異世界でも魔法少女となら大丈夫だよね!?

古土師 弥生

プロローグ

第1話 【Side:ステラ】異世界で働く……女子高生!?

 黄昏の空も闇のとばりが降り始めた頃、仕事を終えた労働者たちは頑張った自分を労うため酒場に繰り出し始める。


 数ある酒場の中でもカボチャの赤ちょうちんが目印の『南瓜亭(かぼちゃてい)』は元々人気店であったが、最近になって更に客足が伸びていた。


 理由はいくつかあるが、一番の理由は風変わりな看板娘が増えたことだった。


◇◇◇


「おぃおぃ、久々に来てみたら、この店はいつから奴隷なんかにお客様の相手をさせるようになったんだぁ!?よぉ、顧客満足って知ってるかぁ~~~?」


 声を荒げるその姿は全身が歪み、顔の肉が崩れ落ちそうで、血の気が感じられなかった。いわゆるゾンビが大声で叫んでいた!


「臭ぇ臭ぇー、人間臭がプンプンするなぁ。こいつ喰ってもいいよなぁ~?顧客満足向上のためによぉ~~?」


 いやいや、臭いのはアンタだよ!つか、ゾンビが顧客満足を気にするの!?一応、お客様のようなので声には出さず心の中で文句を言いつつも、クレーマーのゾンビ様に接客用のニッコリ笑顔を作る。高校入学直後から始めたファミレスバイトで習った接客マニュアル応対。


「申し訳ございません、お客様。店内では騒がないでいただけますか?他のお客様のご迷惑になりますのでー。」


 唯一ファミレス接客では普通やらない態度として、鼻を指で摘まみながら接客をしていた。ゾンビの放つ強烈な腐臭を嗅がないように……。


「えっと、ステラ……一応お客様だから臭くても鼻を摘まむのは失礼、かな?」


 疑問形?と感じながらも、わたしは素直に答える。


「ごめんね、デネブちゃん。でも、この臭さは我慢できなくって。って、デネブちゃんも鼻を隠してるじゃないですか、しかも雑巾で!」


「ち、違うのよ。これは雑巾が臭くないか確かめてるの。う~ん、臭うかしら?スーハ~スーハ~、ゲホゲホッ!」


 咽ながらも雑巾を鼻に当てている。


「わたしのことを言えないじゃないですか。」


「そんなことよりも……仕事中は『店長』でしょ~。」


 お客様をよそに、あからさまに鼻を摘まむわたしは、雑巾で鼻を覆う店長と談笑する。


 大きな漆黒の帽子と漆黒の服から覗く褐色の肌、年の頃はどう見ても小学校低学年な幼女こそ、この酒場『南瓜亭』の店長『デネブ』。


 なお、大きな帽子の左右から長く尖った耳が出ていた。彼女は『ダークエルフ』と呼ばれる魔界の妖精族らしい。その見た目からは想像もできないが、御年300歳は超えているらしい。


 行く当てのない女子高生であるわたし『ステラ』はここに居候させてもらう代わりにデネブが切り盛りする酒場『南瓜亭(かぼちゃてい)』の手伝いをしていた。


 談笑するわたし達に怒りの視線を向けるゾンビに気付いたデネブは謝罪と説明をする。


「スミマセンね……んー、お客様?この人間はとーっても高価なのでお出しできないんですよ~。因みに金貨2枚!」


 また、疑問形!?つか、お金あったらわたしを差し出すのかぃ!?あれ?金貨2枚ってそこまで高価なの??と心の中でツッコミを入れるわたし。


 ゾンビにやんわりお断りする雑巾装備デネブを見守る……内心複雑な心境で。もちろん鼻は指で押さえたままに。


「金貨2枚……人間なんかにはもったいないぜぃ。仕方ねぇなぁ~。命拾いしたな人間!ま、夜道では気を付けるんだなぁ~。ゲヒヒッ!!」


 そう文句を垂れながら口からよだれらしき汚水を垂れ流すゾンビにわたしは我慢できず、後ろからゾンビの首根っこを掴みそのまま出口まで引きずる。


「お客様、飲み過ぎみたいですから、今日はお帰りくださいねー!!御代はツケておきますから。」


「何ぃ~~~、待て待てって!まだ何も飲み喰いしてないってばよ!!ふざけやがって、この人間!ぶち殺すぞーーー!!!」


 喚くゾンビだったが全く抗えず、引っ張られるままに店から追い出される。道に転がるゾンビは怒り狂いわたしに襲い掛かろうとするが、わたしは刺すような視線をゾンビに向ける。


「あ、用事を思い出した!今日は帰らないとなぁ。たはは~。」


 小刻みに震えながら店を後にするゾンビ。


「またの御来店をお待ちしております♪」


 わたしは去っていくゾンビ様に深々と頭を下げてお見送りをした。


「ありがとうね、ステラ!本当、品のない客って困るわよねー。それにしても、ステラがウチに来てくれて助かってるよ~。馬鹿で五月蠅い客をイイカンジに捌ける店員はいままでいなかったからねー。」


「いえいえ、わたしも置いてもらって助かってます!デネブちゃん大好き!!」


 ロリ店長を抱きしめてすりすりする。小さくて可愛い~♪


「仕事中は『店長』でしょー。」


「ごめんね、店長♪」


 謝りながらデネブの頭をなでなですると、デネブもまんざらでもないようで顔がにやける。


 実は、デネブのところに来るまでにもいろいろなことがあったのだが、そもそもこの世界は女子高生であるわたしが居た世界とは別の……『異世界』だった。


◇◇◇あとがき◇◇◇


お読みいただきまして誠にありがとうございます。(´∀`)


異世界の酒場でブレザー姿の女子高生ウエイトレスが、お客様であるモンスターへの接客。普通ならあり得ないですよねー。まぁファンタジーですから。以降の話でこの女子高生の正体が明らかに!?乞うご期待♪('ω')ノ


お読みいただいた感想や評価をお願いします。いただけると今後の励みになりますし、もっと良い話にできますので、是非ともお願いします。m(_ _ )m


毎週金曜日に定期更新してますので、また宜しくお願い致します。(๑>◡<๑)

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