異世界編
第5話 【Side:ブレイブ】14年越しの再会
突然現れたその黒髪の少女の姿に俺は目を釘付けられる。それはそうだろう?だって……14年越しに目にしたその少女は14年前と変わらぬ姿で、14年前とは姿を変えた俺の前に突如現れたのだから……。
何を言ってるのか分からないって?それは俺にも分からないんだ。ただ言えるのは、これは死を前にした走馬灯……幻の類いなのかもということ。
◇◇◇
「嘘だろ!?こんなことって……。」
天空から突如舞い降りたのは……巨大な漆黒の龍。一瞬にして冒険者の半数以上が死に絶えた。これが噂でしか聞いたことが無い、遥か東にある『魔獣の森海』の奥底に住まうという伝説の暗黒龍『ダルクシュレイヴァ』であると誰もが疑わなかった。
それは俺たち冒険者中隊の実力は精鋭揃いと言っても過言では無いのだが、それがまるで手も足も出ずにただただ蹂躙されるだけであったことが物語る。
「ブ、ブレイブ……こんな、こんなことって。あぁ、神様!」
隣でへたり込むハーフエルフの神官パチャムは旅を共にしてきた仲間たちが目の前で無残な死を迎えたことに動揺を隠せない震えた声で俺に告げる。
「うおおぉぉーーーっ!よくもっっ!!」
雄叫びと共に巨大な龍に襲い掛かるのはホビットの女拳闘士ファナ。素早いフットワークで距離を縮め、一気に龍の懐に飛び込み乱撃を浴びせる。が、まるで微動だにしない暗黒龍。
大地をひと踏みすると強い地響きとなり、体制を崩すファナを暗黒龍の尻尾の横薙ぎが襲い掛かる。辛うじて身体のバネを活かし飛び退くが、巻き起こる暴風に抗うことができずファナは岩場に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。
「ファナ!?」
俺は倒れたファナに駆け寄り抱きかかえる。頭からの出血はあるが息はあることに安堵。それも束の間、残った数少ない冒険者の中で俺に狙いを定めたのだろう。俺とファナに向けて灼熱のブレスが襲いかかる。
「凍てつく氷結の柱よ、灼熱を退ける盾と成せ!『アイシクル・ウォール』!!」
俺は手にした氷の剣『アイスソード』の力を解放し、暗黒龍の放つブレスを全力で防ぐことに集中した。ブレスは超高温の黒き炎で、まともに喰らえば肉体など消し炭となろう。
手にしているのが炎と相対する氷の剣で良かったと心から思った。だが、数千度はあろう炎を氷の盾で防いでいたが、氷の生成速度を上回る熱量が止むことは無く、急激に氷の盾が激しく水蒸気を上げる!同時に手にしたアイスソードに亀裂が入ってゆく。
「(主よ、暗黒龍の炎は我が力では防げぬ。そして我が力も尽きる。)」
俺にしか聞こえないその声は悲痛さに満ちていた。
「そんな、アイスソードよ、もう少しだけ……」
そんな俺の言葉が終わらないうちに、氷と炎による水蒸気の爆発的な風圧に俺とファナは別々の方向に吹き飛ばされる。大地を転がるように飛ばされた俺は酷い悪寒に苛まれる……見上げると暗黒龍が俺を見下ろしていたから。
「い、いやだ……また14で死ぬなんて。誰か、た、助けてっっ!!」
俺はエルフの剣士ブレイブ。勇気を表すその名に反し、この時の俺には諦めずに立ち向かう勇気は無かった。
かつて死んだときの恐ろしい記憶が蘇り、今まさに再び訪れる死にすくみ震え、頭は真っ白になる。
そんな俺を嘲笑うように暗黒龍の前足が頭上から落ちてくる。この時の俺はどんな顔をしていただろう?きっとみっともない顔だったに違いない。
その後どうなったのか分からないが、気づいた時には暗黒龍から距離を取ったところで、俺は柔らかく暖かく懐かしさに包まれていた。
「大丈夫ですか?危ないところでした。」
優しいその声に震えながら目を開けた俺の視界には、柔らかな双丘越しに黒髪の少女の微笑みが映る。
俺は思い出す……14年前と変わらぬ、夕暮れの図書室での彼女の笑顔を。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
絶望的な状況は大抵助けがくるものです。何でですかね~?既定路線と言うことで。(´艸`*)
お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m
毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます