第3話 【Side:現代】最後の光景

 ビッチ女は僕のぜい肉の付いた胸を揉みしだく。


「や、やめてよ。あ、いや、やめてください。」


 クラス全員の視線が僕に集まり、恥ずかしさに下を向きながらビッチ女にやめて欲しいとお願いする。しかしビッチ女は笑いながら楽しそうに言う。


「え、ブタ君なんか言った?声小さくて聞こえないんだけどー。何をどうして欲しいのかを大きな声で言ってくんない~?」


「や、やめてぉ〜!胸を揉まないでください……」


 僕は助けを求めるようにシヨンの方を見ると、シヨンは僕とビッチ女を凝視しつつ……ブツブツと呟く。


「こういうシチュもアリか。吾妻氏がビッチ女に責められる……。次の入稿に間に合うかな?」


 妄想の世界に入ったコイツにはどんな声も届かないことを僕は知っている。


 ここでチャイムが鳴る。昼休み終了10分前のチャイムだ。


「もう昼おしまいかよー。ブタ君、気持ち良かったぁ?今度は有料だからな!」


 ビッチ女は自分の手を僕のワイシャツで拭き取る。まるで手に付いたバイキンを拭うように。


「うわ、臭っ!手がワキガ臭いんだけど〜!最悪っ!!」


 ビッチ女はワキガ臭を洗い流すためトイレにダッシュして行く!


「あぁ、済まない吾妻氏。ビッチ女の好きにさせてしまい。」


 正気に戻ったシヨンは涙目の僕に謝る。


「いや、僕がダメ人間だから仕方ないよ。シヨンは強くて……その、羨ましいなぁ。」


 自分の机を見つめる。恥ずかしくて、情けなくて……まともにシヨンの顔を見ることができない。


「ビッチ女に何かされたら、脳内でわたしを呼んで下され。このマジカル☆シヨン、時空を超えて助けに参る故。では、さらばデス!」


 シヨンはシヨンポーズを決め、自分の教室に戻っていく。


 こんな時は放課後の図書室に行けば……大丈夫。夕暮れの静かな図書室で、彼女のサラサラと流れるような黒髪から覗く横顔が見られれば。


 でも、その日の放課後、図書室に彼女は来なかった。


◇◇◇


 放課後の図書室でひとり本を読んでいると、突如、校内にサイレンが鳴り響く!校内放送から街に今までにないほど巨大なバケモノが出現したため緊急避難することとなった。


 国民を安全な場所まで移送する自衛隊のトラックの荷台に僕たちは乗せられ避難する。巨大なバケモノは僕の街を襲い、多くの建物は崩れ火の手が上がっていた。


 その凄惨な光景を眺めつつ、このまま安全な場所まで行けると僕は考えていた。


 しかし……バケモノの攻撃でトラックがバウンドした際、僕は荷台から放り出されてしまう。トラックの運転手は落ちた僕に気付かず全速力で走り去ってゆく。


 振り返り見上げると、頭上には巨大なそのバケモノがまるで僕を見下ろすように天を覆い、大きく口を開きビームのような閃光を解き放った!!


「い、嫌だ……死にたくないよっ!た、助けて!!誰か、うわあああっっ!!!」


 もう助からないのは分かっていたのに、それでもそう口にせざるを得ない心理状態。つまりパニックである。頭を抱えしゃがみ込む僕だったが、いつまで経っても痛みも熱さも無いことに恐る恐る目を開ける。


「死んで……ない?助かったの?え、ウソ!キミは……魔法少女!?すごい、魔法少女が僕を助けてくれた!!」


 僕の目の前に立ちはだかっていたのは、僕が憧れていた尊い魔法少女だった!その水色で金髪の魔法少女はバケモノの攻撃を防いでくれていた。


 しかしその攻撃は更に威力が増し、僕を守ってくれていた魔法障壁が打ち破られる!魔法少女は僕を庇うように抱きかかえてくれるが、凄まじい威力にあらがえず僕たちは吹き飛ばされる!!


 魔法少女に抱きかかえられた僕は全身に激しい激痛が走り気が狂いそうになる……が、すぐに痛みが消え意識が朦朧としてきた。あまりの激痛に頭が麻痺したのだろうか……。


「イヤ、死なないでっ、吾妻くんっ!お願い……生きてっ!!」


 そんな声がかすかに聞こえた。こんなに近くに魔法少女が居るなんて夢のようだ。彼女の瞳からは大粒の涙が溢れ、僕の顔に降り注ぐ。そんな悲しげな顔の彼女に僕は何ができるだろう?僕は最後の力を振り絞って、笑顔を作った。


「(助けてくれて……ありがとう、僕が心焦がれた……魔法少女。)」


 もう声は出なかった。


 決して幸せな14年間ではなかったけど、憧れの魔法少女の腕の中でなら、こんな最期も悪くないと思えた。そこで僕『吾妻 勇希(あづま ゆうき)』の意識は途切れた。


 この時の僕は、どうして魔法少女が僕の名前を知っていたのかと疑問に思うことはなかった。


◇◇◇あとがき◇◇◇


ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


ヲタクとして憧れていた魔法少女に助けられたのもつかの間……憧れの魔法少女の胸の中で命を落とすいじめられっ子の主人公。ある意味で幸せなのか!?(´Д`)


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日の午前中に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る