた。


「ほら見ろ、ファナ。やはり伝説級の冒険だったろ!お使いなどと妄言を吐きやがって!」


 俺はヘッドロックのお返しとばかりに、ファナに毒づく。


「いやいや、そんなことより……レジェンド級って……夢だよね、コレ!?」


 自分で自分のほっぺたをつねるファナ。


「痛くない!!やっぱり夢だよ、コレ……。」


「何だと!?本当に痛くないのか!?何かの間違いだろう??」


 戸惑う俺の頬をおもむろにつねり上げるファナ。


「あああああああああああああああああああああああーーーーーーっ!!痛たたったたたぁぁあーーー!!!」


 頬がもげてしまいそうなほどの激痛に、反射的に大人げなく叫び声を上がてしまう俺!これは不可抗力だ!!さすがの俺も本気でファナの頭を殴るのだった!!!俺とファナは地面を転がり痛みに耐え忍ぶ。


「何やってんだよ、もう。ブレイブ、唯一の剣士なんだから早くアイスソードを抜いてみてよ。」


 パチャムが呆れ口調で俺に促す。


 いや、普通こんなんトラップを警戒するだろうに、パチャムはレジェンド級に興奮したのか全く警戒しない。なら、お前が剣を抜けた言いたい。


 だが……見るからに美しいその氷の剣は見るほどに心を奪われる魅力に満ちていた。


 皆が見守る中、俺は伝説の武器アイスソードを手に取ると、その剣が青白く更に輝きを増した。


「痛っ!」


 剣の柄を掴んだ瞬間、激しい冷たさが痛覚を刺す!手が凍り付き次の瞬間には感覚が無くなる。その凍結は腕を登ってくる。連続して走り抜ける激痛が俺を襲う!


「うあああぁーっ!!」


 迷宮に絶叫が響き渡る!


 やっぱりトラップでしたーっ!!!


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


現世で死んだデブキモオタがお約束の異世界転生で勝ち組キャラに!さ、冒険の始まりだぁ~!!(*´▽`*)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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