第8話 傾くこと
詩らしきものを書き始めてから、以前より気になる詩人の詩集や関連する本をよく読むようになりました。気に入った詩集を見つければ同じものを読み続ける(或いは模写をする。模写は濃い読書体験になると思う)わけで、どうしてもその詩人の言葉に似た言葉遣いになることがあります。或いは読んだ詩を自分の言葉で書き直していることもあって、あっちにこっちにやじろべえをしているような気になります。
あ、今は金子みすゞだ
今日は村上昭夫に、ダウスンだ
ん、吉野弘かな、漠さんが来たぞ
おや、新川和江だ、タゴールだ、
三好達治に犀星も顔を出して……
あぁ、きりがない。自分はどこにいるのだろうと悩む夜もあり、でもやじろべえの芯は自分であるから、存分に傾いて先人の詩の顔をみつめながら、ゆっくりと重心が真ん中に戻るのを待っている。玉石混交あるとしたら石であるぼくはひたすらその石を磨いて、いつだって揺れて傾いている。創作において凡才であるぼくは先人の模倣からはじめた。これはあらゆるジャンルでも変わらないと思う。自分が波長があったものを模倣して自分の血肉となるまでそれを行う。(時折、それを越えてくる天才がいるのは確かだけれど) そこに独創や個性がないと言うのは間違いで、やがてそれは自分に根付き個性となるのだと思う。言い方はきついが未熟さを個性と勘違いしてはいけないのだ。
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