魔王編
第2話 【Side:現代】いじめられっ子
梅雨が明け、夏の始まりを感じさせる強い日差しと熱気が窓から教室に降り注ぐ。
嗚呼、夏は嫌いだ。脱いでも脱いでも暑い。ただでさえ人よりぜい肉が多い僕には汗が滝のように溢れて、体臭もキツくなる。
僕『吾妻 勇希(あづま ゆうき)』は夏が嫌いだ。
鳴り響くチャイム。
「やっと昼メシだー!ウェーイ!!」
チャラ男達がハイタッチする。皆それぞれ集まって弁当を食べる。
僕は決まってぼっち飯。もう慣れたもので、好きなラノベを読みながら自分の世界に浸り食事をするのが僕のお昼。
ガラガラッ!
ここは中等部2年2組の教室。後ろのドアを開け、ひとりの少女が入ってくる。
「失礼する。」
少女は一礼すると、バタバタ走ってくる。
「吾妻氏、WEB小説読みましたぞ!世界観や人物相関が緻密に練り込まれており、3話読んだだけでこのわたしを別時空に引きずり込むとは……流石デス!PVや評価は少ないですが、そこは有象無象の評価。度外視して差し障りないでしょう。」
僕が展開する『ぼっちフィールド』を易々と侵食するコイツは隣の2年3組の『蛭田 詩代(ひるた しよ)』。所謂『中二病』を発症しているイタイ奴で……唯一の心の友だ。
「あぁ、挨拶が遅れたな。『魔法少女マジカル☆シヨン』降臨!」
クルリと回った後に両手を交差させ、親指を折り両手で『4』を表す。4月4日生まれで『しよ』と命名されたことを表しているらしい。
そして魔法少女に憧れ自分を『魔法少女マジカル☆シヨン』と公言しているイタイ奴だ。
◇◇◇
『魔法少女』……それは、この世界に突如出現した怪物から人々を守るために現れた3人の少女たち。
一人目は、白とピンクを基調とした衣装と栗色の髪、星の飾りが付いた長い杖を持つ魔法少女。
二人目は、赤と緑を基調とした衣装に銀色の髪、短いタクトを持つ魔法少女。
三人目は、水色と白を基調とした衣装に金色の髪、厚い本を持つ魔法少女。
残念なことに、その正体も名前も知られていなく、その活躍を目撃されることは多くあるにも関わらず、警察やマスコミが調査をしても決してその正体が明るみに出ることは無かった。
シヨンが魔法少女に憧れる気持ちは痛いほど分かる。
僕たちのようなヲタクにとって魔法少女と言えば正義のヒーローとして広く認知され、かつ萌えの対象であるのだから。
そんなアニメやゲームの世界の存在である魔法少女が現実に現れたのだ。こんなに心躍ることがあろうか!?(いや無い!!)
◇◇◇
「うるせーぞ、ヲタ女!また来たのかよ。」
クラスのビッチ女がシヨンに文句を言う。
「我が降臨して何が悪い?このクソビッチ女が!」
シヨンが中指を立てて言い返す。
二人は掴み合いながら互いを罵り合う!
チャラ男達がいつものように仲裁に入り、いつものように二人は顔をプイっと逸らしその場は収まる。チャラ男、グッジョブ!
「早くWEB小説の続きが読みたいですぞ。お、そのラノベは発売されたばかりの大賞作品ですな!わたしも買おうと思っていたのです。ちょっと見せてくだされ、吾妻氏。」
僕はシヨンにラノベを差し出すと、すかさずビッチ女がラノベをかすめ取り、パラパラとラノベを見る。
「うわ!エロ!?お前またこんなの読んでんの?これ、男が背後から女のオッパイ揉んでるじゃん!」
ビッチ女は見開きカラーイラストをクラスメイトに見せびらかす。チャラ男達が見せてとラノベに殺到する。
「そうですよ!その絵師のイラストは特にロリ巨乳の凌辱絵が神ってて、男子のみならず女子をも興奮させると評判で、萌えなのであるっ!!」
シヨンが自慢げに解説を始める。恥ずかしげも無く非ヲタに理解されないヲタ説明をする病気が始まったと僕はうつむく。
「アンタらこんなの見て興奮しちゃってるの?いや、キモヲタ同士でこんなことしてるのかなぁ?アーハッハ!!」
ビッチ女が大声で爆笑しながら……背後から僕の胸を揉みしだく!
「お、こりゃ……すげぇな!ブタ君、巨乳じゃね~か!?」
『ブタ君』はビッチ女やチャラ男たちから呼ばれている僕のあだ名だった。
◇◇◇あとがき◇◇◇
ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)
デブでブサイクでキモヲタでヘタレないじめられっ子の中学2年生の中二病男子の勇希。コレが主人公です……一応。タハハ~。(´Д`)
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毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)
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