ツンデレ少女は、ご主人様をハーレムエンドにしたくない

@elfs

プロローグ

 ボッチには二種類ある。


 一つは、自ら望んでボッチになる者。

 もう一つは、望まずボッチになる者。



 ーーさあ、君はどっち?


 そう訊かれてドキッとしてしまう人間がそこにはいた。彼女の名前はスフラ。

 赤毛が麗しい、絵に描いたような美少女である。

 透けそうなほど白い肌。ボン、キュ、ボンッと理想の女性像を体現したような恵まれた身体。

 彼女の描く曲線はさながら彫像のように美しい。


 そんな彼女は今、冒険者ギルドにて紅茶を啜りながら、どこか落ち着きなく周囲を見回していた。


(あれは‥‥‥ダメね。一見私と同族のように見えて、実は友達がいっぱいいる魔性の女だわ)


 まるで戦闘力でも図るが如く、一人でいる人間を見つけるたびに、注視するスフラ。

 前置きで言えば、後者に当てはまるタイプのボッチだった。


「はぁ‥‥‥」


 ため息をこぼして、今日も一人項垂れる。


 どこかに仲間になってくれる人はいないだろうか。

 そんな心中を抱えて、スフラはズズッと紅茶を口に入れる。


 スフラは、自ら行動を起こすのが苦手だ。その上、話しかけられると、ついツンケンした態度を取ってしまう。

 人は彼女を見ればこう思うだろう。

 うわぁ‥‥‥関わりたくないタイプだーーと。


 そんな性格が災いして、スフラは今日までボッチをやってきていた。


 だが、そろそろ本気で仲間が欲しい。

 友達からでもいいから、てか、友達も欲しい! と焦燥する彼女は。

 今日も一人テーブル席に腰を下ろし、声を掛けてもらえないかとひたすらに待ち焦がれていた。


 ふと、スフラの視線が一人の青年へと注がれる。

 注意深く観察するそのスフラの表情には、笑みがこぼれていた。


(‥‥‥わ、私と同族! あの人絶対ボッチだ!)


 普通なら、と前提を置くが、そんなことを初見で見抜けるはずがない。

 それに、とんでもなく失礼な偏見なのは言わずもがな。


 けれど、ぼっち歴=年齢のスフラの洞察力は折り紙付きだった。


(ど、どうにかして‥‥‥私を仲間に誘わせないといけないわね)


 そう決意するスフラは徐ろに椅子から立ち上がった。



 そも、冒険者という職業は単独行動ではなく団体行動するのが常識だ。


 仲間がいれば足りないところを補える上、身の危険も最小限に減らすことができる。

 せいぜいデメリットは報酬が山分けになることくらいだが、そんなの報酬のいいクエストを受ければいいだけのこと。


 ゆえに、冒険者で単独行動をする人間は殆どいない。

 そのため、単独の冒険者を探すとなると、冒険者に成り立ての人間に限られてくるわけだ。


 その上、スフラの条件は厳しい。

 友達のいない人間にまで絞るのだ。


 だからこそ、新人冒険者であり、その上ボッチの青年の存在にスフラは歓喜した。


 今までも何度かチャンスはあった。

 その都度、仲間に誘わせようと頑張ってはみたものの、その努力は実っていない。


 ーーもう失敗しない!

 と意気込むスフラは、意を決して行動を起こすことにした。

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